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ゲーム制作という仕事は、従業員1人のインディーズメーカーでない限りは「チーム作業」です。
様々な技能を持ったメンバーが集まり、ひとつの作品の完成に向けて仕事をする。これは字面で書くほど簡単かつ単純なことではなく、時としてすれ違いや軋轢も生じてしまいます。無論、それを放置していたら進む作業も進まなくなります。
しかし、すれ違いを修正するのもひとつの「仕事」。一筋縄ではいかないこともあります。
CEDEC 2023で催された講演「むきなおりでチームが覚醒 - バラバラなチームがひとつになる最強の手法 -」で、ゲーム制作に邁進するチームが一眼となる方法が詳しく説明されました。講師はゲームの開発で知られるトイジアムの吉野正義氏です。
上手くいかなかった「ふりかえり」
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吉野氏が所属しているゲーム制作チームは、それぞれの職能で構成されています。スクラムマスターである吉野氏の他、クライアントエンジニア、サーバーエンジニア、デザイナー、QAという体制です。
「我々のチームでは、プロダクトやチームの働き方を良くするために2週間毎の“ふりかえり”を実施しています」
こうしたチーム内での対話やコミュニケーションは、ゲーム制作会社に限らずあらゆる業界で行われているはず。定期的に「今までの仕事を俯瞰する」ということ自体は、決して間違ってはないと筆者も感じます。
そんな中、吉野氏のチームに「暗雲が立ち込める」ということがあったそうです。開発中に大きな手戻りが発生したり、マイルストーンまでにゲームを作り切れなかったり、テストでの不具合が多かったり……。
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「こういう時にふりかえりを通して改善を図っていったのですが……」
結論を言うと、この場合のふりかえりは上手くいかなかったとのこと。
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各メンバーが注目する事象や原因が吉野氏を含めて揃っておらず、それ故に具体的な改善案をチームで見出すことができません。だからといって、チーム全員で継続的な議論をする時間も取ることも難しい状態です。
メンバーの思惑がバラバラだった!
そこで吉野氏は、チームメンバーひとりひとりに対してヒアリングを実施します。
その結果、「目指していること」と「困っていること、課題に思っていること」がそれぞれバラバラという状態が判明します。
「そもそもこのチームは職務横断型で、様々な役割の人が集まっています。従って、見えているものがそれぞれ全く違っていました」
そこで「目指しているもの」を揃えるため、吉野氏は「むきなおり」を実施することにしたそうです。
「ありたい方向」に目を向ける
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むきなおりとは、一言で言えば「ありたい方向を考える」こと。
過去の事柄を考えるのがふりかえりですが、それでは「これから進むべき道」をメンバー間で共有することはできません。一方、むきなおりはまさに「未来を考える行為」。チームの目標をみんなで考察することができます。