これはCESAとして初めてまとめた資料で、ゲーム開発者向けカンファレンスCEDECを主催するCESA技術委員会およびCEDECアドバイザリーボードの協議によって作成されました。プログラミング、ビジュアルアーツ、ゲームデザイン、サウンド、ネットワークの5分野が示されていて、今後も毎年1回更新し公開していくとのことです。
プログラミング分野
プログラミング一般 | 最新 | ・C/C++で作成。マルチコアCPU でAPIベースのスレッド制御 |
数年後 | ・メモリの共有・排他レベルの宣言とスレッド生成・同期の簡略化等をサポートする新言語もしくは言語拡張の登場。参考例としてCUDA/Axum/ATIstream/TBB/ OpenCL/OpenMP 等と、関数言語からのアプローチ ・LLVM/PGO 等にみられる実行時最適化技術の向上 ・ゲーム本体部分は、徐々にC#やJava 等の言語に移行 | |
コンピューターグラフィックス | 最新 | ・ポリゴンベースのモデル+ マッピングのバリエーション、DeferredRendering 等 |
数年後 | ・Voxel/Micro polygon/NURBS/Displacement Map/Tessellation/Fractal 等を使用した、スケーラブルなジオメトリの実現 ・Global Illumination/Radiosity等のリアルタイム化、もしくはポリゴンベースの手法とのハイブリッド化 ・ABuffer/Alias-Free Shadow Maps 等のZ-buffer の諸問題の解決 | |
AI | 最新 | ・FSMのスクリプトベースの実装 |
数年後 | ・グラフベース、セッティングベースのビジュアルスクリプト ・コード上の条件分岐によらない得点計算、条件判定等による行動選択。参考例としてGOAP/ Hierarchical Behavior Tree / Probability Based Search 等 ・動画、画像、音声、構文解析による自動・半自動コンテント生成 | |
物理 | 最新 | ・剛体シミュレーション + Constraint Solver、Ragdoll 物理等 |
数年後 | ・セットアップに頼らない、マテリアルごとの破断面や壊れ、変形の表現 ・ばねモデル/FEM を使用した破壊シミュレーション ・流体シミュレーション/クロスシミュレーション等で粒子法の一部適用 | |
アニメーション | 最新 | ・スケルトンベースのキーフレームアニメーション、IK+自動補完。 |
数年後 | ・外力応答 ・筋肉シミュレーション ・モーションキャプチャーデータの動的解析と組み合わせによる生成/学習的手法によるアニメーションデータの作成等のプロシージャルなアニメーション |
ビジュアルアーツ分野
レンダリング | 最新 | ・プログラマブルシェーダの活用、HDR・AO・SH・PRT など ・精細で表現力の高い、ロバストなシャドウイング |
数年後 | ・高スケーラビリティの実現 ジオメトリシェーダ、ジオメトリックイメージなど ・インタラクティブレイトレーシング ・AR・立体視・高フレームレートなど、出力段の進化 ・ベクタ表現、点群表現など形状表現の多様化 | |
アニメーション | 最新 | ・ハイレベルモーションキャプチャ パフォーマンスキャプチャ、フェーシャルキャプチャ ・剛体物理シミュレーション、物理ベースモーション生成 |
数年後 | ・高度DB 検索をベースにした、インタラクティブモーション ・AI ベースのモーション生成 ・高度な物理シミュレーション(破壊、流体、筋肉、軟体など) | |
グラフィックデザイン | 最新 | ・FLASH の浸透 ・モーショングラフィックスを活用したダイナミックな演出 |
数年後 | ・ビヘイビアベースのインタフェース演出 ・素朴なリストやアバター以外のネットワーク表現 ・解像度フリーなデザイン | |
オーサリング・プロダクション | 最新 | ・プログラマブルシェーダの要求に応じた抽象データ生成 ・3D スキャン、3D ブラシツールなどの高効率手法の導入 ・大規模データの効率編集、分散環境 ・高効率なコンテントパイプライン ・アセット管理システムの浸透 |
数年後 | ・多様な色空間・HDRI テクスチャのハンドリング ・ファインアート・実在物からのデータ構築 インバースレンダリング シンタクス・ルール抽出からのプロシージャル化 ・ファイル操作やバージョン管理を超えた、コンカレントオーサリング ・DCC ツールとゲームランタイムとの相互乗り入れ ・オープンコンテンツの積極的な利用 |
ゲームデザイン分野
ゲームシステム アイデアの出し方、元になる要素、操作しやすいインターフェースの生かし方 | 最新 | ・カジュアルゲームとコアユーザーの2 極化 ・ダウンロード販売の普及 ・UGC の増加と共存 ・専門者が監修するゲームの増加 ・据え置き機+携帯機のようなプレイ環境を意識したゲームデザイン ・特定コミュニティーの顧客層に専用カスタマイズされたゲームデザイン |
数年後 | ・教育機関、リハビリや社員研修等へのゲームデザインの導入 ・ユーザー層の年齢上昇を意識したゲームの増加 ・心理学に基づいたゲームデザイン ・ユーザーのプレイ情報を基に進化し続けるゲーム ・常時ネット接続可能な携帯型情報端末を活用したクラウド型ゲーム ・UGC ゲームを適正に審査しパブリッシングを補助する流れの一般化 | |
