静的解析ツールの開発・販売を行うコベリティは国内10社のアンケート結果を、ゲーム開発者向けツール&ミドルウェアの展示会「Game Tools & Middleware Forum(GTMF)」で公開しました。その結果、企業がデバッグを行う平均密度はソースコード1000行あたり0.51件であることがわかりました。コベリティは2003年にアメリカで設立され、2011年で1100件の顧客を持つソースコードの静的解析ツールベンダーです。本ツールにより顧客はソースコードをビルドさせることなく、早期に不具合を発見・解消できます。顧客は航空宇宙/防衛産業からIT関連企業まで幅広く、近年ではゲーム業界にも進出。昨年のGTMFでもフロムソフトウェアと共に登壇しました。講演では国内ゲーム開発企業10社で行ったアンケートの結果が発表されました。解析対象総コード行数は1千970万行で、完全匿名性となっています。まずコメント密度と不具合の相関関係について報告されました。それによるとソースコード全体のうち、多い企業で約30%、少ない企業で約15%、平均すると約20%がコメントに費やされていることがわかりました。ただし相関関係自体は低いことがわかりました。1000行あたりの検出不具合数では、低リスク不具合密度と高リスク不具合密度の合計で、多い企業では約3.1件、少ない企業では約1件、平均して約1.8件という結果が出ました。中には全体では約1.9件でしたが、高リスク不具合密度の割合が約1.6件と、非常に高い企業もみられました。一方で開発プラットフォームとの相関関係は、あまり見られませんでした。検出された不具合のうち、実際に修正された件数については最高で約2.1件、最低で約0.1件、平均すると約0.51件だったことがわかりました。一方で誤ってバグと認識したり、意図的に修正されなかった不具合件数は、全体の8.9%に上ったとのことです。解析後、最も修正されている不具合も示されました。同社の安竹由起夫氏によると、「UNUSED_VALUE」(宣言されたが、実際には使用されていない変数)の修正が第3位にランクインしており、ゲーム業界の特徴だと語られました。事前に完璧な要件定義を行うことが難しいゲーム開発の特徴が浮き彫りになったといえそうです。ここで安竹氏は、過去に行われた他業界向けの顧客データを引用し、不具合を発見して修正するまでの時間変化について紹介しました。それによるとコベリティ導入前は1件あたり16人時間かかっていたものが、導入後は2人時間と1/8に減少したそうです。その上で安武氏は、この数字を先ほどの1000行あたり平均0.51件という修正密度について当てはめ、コード50万行あたりで447日の日数削減が期待できると結論づけました。ちなみに現世代機ではライブラリやミドルウェアなどを含めると、ソースコードの総数はプロジェクトあたり200万行にも及ぶ例も珍しくないといいます。忙しくなってくると、疲労がたまる。疲労がたまると、つまらないバグが生まれる。もっとも疲れているから、バグの原因に気がつかない。その結果バグが増え続ける・・・。これは昨年の講演における、フロムソフトウェア恵良和隆氏の発言です。大前提としてシステムの複雑化・大規模化は留まるところがなく、多くの開発者が無理をする遠因となっています。「でも、普通のことで無理をしてもつまらないですよね。それよりも削減された日数を使って、無茶をしたいと思いませんか?」−−安武氏はこのように問いかけ、講演を締めくくりました。コベリティは公式サイトから評価版がダウンロード可能です。
追加コスト不要で立体音響を実装可能に―CRI・ミドルウェアが自社ソリューションの最新情報を解説【GTMF2024】 2024.7.30 Tue 世界で8,000以上のゲームソフトやスマホアプリの開発に採用され…