また、その後も経済誌の単独取材も行われ、「家庭用ゲーム機を再定義する」「時が来た」「任天堂はこのままでは済ませませんよ」「(次世代機NXについては)驚いてもらいたい」などの岩田社長の言葉が伝えられています。
私は3月17日に外出予定もなく。ちょうどその時間にYoutube経由での生中継と、最後に行った会場の記者とのQAも余すところなく見ることができ、このような「ゲームの歴史」に残るような発表会をリアルタイムで見られたことに興奮を禁じえませんでした。
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すべてを見終ったところで、やや消化不良の感も否定できませんでした。それは、岩田社長の言った「ゲーム機の再定義を行うことができた」というコメントや、バランスに欠けた資本比率の持ち合いといった部分です。
まずその再定義という部分ですが、現状の家庭用ゲーム機のプラットホームのみならず、スマートフォンやパソコンなどの複数のデバイスと取り込むことが再定義であると言いましたが、これに関しては、今頃、再定義をしてもなあ・・・という印象です。とは言え、任天堂としてDeNA社との出会いから、約5年の時間をかけて考えた末の提携ですから、そこをあまり否定的に考えるのは野暮なことかもしれません。双方のメリットをさらに活かし、デメリットを相殺するという点ではお互いがよいパートナーになる可能性をもった提携になることでしょう。それを期待しています。
株式の提携、つまり持合いの部分ですが、個人的には任天堂がDeNAを買収するくらいのスケールを期待していたのですが、さすがにそこまでの展開ではなく、双方が220億円の株式を持ち合うということになりました。それでも220億円という規模は規模としては相当大きな展開です。
しかし、時価総額の違いから、同じ220億円でも、任天堂のDeNAに対する出資比率は10%、DeNAの任天堂に対する出資比率は1.24%とその差はかなり大きいのです。その比率の部分から任天堂の提携は本気なのか?と思われてしまうフシもあるようです。
今回の提携で任天堂がDeNAと組んで新しいゲームポータルを構築するのではないかという分析をあるようですが、そこまでの展開が実現できるとは私は思いません。アマゾンやグーグルやアップルのようなモデルを構築するという青写真です。これは現実的には言語の問題やゲームという単一のカテゴリーを中心にしたモデルでは難しいと思います。
確かに今回の提携で岩田社長が強調していたDeNA社側のサーバーサイドのエンジニアのマンパワーの提供やウェブ系のサービスの構築と運営力は素晴らしいものがあると思います。そのあたりの双方の歯車がうまくかみ合ってくれれば我々ユーザーやファンにとっては新しい会員向けサービスや任天堂のIP(キャラクター)を活用した新しいエンタテインメントを楽しむことができるはずです。とは言え、過去にソニーとのプレイステーションの提携を発表しながらも白紙にしたのも任天堂です。時代はあのときとは違うと言えども楽観視はできません。任天堂が再定義をしたゲーム機「NX」(コードネーム)の詳細発表されるのは2016年、ソニー・コンピュータエンタテインメントがプロジェクトモーフィアスを導入するは2016年上半期です。ゲームを抱合したエンタテインメントの未来はまだまだ捨てたものではありません。
黒川塾24にて「エンタテインメントの未来を考える会」大賞2014年度が決定しました。
・Project Morpheus (株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント)
・Oculus Rift (Oculus VR, LLC.)
・P.T. (株式会社コナミデジタルエンタテイメント、小島プロダクション)
・テラバトル (ミストウォーカーコーポレーション)
・Ingress (Niantic Labs)
以上です。おめでとうございます。詳細は次号のコラムにて!
■著者紹介
黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。「ANA747 FOREVER」(映像作品)「アルテイル」「円環のパンデミカ」「モンケン」「鬼畜教師(仮)」他コンテンツプロデュース作多数。
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