4つ目のセッションもパネルディスカッション。いわゆる米国での大手企業での事例セッションです。同じく、ゲーミフィケーションの有効性についての議論が中心でした。フォースクエアの事例がむしろゲーミフィケーションとしては「長期的な価値を提供していない」と否定的に捉えられていたのは印象的でした。MLBの事例は非常にわかりやすく、他のスポーツ分野でも同様の展開が考えられそうです。登壇者は以下。・モデレータ: Greg Johnson, フーダ社・Jesse Redniss, USAネットワークス社・Rajat Paharia, バンチボール社・Michael Ahern, MLB(メジャーリーグベースボール)・Esteban Contreras, サムソン社・Brandon Evans,クラウドタップ社Gregは前職でプレイボーイ社に勤めており、ソーシャルビューティーコンテストなどの企画を担当していた人物です。フーダ社は、ローカルレストランを社食用途に使うためのサービスで、提携先のレストランが契約企業に食事を提供するというサービスを提供しています。支払は食事をとる従業員が自分で払うので企業としてはコストがかかりません。USAネットワークス社はアメリカのケーブルテレビ放送局です。日本のWikipediaによると視聴者数は8900万人とのことです。Jesseは前回のゲーミフィケーションサミットでも登壇していました。Bunchball社のソリューションを導入しており、番組プロモーションサイトなどで成果を上げているという報告がされていました。バンチボール社はこのブログでもよく登場している、ゲーミフィケーションSaaSを提供するベンダーの1社です。この分野のリーディングカンパニーと言っていいでしょう。Michaelは、MLB.comを運営を担当しています。MLBでは、ネット関連のサービスは子会社のMLB Advanced Media社が全て担当しているようで、彼はそこのアソシエイトディレクターという立場にいます。Estebanは、米国サムソン社のソーシャルメディアマネージャです。個人としてもブログを運営したりといったことをしているようです。Brandonはクラウドタップ社の創業者兼CEOです。クラウドタップは、ブランドインフルエンサーをコミュニティ化することを目指すサービスです。ユーザは自分をインフルエンサーとして登録し、ギフトカードや商品といったインセンティブをもらうためにブランドのクチコミやアンケートに回答するといったことを行います。◆Q:どのような報酬がユーザの再訪を促す上で有効か?USAネットワーク社:ユーザはタレントとコミュニケーションが取れることのような、特別な特典が得られるとそれを目指してサイトをよく利用するようになっている。MLB:賞金は用意しているが、結局のところはユーザは「ステータス」を求めている。何百万人のユーザの中で、賞を獲得出来るのは一人だけ、野球のことを最もよく知っている人にだけ与えられるので、それはまさにステータスである。バンチボール社:フレッシュなコンテンツ、自身で何かを作っているという感覚が持てるUGCが用意されていること、あるいは戻ってこないと何かを失うようなペナルティがあること、といったようなまさにゲーミフィケーション要素が再訪を促す上で有効である◆Q:何を持って成功としているか、バランス(※報酬の上げすぎないようにすることと再訪の頻度という点のバランスと思われる)をどう取っているのか?USAネットワーク:基本的にコミュニティは生き物なので毎日変わる。公式のようなものはない。我々は日々楽しませることを考えている。MLB:バッジの登録数を計測している。様々なバッジを用意し、何人登録したかなど。また、Gamedayというサービスを提供している。これは試合の状況をお知らせするティッカーのようなものだが、リアルタイムに状況を把握することが出来る。また、選手がヒットを打った瞬間をリアルタイムに視聴していればその選手の名前入りのバッジがもらえるようにもしており、これはとても人気がある。クラウドタップ社:どのようなバッジを取得したかで、そのユーザが最初にサイトを訪れてからどんな経験を積んだか、何を学んだかを見ることが出来る。サムソン社:サイト内での行動が増えたかどうかということで見ている。バンチボール社:現状では、まだ意味のある価値を提供しているとは言い難い状況だ。ユーザにとって何の意味があるのか、多くのシステムがユーザに認知させることが出来ていない。フォースクエアのバッジやメイヤーは、最初に盛り上がらせるにはいい仕掛けだが、長期的には何の価値も提供していない。長持ちする価値を提供することが重要だ。◆Q:何か発見したことはありますか?USAネットワーク:何が成功するかはコミュニティによって異なるだろう。あるコミュニティでうまくいったことが他でもうまくいくとは限らない。繰り返して修正をかけることを継続することが大事だ。MLB:最初、数百万のバッジが発行された。ただ、最初はリアルな報酬を用意していなかったので、バッジを集めてどうするんだという話になった。そこで「バーチャルベースボールカード」というものを用意し、それを交換ができるようにしたところうまく機能するようになった。サムソン:ユーザに驚きを提供し続けることが重要。フェイスブックページでも、作ったあとに更新し続けないと意味が無い。ゲーミフィケーションも同じだ。◆Q:何かアドバイスはありますか?USAネットワーク:ソーシャルにするにはどうするか?ということだ重要だ。フェイスブックと連携した時に一気に広がった。ユーザがフェイスブックにいても、ツイッターにいてもどこからでもアクセスできるようにすることだ。MLB:MLBでは既に多くのユーザがいたので、フェイスブックとの連動は特に必要ではなかった。それよりも、特別な報酬をどうやって与え、ユーザの関心を引き付けるかの方が重要だ。クラウドタップ社:戻ってくる理由をどう作るのか、ということだ。ゲーミフィケーションは必ずしも楽しさだけではない。◆会場からの質問:コアビジネスにどんなメリットが?USAネットワーク:ユーザが活性化することで広告効果が高くなった。同様に、ポイントが貯まって交換しに行く際に他のアイテムも一緒に買うことが増えた。ソーシャルメディア上でのリーチ(クチコミ効果)も高くなった。実際に視聴者の数も増えた。MLB:ブランドプロモーションに役立っている。結果的に野球ファンの数が増えている。ハードコアな野球ファンというよりは新しい野球ファンを引き付けることに役立っている。登録者の半分は、ゲーミフィケーションに参加している。■著者紹介深田浩嗣(ふかだこうじ)株式会社ゆめみ(代表取締役 社長)。1976年京都生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中2000年1月に株式会社ゆめみを設立。高い技術力を駆使し、モバイルEC、メール配信、大規模CRMの開発やソーシャルゲームプロバイダなど「モバイルを戦略的に使うためのコンシェルジュ」として、モバイルインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける。ゲーミフィケーションの詳細はコチラ。公式ブログほか、Twitterはコチラ。facebookはコチラです。
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