![]() |
CEDEC AWARDS 2010 |
今年で3回目となる「CEDEC AWARDS 2010」は、昨年の講演者の中から聴講者アンケート上位の方から構成されるノミネーション委員会を組織。CEDECのプログラム委員会の各分野プロデューサーとの協議の上でノミネート作品を決定。ノミネーションリストはCEDEC受講者に諮られ、投票によって受賞者が決定しました。今年はプログラミング・開発部門、ビジュアル・アーツ、ゲームデザイン、サウンド、ネットワークの5部門が用意されました。
![]() |
吉岡 CEDEC組織委員長 |
冒頭挨拶に立ったCEDEC組織委員長の吉岡直人氏(スクウェア・エニックス リサーチ・センター ジェネラルマネージャー)は、「ゲームの商品としての評価は世に出る事が多いですが、CEDEC AWARDSは技術を評価する世界でも類を見ないアワードです」と挨拶。著述賞を皮切りに発表がスタートします(著述賞と特別賞は委員会が決定)。
■著述賞
![]() |
川西裕幸氏(マイクロソフト) |
著述賞に選ばれたのはボーンデジタルと川西裕幸氏(マイクロソフト)。川西氏は約10年に渡って「Game Programming Gems」シリーズなどをボーンデジタルから出版。ゲーム業界のみならずソフトウェア産業全体に貢献してきました。登壇した川西氏は「沢山の人の手助けがありここまで続けてこれました。『8』も続けていく予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください」と話してくれました。
■特別賞
特に功績のあった個人に贈られるのが特別賞です。今年の受賞者は、バンダイナムコゲームズおよびナムコの名誉相談役で業界の始祖、礎を築いたと言っても過言ではない、中村雅哉氏です。残念ながら出席は叶わなかったということで、バンダイナムコゲームズ代表取締役社長の石川祝男氏が代って挨拶しました。「1970年に私はナムコに入社するのですが、製品発表の度に中村に見てもらうのは緊張の一瞬でした。中村はまさに自分の息子や娘を見るように一機種一機種に愛情を注いで細部まで喧々諤々の議論を交わしていました。そのDNAは今に受け継がれています」
![]() |
石川祝男氏(バンダイナムコゲームス) |
また中村氏からはメッセージが届き石川氏が代読しました。
「CEDEC AWARDSの特別賞で経営者という視点だけでなく、開発者として、また開発者の育成という点を認めていただいた事を本当に嬉しく思っています。思えば1955年に有限会社中村製作所を設立した頃は世の中で遊びというのは仕事として認められませんでした。しかし、人に喜ばれる仕事をしたいという一心で遊びを生業にして半世紀以上、走り続けました。沢山の人に苦労をしましたね、と言われます。しかし、本当に好きな事をやっていれば苦労は苦労ではないのです。皆さんは楽しみながら苦労をされているでしょうか? また、私は経営理念として一期一会の精神で、一人一人へのもてなしの心が大切だと説きました。エンターテイメントとはもてなしという意味だと思っています。いかなる時代でも遊びは永遠です。その創造主であるクリエイターには責任あります。皆さんが新たなエンタテインメントの創造に活躍されることを願っています」
上映された映像
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
■ポスター賞
今回のCEDECで始まった新たな試みにポスター発表があります。ポスター1枚が貼れる程度のスペースをコンコースに設置し、10分程度の短い発表を行うというものです。そのスペースには3つの箱が用意されていて、「プレゼンテーション」「ホスピタリティ」「技術」を示します。聴講者は気に入った発表があれば、入場時に配れた球をその箱に投票します。それによってポスター賞が決定します。
プレゼンテーション賞には、下田賢佑氏(degG)と細田幸恵氏(漫画家)による漫画「GDCに行こう〜ゲームプランナー間違いだらけの英会話〜」が、ホスピタリティ賞には久保尋之(早稲田大学)、土橋 宜典(北海道大学)、森島 繁生(早稲田大学)による「曲率を用いた半透明物体のリアルタイムレンダリング」が、技術賞と大賞には東芝の森下明氏による「インテグラルイメージング方式の裸視3Dディスプレイにおけるコンテンツ開発と応用システム」が選ばれました。
続いて各部門が発表されていきます。
■プログラミング・開発環境部門
