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従来の『星のカービィ』シリーズはファンタジーあふれる世界観でしたが、今作の舞台は現実世界です。これまで大切にしてきた世界観に、どのように「現実世界」を織り込んだのでしょうか? また従来シリーズでは2Dで表現されてきた世界観を、どのように3Dに置き換えたのか? この2点を中心に、おもにアートディレクションの観点から開発裏側を紹介します。
登壇者は、株式会社ハル研究所 開発本部 第1開発部のエキスパートアーティストであるファーマン 力氏と、同じく第1開発部アーティストの森下大輔氏。
「『星のカービィ ディスカバリー』 シリーズ初の挑戦 3Dアクションと現実世界との融合を実現したアートディレクション」と題し、8月24日に「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2022」(CEDEC 2022)で行われた講演をレポートします。
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本作の目玉「ほおばりヘンケイ」の誕生
『星のカービィ』とはハル研究所が開発し任天堂が発売するアクションゲームで、第1作のリリースが1992年、2022年3月25日に発売された『星のカービィ ディスカバリー』が最新作となる長寿シリーズです。
特徴は球体のキャラクター「カービィ」による「吸って吐いて」のアクション。敵を吐き出して弾のようにぶつけたり、敵の能力をコピーしたりしてステージを攻略していきます。
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『星のカービィ ディスカバリー』の特徴は「初の3Dアクション」「現実世界という初のロケーション」「新たな能力『ほおばりヘンケイ』」のおもに3つです。しかしそこへ至るまでには大きな壁をいくつも越えなければなりませんでした。
開発スタッフがまずおこなったのは原点回帰です。過去の派生作品で少しずつ3D表現に挑戦してきたとは言え、今作はそれらノウハウを活かした本編シリーズ初の3Dアクションです。2Dから完全3Dアクションになるということで、開発はまず「どのような遊びができるか?」の視点から、カービィというキャラクターについて改めて見つめなおすことからはじめました。
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その結果、生み出されたのが新アクションの「ほおばりヘンケイ」です。
もともとカービィはゴムマリのような柔軟性を持っており、敵を吸い込む特技を使いこなしてステージを攻略します。そのため吸い込みアクションでそのオブジェクトに「ヘンケイ」することができれば、カービィの魅力を最大限に引き出せると考えたのです。
またそれに伴い、吸い込むオブジェクトも日常にあるものが良いという結論に達しました。同じ「四角くヘンケイする」でも、魔法のオブジェクトを吸い込むより、自動販売機のように親しみのあるもののほうが驚きも増すからです。その観点から、物語の舞台も現実世界に決まりました。
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「ほおばりヘンケイ」については、どのようなビジュアルデザインにするか、どのような吸い込み演出にするかでも数々の検討がされました。