生産性と品質の向上 アイデアを生かすために生産性をあげる技術 | 最新 | ・事前に行われるテスト及び市場に出てからの購入ユーザーによる評価 ・Flash 等による短期間でのアイデア実現 ・プロトタイピング、ホワイトボックス開発手法 ・手書きやツールによるスクリプト生成 ・ローカライズが必要な国の増加 |
数年後 | ・データマイニングを利用したマーケティング ・自動テスト(ゲームシステム、整合性) ・難易度を自動調整するAI の搭載 ・ゲーム開発に即した工程管理システムによる適切な進捗予測 ・高度なローカライズの必要性と自動化(翻訳と文字数調節、桁区切りや単位の自動変換、カルチャライズ)の発展 | |
気にしなければならない周辺技術 アイデアの元になる未来に予想される技術 | 最新 | ・深度を考慮した立体的な画像認識技術 ・マルチタッチデバイスの増加 ・カメラ及びGPS と電子コンパス等によるAR 技術 ・加速度センサー |
数年後 | ・立体映像の普及 ・表情を読み取る技術の一般化 ・個人認識技術を使ったゲームデザイン ・脳や皮膚からの微弱な信号を元に操作 ・環境を制御できるフォースフィードバック |
サウンド分野
DSP (Digital Signal Processing) | 最新 | ・サウンド処理が完全ソフトフェア駆動の時代へ突入 ・DSP がプログラマブルになり、独自制御が可能になった ・周波数ドメイン型音声処理の開始 |
数年後 | ・独自DSP 開発が一般化。信号処理を扱える専門知識が必要になる。 ・DSP など信号処理を簡単に行えるツールが普及し、ワークフローの一部となる ・VST のようなオーディオ入出力標準規格が、ゲームプラットフォーム上でも採用され、より一般化される | |
シンセサイズ・波形生成・音声合成・音声解析 | 最新 | ・基礎的物理現象(遮蔽,回折,透過,ドップラーなど)の実装が始まる ・事前準備された複数波形の音量制御/音質制御がより高度化 ・物体質量、形状、速度に応じた発音波形選択(フィジックスとの連携開始) ・音声合成エンジンによる発声利用や、音声解析による自然語入力の実験段階 |
数年後 | ・従来の波形合成技術の更なる進化(周波数ドメイン信号処理、波形モーフィング) ・波形記憶型から、波形生成型へのアプローチ ・より高度な物理演算エンジンとの統合、AI エンジンの発音制御への応用 ・音響工学や建築音響など、空間音響の研究を元にしたシミュレートへの挑戦 | |
オーサリング環境・圧縮フォーマット | 最新 | ・ゲームエンジンと同化した音源配置等のオーサライズ環境を提供 ・楽器音サンプリング+楽譜データ(MIDI 等)による楽曲作成から、生音取り込みへと移行が進行 ・サラウンド対応コーデックが一般化 ・楽曲自動生成の試み(シーケンシャル技術の音楽分野への応用) |
数年後 | ・CG オーサリングツールとの連動構築による作業効率化が加速 ・DAW ソフトとの完全連携による作業の効率化、新規ワークフローの確立・DAW データをインポート、またはプラットフォーム上で動作する環境 ・スクリプト言語による、インタラクティブ作曲/制御技術が実用化 ・メタデータを含んだ音声フォーマットの普及と有効活用 ・音声伝達用のコーデック開発が加速(ボイスチャットがより普及) |
ネットワーク分野
個人所有データの概念の拡大 | 最新 | ・サーバ上「個人情報」と「個人に関係の深いゲームデータ、アバター、個人が記録した日記・ブログ文章」が存在している ・サーバ運営者は法的な責任もあって「個人情報」を保護し、対象者の意思に基づいて取り扱いを行う |
数年後 | ・個人情報を超えて、個人が所有するとみなされるデータ範囲が拡大する。ゲームデータ等も個人が所有しているものとして、サーバ運営者が保護責任を負う。 ・拡大された個人データでの所有権を実現するセキュリティ機構、プロトコルが実現される | |
P2P利用とリソース共有 | 最新 | ・対戦ゲーム等のためにP2P 技術を利用している。 ・データ転送効率の向上やサーバ負荷軽減のためにP2P によるデータ配信を行っている ・サーバ群をクラウドとして仮想化し、大規模コンピューティングリソースを提供している |
数年後 | ・P2P を積極的に利用してゲームプレイ環境側からもゲーム世界構築のためのリソースを提供する。クライアントもサーバの一部となることで、サーバとクライアントの境界が曖昧となる ・構成の変わるリソース群をゲーム空間提供リソースとして仮想化する技術が確立される | |
WEB技術を取り入れたネットワーク環境の構築 | 最新 | ・ステートレス特性をもつWEB 技術による大規模サイトの構築と運用が行われている ・ステートフルなサーバ=クライアントに基づくゲームプレイ環境を提供している |
数年後 | ・WEB 上培われた多数接続・負荷分散技術を応用したゲームサーバ構築が進む ・接続技術が標準・オープンであるものを使うためアクセス端末を選ばないゲームプレイ環境が実現される | |
ゲーム・コミュニティ統合 | 最新 | ・ゲームプレイ環境とそれを補完するWEB ベースのコミュニティが存在している ・WEB ベースのゲームと従来型ネットワークゲームとのゲーム企画的連動、一部データの連動を進めている ・ブラウザplugin を含むWEB 技術をベースとするカジュアルゲーム環境の提供している |
数年後 | ・コミュニティ、WEB ベースゲーム、サーバ=クライアント型ゲーム、が同一のデータソースを共有する ・端末によらない等価的なアクセス手段とプロトコルが確立される ・端末の表現力に応じた複数ビューをもつゲーム環境が提供される |