
2024年7月9日、東京・秋葉原UDXビルでゲーム・アプリの開発向けツール/ミドルウェアの総合イベント「Game Tools & Middleware Forum 2024(GTMF2024)」が開催されました。本稿では「ローカライゼーション業務を革新的に変える業界初のプロダクト『WOVN.games』」のレポートをお届けします。
翻訳の環境を整えればLQAの手間は大きく削減される
Wovn Technologiesが提供する「WOVN.games(ウォーブン・ドットゲームズ)」は、ゲーム専用に開発されたローカライゼーションプロダクトで、ゲームの翻訳→LQA(Linguistic Quality Assurance/翻訳時の言語品質保証)を大きく効率化します。登壇したWOVNの藤村弘也氏によると、最大で40%ほどのコストや工数の削減効果が見込まれるとしています(WOVN試算によるもの)。


藤村氏はゲームにおける翻訳の品質に悩まされるのは翻訳チームの技量に問題があるのではなく、そのゲームにおいて、どのような状態/仕様で表示されるのかを確認できないまま作業をしているからであると指摘。
解決法のひとつは、各テキストがゲームのどのような場面やシーンで使われるか分かるよう、翻訳チームにビルドのスクリーンショットを渡すことです。しかし、小規模なチームやスタジオ、もしくはスケジュールが逼迫しているときなどは、なかなかそうもいきません。
藤村氏は「翻訳チームに依頼する際にスクショを渡していますか?なかなかそこまではできませんよね。私もローカライズに10年以上従事していますが、ほとんどできませんでした」と続けます。
この問題をプロダクトレベルで解消すべく制作されたのが「WOVN.games」です。このプロダクトを用いれば、翻訳チームがゲームの世界観や仕様、各ワードや文章が使われるシーンをゲーム画面で確認しつつ、翻訳したテキストを即座に画面へ反映できます。これにより、翻訳のレビュー、品質チェックの大幅な工数削減が実現します。

「WOVN.games」は、UnrealEngineとUnityに対応しており、SDKを導入して開発中のビルドに1行のコードを追加するだけで導入できます。また、プロダクトはSaaSとして提供されるので、翻訳チームやLQA担当者は自身のPC環境があれば、UnityやUnrealEngineのセットアップまでは必要とされないのも強みです。



さらに「WOVN.games」の具体的な強みとして、以下のような要素が紹介されました。
リアルタイム翻訳機能
翻訳チームが日本語テキストや翻訳テキストを入力すると、ゲーム画面へ即座に反映。テキストが妥当なものであるかどうか、その都度ビルドする手間がなくなります。

スクリーンショット呼び出し機能
ゲームで該当テキストが使用・表示されるシーンのスクリーンショットを呼び出す機能。実際の画面を見ながらテキストを入力することで「訳は間違っていないが、テキストがオーバーフローしている」というような事例を激減させることができます。

LQAチケット管理機能
テストプレイ中に100ミリ秒間隔でスクリーンショットを撮影。バグや修正箇所が確認された場合は、該当シーンをハイライト/マーキングしたスクリーンショットが自動で添付されたチケットを発行することで即座に報告できます。

CATツール連携
スクリーンショットを見ながらの翻訳時は、使い慣れたCATツール(Computer-Assisted Translation tool/翻訳支援ツール)を連携可能。既存の用語集を「WOVN」に適用させることもできます。

こうした「WOVN.games」の機能は独自開発された「WOVN TMS」で一元管理されており、翻訳およびLQAに最適なユーザビリティーを実現しているとのことです。

藤村氏は「WOVN.games」を導入すれば、従来はそれぞれ独立したプロセスだった翻訳とLQAをひとつにまとめることができるので、ローカライズ業務にかかる各種コストが大幅に削減され、エラーやバグが減るとあらためて強調しました。

さらに、100%(=修正・手直しが必要ない)の翻訳はなかなか出てこないAI翻訳との相性も極めてよいことから、AI事業者とも積極的な協業を考えていくとし、セッションを終えました。
