盛田氏はまずプレイステーションの20年間について、子供のおもちゃだったゲームを新しいエンターテイメントの領域に変える事ができたのではないかと振り返りました。初代PSはCDというフォーマットでゲームを3Dにし、家庭にゲームセンターの体験を持ち込みました。PS2は128bitのCPUでオンラインにも対応。PSPでは外でもプレイステーションの体験を可能にし、アドホック通信で仲間と戦う共闘の概念を作り出しました。PS3では本格的なネットワークの時代となり、フォーマットもブルーレイになりました。
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そしてPS4とPS Vitaの時代。盛田氏は「久夛良木さんがPS2の頃、"もう次のゲーム機はない。それはネットワークに溶けちゃうから"と言いましたが、当時は社内でもその言葉を理解できない人が沢山いました。しかし今やその時代が実現しました」と話し、プラットフォームがハードウェアからソフトウェアに移り変わっている事を紹介しました。そのPS4は既に1350万台が普及し、そのスピードは歴代最速。性能がPS3から10倍になっただけでなく、ネットワークと融合され、ソフトをデジタル的に流通させるだけでなく、遊び方を変えていっています。PS PlusというメンバーシップもPS4発売後に会員数が4倍になったといい、ユーザーとプラットフォームの関係に変化が訪れています。
盛田氏は今後について、現在プレイステーションは5000万の月間アクティブユーザーを数えていて、<インストールベース(ハードの販売台数)よりも、このアクティブユーザーを増やしていく事がプレイステーションフォーマットにとって大事な目標となると話しました。また、幾つかのキーポイントを説明しました。
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昨年3月に発表された「Project Morpheus」はバーチャルリアリティで、プレイヤーがゲームの中に入るような体験を実現するデバイスです。盛田氏はこれを「これまではゲームの中を3Dでどう表現するかに取り組んできた。Project Morpheusはゲームの中に入る体験を実現するパラダイムシフト。これは大事に育てていきたい」と語りました。
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また、コミュニティも大事な要素です。PS4ではシェアボタンによってゲームプレイを簡単に世界中のユーザーとシェアできるようになりました。盛田氏はゲームの実況プレイヤーが人気を集めている事にも触れ、「プレーが人気を集めるかと思ったら、そのプレイヤーが人気を集めました。これは我々にとって予想外の楽しまれ方ですが、コントローラーを使ったプレーがカッコいい、というコントローラー復権にも取り組んでいきたいと思います」と語りました。
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さらに、「我々も含めて色々なプレイヤーが狙って実現できなかった領域ですが」と断りながら、リビングのエンターテイメントハブとしての位置付けも狙っていきたいと話しました。「エンターテイメントと呼ばれるものを最も心地よく、最も品質よく楽しめる、リビングルームの中心にある最も快適なプラットフォームを目指していきます」
クラウドベースのサービスではプレイステーションのハードウェアに依存しないサービスも次々に登場しています。北米でサービスを既に開始した「PlayStation」はゲームをダウンロードすることなく、いつでもゲームをクラウドで遊ぶ事が出来ます。日本での展開も期待できそうです。先日発表された「PlayStation Vue」は"好きなテレビ番組を好きな時に視聴できる"というサービスです。「日本でもtorneやnasneなどがありますが、これもゲーム、エンターテイメントの観点からAVサービスを作ったらどうなる、という提案です」
家庭用ゲーム機は比較的、所得水準の高い国で普及が進んだ存在ですが、まだ普及していない国にも積極的に取り組むと盛田氏は語りました。特にジャパンアジアとしては、中国を含むアジア圏での更なる普及が当面の目標となります。中国については本格展開の準備が進められているようです。
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盛田氏は「プレイステーションは常に未来を見てきた」とし、求められるものを提供するだけでなく、いま想像し得ないようなエンターテイメントの創造に尽力していくとしました。また、ソニーグループにある、映画・音楽・アニメ・スマホといった様々なメディア資産の垣根を超えてエンターテイメント市場にまで視野を広げて、プレイステーションの世界を作り上げていきたいと話して講演を締めくくりました。