プログラミング・開発環境部門で受賞したのは「元『マイコンBASICマガジン』編集部とプログラム投稿者」でした。多くのゲーム開発者のバイブルとなったであろう、伝説の雑誌です。紙メディアでありながら投稿によるプログラム集として貴重な情報源になりました。
審査を担当したトライエース代表の五反田義治氏も「私自身もプログラムを始めた頃、ちょうど創刊された『マイコンBASICマガジン』をバイブルにしていました。下手な技術書を買うよりベーマガのソースを解析した方が勉強になりました。当時はコミュニケーション手段が限られる時代で、それにも関わらず紙面上で切磋琢磨する場所を作っていた、あの時代におけるCEDECのような場所を提供していた、非常に先進的な雑誌だったと思います」とコメント。
![]() |
元「マイコンBASICマガジン」編集責任者 大橋太郎氏 |
代表したトロフィーを受けた元編集責任者で電波新聞社の取締役を務める大橋太郎氏は「まだマイコンと呼ばれたパソコンが新しい時代で、多くの人にプログラムをやって貰いたいと色々と工夫したのを覚えています。毎週何百本のソースが届いていました。真の受賞者は投稿者の皆さんであり、その代表としてここに立てた事を光栄に思っています」と話しました。
■ビジュアル・アーツ部門
![]() |
バンダイナムコゲームズ金久保哲也氏が代読 |
ビジュアル・アーツ部門は『Call of Duty Modern Warfare』を開発したInfinity Ward/Activisionのチームに贈られました。残念ながら参加は出来ませんでしたが、「群を抜いたビジュアル表現ということで表彰いただいたことを心から嬉しく思います」というコメントが紹介されました。
■ゲームデザイン部門
ゲームデザインでは、新機軸に挑戦した『デモンズソウル』が栄冠を得ました。審査を担当したスクウェア・エニックスの藤澤仁氏は「濃密なコミュケーションが苦手な日本において、非同期コミュニケーションという独創的なゲームデザインで国内外で高い評価を得たという功績は素晴らしい。ゲームデザインでまだまだ勝負が出来ることを示した」と授賞理由を説明。
![]() |
フロムソフトウェア制作1部 執行役員/部長 宮崎英高氏 |
登壇したフロムソフトウェア制作1部 執行役員/部長の宮崎英高氏は「この企画は自分たちでも半信半疑で進めていたことを懐かしく思います。アワードが終わりではなく、素晴らしい賞をいただいた皆さんの目が正しかったと言われるように今後も精進したいと思います」とコメントしました。
■サウンド部門
サウンド部門はAQインタラクティブから発売された『KORG DS-10』です。審査員のベイシスケイプ代表の崎元仁氏は「技術的な面はもちろんのこと、パフォーマンスの楽しさ、曲を作る楽しさ、合奏する楽しさ、といったものを一つのパッケージにしたという事。さらに佐野氏を始めとする開発チームが本当に楽しそうにデモをしたりライブをしたりしているのを見て想いが伝わってきました」と授賞理由を述べました。
![]() |
AQインタラクティブ 小林雅俊氏 |
登壇したのはAQインタラクティブの小林雅俊氏。「社内では全く評価されないのですが、こうして社外で評価されて嬉しく思います。卒業作品のつもりで作っていたら、本当にみんな卒業してしまって残っているのは僕一人です(笑)。これで心置きなく卒業できそうです。佐野も新しい環境で続編を作っているので是非楽しみにして下さい」と挨拶。
先日発表がありましたが、佐野信義氏らは新会社DETUNEを設立。再びコルグと『KORG M01』をDSで開発中だということです。発売は12月の予定。
■ネットワーク部門
ネットワーク部門は頓智ドットが展開する『セカイカメラ』が受賞します。現実世界にエアタグを付加するというARを分かりやすく広めたサービスですが、コナミの田中啓介氏は「位置検出、ユーザーからの投稿管理、周囲のエアタグの取得などクライアント側とサーバー側の技術を効果的に組み合わせる事で面白いサービスを実現した技術力が受賞理由」と説明しました。
![]() |
頓智ドット 井口尊仁社長 |
トロフィーを受け取った頓智ドットの井口尊仁社長は「Fun & Futureというキーワードで世界の見え方を少しでも変えていこうというビジョンで事業を行っています。今までのようにスクリーンの向こうだけでなく、生活の中、現実空間がゲームの舞台になると思ってます。それにより可能性は大きく広がります。『セカイカメラ』はそういう可能性を広げる役割を果たしたいと思います」
![]() |
ポスター賞の面々 |
![]() |
CEDEC AWARDS受賞者 |