発想の元となったのは11/25のGabeの来日イベントで事例として紹介されていた、車のメーターでエコの度合いを表現する仕組みです。こちらは、燃費のいい走り方をすることでメーター内に植物が育ったり、他の運転手とエコの度合いを競ったりすることができるようになっています。
利用者の目的はなんだろうと考えてみたときに、燃費のいい走り方をして環境に貢献しよう、ということはもちろんあるだろうと思います。ただ本当に環境を考えるんだったらそもそも車に乗ることを止めた方がいいんじゃないかという発想も出てきます。つまり、車に乗るという行為自体と環境に貢献するという目的は必ずしもキレイに合致しているわけではない。これは運転手である人も当然わかってはいることだと思います。
ではこのエコメーターは何をモチベートしていると考えられるか。それはこれ自体が運転手に対して「自分は環境のことを考えている人間だ」ということを強力に意識付けてくれるからだということが実は意外に大きかったりするのではないか、という仮設を持ちました。この場合、良くも悪くも本当に環境のことを考えているかどうかということは別の話になります。あくまでそういう自分であることが実感できること、この場合だとエコメーターからそういう実感ができるようなフィードバックがなされるようにデザインされていることが重要になります。
この観点、「幸せな未来はゲームが創る」
最初にこの話を聞いたときにはゲーミフィケーションにおける目的設定とのつながりは発想出来なかったのですが、エコメーターを見ると、実はゲーミフィケーションをデザインする上でもこの発想が有効な場合は結構あるのかもしれません。その人がなりたい自分になる、あるいはそういうことを仕組みから承認するようなフィードバックをデザインする、というのはある意味究極の利用者理解ですし、利用者からするとそのサービスを使い続ける強いモチベーションにつながりそうです。
思いつく事例で検証を試みてみると、
・Nike+:すごいランナー
・マイレージプログラム:エグゼクティブな自分
・くら寿司:???
と、当てはまるものとそうでないものがありそうです。また、必ずしも利用者が自分から言い出したくないような像もありそうですね。マイレージプログラムが演出しているある種の高級感や優越感というものは、「それを求めているんです」というのは自分からはちょっと言い出しにくいことではないでしょうか。ただ、言い出しにくいからこそ仕組みとして用意してあげることで利用者としてはうまい言い訳とすることができる。
今回は、なんだか全体的にやらしい雰囲気になってしまったようにも思いますが、ゲーミフィケーションの面白さの1つの側面はこういうところにもありそうだなと強く実感しました。「ゲーミフィケーションを通じてあなたのサービスの利用者がヒーローを実感できるようにしましょう!」というのはかなり扇動的な表現ですが、これが実践できるようなサービスであればより大きな成果が得られそうです。
なお、本投稿はフェイスブック内に設置しているゲーミフィケーショングループ内でのやり取りに着想を得ました。グループの皆さんありがとうございます!
■著者紹介
深田浩嗣(ふかだこうじ)
株式会社ゆめみ(代表取締役 社長)。1976年京都生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中2000年1月に株式会社ゆめみを設立。高い技術力を駆使し、モバイルEC、メール配信、大規模CRMの開発やソーシャルゲームプロバイダなど「モバイルを戦略的に使うためのコンシェルジュ」として、モバイルインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける。ゲーミフィケーションの詳細はコチラ。公式ブログほか、Twitterはコチラ。facebookはコチラです。