また同時開催された「インディペンデントゲームフェスティバル&アワード」(IGF)では、アクションゲームの『Fez』が大賞に輝きました。
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GDCA大賞の『スカイリム』制作チーム | IGF大賞の『Fez』制作チーム |
ゲームディベロッパーズチョイスアワードはゲーム開発者の投票をベースに選出される、業界内でも珍しいユニークな賞です。日本からの投票を排除しているわけではありませんが、知名度の低さなどから、海外のゲーム開発者の意向やリスペクト対象が反映される傾向にあります。
昨年度は『レッド・デッド・リデンプション』が大賞を含む4冠に輝いた一方で、インディ(独立系)ゲームの『マインクラフト』がGDCAとIGFをあわせて7冠に輝くという快挙を成し遂げ、まさに「インディゲームの年」でした。しかし、今年は『ポータル2』が3冠、『バスティオン』が2冠に輝くに留まり、受賞の分散傾向が見られました。
もっとも、両ゲームともインディゲームの文脈を背景に持つため、海外ゲーム開発者のインディゲームに対するリスペクトは続いているといえそうです。なお、インディゲームは二次創作が多い日本の同人ゲームと異なり、オリジナルIPのみの「プロ同人」。IGFで受賞した作品が大手パブリッシャーから発売される例も増加しています。
なお、この背景にはSNSやスマートフォン、Xbox Liveアーケード(XBLA)などのプラットフォームの増加や、Steamなどのデジタル流通の成長、Unityを筆頭に無料で使えるゲームエンジンの普及などが背景にあります。『Fez』も受賞前からXBLAでの発売が決定しているほどです。
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会場は例年よりさらに拡大し、Gamespotで配信も実現 | アカデミー賞を彷彿とさせるエンタメ色の強い内容だ | GDCAのプレゼンターは『GofW』のクリフ・ブレジンスキー氏(右)が務めた |
加えて新興市場でのゲーム界発熱が急増中。型破りなゲームを表彰するNUEVO AWARDを受賞した『Storyteller』はアルゼンチンの開発者によるものです。製造業と同じく人件費の安さから新興諸国のスタジオに大手パブリッシャーが海外発注する例も増加中。今後はこれらの国々から新しい才能が次々に開花していきそうです。
また今年のIGFで特徴的だったのはマイクロソフトを筆頭に、スマートフォンのブラックベリー、クラウドゲームのオンライブ、アメリカ任天堂などが出資して設立されたゲーム専門学校のデジペンなどがスポンサーに入っていること。特にオンライブでは期間限定でインディゲームの配信を行う「インディショウケース」が行われているほどです。
かつてPS1はSFC時代のディベロッパーに広く門戸を開き、App StoreやFacebookは大量のアプリでプラットフォームの価値を高めました。これと同じように、今日ではインディゲームがSteamやオンライブといった、デジタルプラットフォームの供給源になりつつある印象を受けます。
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名(迷)作のオマージュ『Spelunky』 | SFC時代のFFライクな『TO THE MOON』 | 『バスティオン』はXBLAで配信中 |
またゲーム内容では名(迷)作「スペランカー」のオマージュともいえる『Spelunky』や、惜しくもノミネートに留まったものの、初期FFシリーズを彷彿とさせる『TO THE MOON』など、クラシックスタイルのゲームが目につきました(GDCAで受賞した『バスティオン』も『聖剣伝説』シリーズの影響を色濃く受けています)。
これは日本の同人ゲーム『洞窟物語』が海外で『CAVE STORY』として発売され、スマッシュヒットを記録した事例の影響でしょうか。また伝統的な横スクロールアクションでありながら、世界中で大ヒットした『NEWスーパーマリオブラザーズ』シリーズのように、ユーザーそして開発者の嗜好が一周しつつあるのかもしれません。
また余談ながらテクノロジー部門を受賞した『ANTICHAMBER』と、NUEVO AWARDの『Storyteller』は、ともに東京ゲームショウで毎年開催される「センスオブワンダーナイト」(SOWN)にも輝いた経歴を持ちます。SOWNが世界のインディゲームで確実に定着してきました。
一方でGDCAでは『スカイリム』『バトルフィールド3』『アンチャーテッド』といった大作がずらりと並び、貫禄を魅せています。もっとも国産ゲームの受賞は2008年度の『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』が携帯ゲーム機部門を受賞したのを最後に、4年連続でゼロ。リスペクトの対象から外れてしまいました。
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生涯功労賞に輝いたウォーレン・スペクター氏 | パイオニア賞のデイブ・トイラー氏 | アンバサダー賞のケネス・ドロショウ氏(左)とポール・スミス氏(右) |
このほかGDCAで印象的だったのは、ゲーム業界の功労者に対する表彰です。生涯功労賞には『ゼウセクス』『ディズニー エピックミッキー 〜ミッキーマウスと魔法の筆〜』などを手がけたウォーレン・スペクター氏。パイオニア賞には『ミサイルコマンド』『テンペスト』『I,ROBOT』のデイブ・トイラー氏が輝きました。
そしてゲーム業界のコミュニティに貢献した人物を表彰するアンバサダー賞には、米ゲーム業界団体、エンターテインメント・ソフトウェア協会のケネス・ドロショウ氏と、弁護士のポール・スミス氏が輝きました。二人は暴力ゲームを巡る表現規制に関して行われた裁判で一貫して表現の自由を訴え、2011年6月に行われた最高裁で勝訴に導きました。
エンターテインメントソフトウェア協会は日本のコンピュータエンターテインメント協会に相当し、大手パブリッシャーから形成されています。ゲーム開発者の祭典であるGDCでは異質な存在ですが、彼らの尽力があってこそ、自由なゲーム開発が保証されたのです。二人をスタンディングオベーションで称える姿に、米ゲーム業界の奥深さを感じました。
■受賞作一覧
ゲームオブザイヤー:『ザ エルダースクロールズ V: スカイリム』
ゲームデザイン部門:『ポータル2』
イノベーション部門:『Johann Sebastian Joust』
テクノロジー部門:『バトルフィールド3』
ハンドヘルド部門:『Superbrothers: Sword & Sworcery EP』
オーディオ部門:『ポータル2』
ダウンロード部門:『バスティオン』
ナラティブ部門:『ポータル2』
デビュースタジオ部門:Supergiant Games(『バスティオン』)
ビジュアル部門:『アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-』
生涯功労賞:ウォーレン・スペクター
パイオニア賞:デイブ・トイラー
アンバサダー賞:ケネス・ドロショウ&ポール・スミス
■IGF
Seumas McNally Grand Prize(大賞):『Fez』
ビジュアル部門:『Dear Esther』
テクニカル部門:『Antichamber』
ゲームデザイン部門:『Spelunky』
オーディオ部門:『Botanicula』
モバイル部門:『Beat Sneak Bandit』
Nuovo Award:『Storyteller』
学生部門:『Way』