セッションの最後には『Call of Duty: Modern Warfare 2』で作曲を手がけたHans Zimmer氏、『Call of Duty: Modern Warfare 3』、『Far Cry 3』で作曲したBrian Tyler氏などの数名のコンポーザーの言葉が引用されており、中西氏の指摘したようにコンポーザーの精神性を後押しする側面の強いセッションだったようです。
続く「Dynamic Game Factors」は、距離や遮蔽効果といったサウンドの多彩な変化について扱ったセッションです。いかにもゲームらしいセッションで、セッションのとっかかりも映画と比較してゲームのサウンドは制約が多い、という内容から始まります。ただし、制約が多い一方、それこそがゲームにおけるサウンド制作のおもしろいところでもある、と中西氏は強調します。その一方でCPUやメモリといった各種リソースが共有の財産であるため、「それが原因で争うこともある」と、会場の笑いを誘いました。
Blizzard EntertainmentのテクニカルサウンドディレクターTomas Neumann氏による「Bring Me Problems, Not Solutions!」というセッションでは、彼の問題解決に対する姿勢や、その秘訣が語られました。表題どおり、が示す通り解決方法ではなく、どういう問題なのかを知ることが重要であるという主張で、問題解決にあたっての姿勢を以下の3つのステップに分けて説明しました。
「What to Do While You're Waiting」というセッションでは、フィールドレコーディングに関するノウハウが語られ、収録風景の写真が多数紹介されました。銃ひとつとってみても車に弾丸が当たる音を実際に録ることもある、という海外のフィールドレコーディング。ブルドーザーや爆発物、飛行機といった大掛かりなもの、犬や馬に始まり、果てはラクダといった多様な動物に関する録音の模様が紹介されました。無論、これらがどこでも簡単に実施できる規模ではないことは確かですが、一方で録音のチャンスは幾度もあるわけではなく、距離の違いを考慮して同時録音をしたり、音割れリスクの高い近距離の録音は複数のマイクで入力レベルを変えて収録するしたりといった工夫も行われており、準備や計画の重要さが際立っていました。
「Producing Music for AAA Video Games」は、AAAタイトルの音楽プロデュースに関するセッションです。これまでのセッションと同様に、目標と課題の明確化、きっちりとした計画が必要となる強調されたのは言うまでもありません。さらにAAAクラスともなれば、世界のどこのホールやオーケストラで収録するのがよいか、といったような問題まで考える必要があるそうです。また、AAAタイトルではほぼ当たり前の存在となっているAdaptive Scoring(インタラクティブミュージック)についても言及がなされたとのことでした。
テレビ業界に端を発した「ラウドネス問題」が取り扱われた「Loudness and How to Measure It」というセッションでは、Sony Computer Entertainment EuropeのオーディオディレクターGarry Taylor氏が講演。さまざまなラウドネスの規格があるなかでITU-R BS.1770を基準に考え、Sonyが提案するゲームラウドネスの標準規格ASWG-R001を紹介しました。
次にG.A.N.G.(Game Audio Network Guild)の紹介です。G.A.N.G.は、インタラクティブオーディオ発展のための非営利団体で、毎年GDCでアワードを開催しています。今回の2012 GANG AWARDSでは、SOUND DESIGN OF THE YEARに『Halo 4』が選出され、同作に関わっていた『METAL GEAR SOLID』シリーズで知られる戸島壮太郎氏がトロフィーを受け取っている場面が紹介されました。
Game Developers Choice Awardsでの戴冠も記憶に新しい『Journey』は、MUSIC OF THE YEARを含む5つの栄誉に輝いており、サプライズでの生ライブも行われるほどの人気ぶりであったとのことでした。