そんな昨今を、ユーザーでもゲームメーカーでもないバイヤーの方々は、どう見ているのでしょうか。インサイドでは、これまでにも何度かお話を伺ったことのあるゲオ様にインタビューを実施しました。普段なかなか聞けない話題の数々、ぜひお楽しみください。
※なおインタビューはオンラインで実施しました。お二人の写真は以前撮影したものを掲載しております。
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「新型コロナウイルス」はゲオにどんな影響を及ぼしたのか
─2020年は2月頃から「新型コロナウイルス」の影響が色濃く出るなど異例の一年となりました。これまで振り返ってみてどうでしたか?
海津:
そうですね…。4月に緊急事態宣言が発令される前、2月ごろから少しずつ巣ごもり需要の影響を受けていたのと、新作タイトルとして3月に『あつまれ どうぶつの森』が出たこともあり、ゲームの販売ががぜん注目されたなという実感があります。
武藤:
『あつまれ どうぶつの森』はコロナの影響を別としても、ゲオのゲーム販売史上で一番売れたソフトになりましたね。
海津:
3月に『あつまれ どうぶつの森』、4月には『FINAL FANTASY VII REMAKE』と『バイオハザード RE:3』が出たこともあって、スイッチ、PS4の順に大きく売れました。それとPS3、Wii U、3DSといった1世代前の機種も店舗・通販ともに伸びています。自粛期間中、時短営業やマスク着用や飛沫防止シートなどでコロナへの対策等をしつつ、ほとんどの店舗は開けていたため、販売自体は継続できました。
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武藤:
東京などの関東だと、大手の電気屋さんは駅前に多いじゃないですか。ゲオはその逆で、郊外に店舗が多いという特徴があります。会社帰りではなく家から近いところで…と考えるとゲオだったのでしょう。
海津:
車でも行けますし、最低限の接触で済むと考えられたのかなと。
─なるほど。そうなると、それほど大きな影響は無かったのでしょうか?
海津:
例年の3~4月よりは、販売が伸びましたね。5~6月になって緊急事態宣言が解除されると、コロナ前に計画していた想定の数値になってきました。これは年明け時点での計画だったのですが、まずPS5が年末くらいに発売されるだろうと。それに付随して、(当時は後方互換がどれほど対応しているか分からなかったけども)PS4は厳しくなっていくだろうと考えていました。そのためニンテンドースイッチを継続して販売しつつ、PS5にどれだけ期待できるかというのが当初の2020年の想定であり、今はそこに近付いている印象です。
─概ね元に戻ってきているという感じなんですね。
海津:
そうですね。まあ夏以降はこれまた想定外だった事象としてGoToトラベルの影響が出たと考えていて、今まで巣ごもりしていた反動で外向きの志向が強くなったというか、春先と比較すると若干厳しい部分もありました。
武藤:
若干どころかだいぶ厳しい気が…(笑)。お金は有限ですし、外への出費が増えるということは、家の中で遊ぶものにお金を使わなくなるということですから。
海津:
毎年夏になると数百万人が海外へ旅行に行くわけですが、今年はほぼ無理でしたよね。なので、それだけの人々が日本国内にいた状況と言えるのですが、特にそれが我々にプラスに働いた印象は無くて。おそらくそういった方々は、国内旅行に行ったのかなと考えています。
スイッチとPS4は依然、流通量が少ない状況に
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─ハードの販売状況についてお伺いします。まず、今年はニンテンドースイッチの品薄が印象的でした。それほどまで、ずっと売れ続けているのでしょうか?
海津:
そうですね。御存知の通りゲオは抽選販売を行っています(※取材時点、11月に店頭販売を再開)が、入ってきた分だけずっと販売が続いているという状況です。
武藤:
ハードに関しては、そもそもPS4は春以降はほとんど流通していない状況です。そのため、新品ハードに限って言えば、ニンテンドースイッチかスイッチライトしか売るものがなくて。そんななか、『あつまれ どうぶつの森』で本体需要が増加し、密にならないようにという意図もあって抽選販売という形をとりました。任天堂さんからは継続的に普通の時期ならまかなえる数が出荷されていましたが、需要に対して供給が追いつかない状態がしばらく続きました。この秋になって落ち着きつつあるかなというところです。
─ようやく最近になって、スイッチは各店舗でもポツポツ見かけるようになりましたね。
海津:
通常、あれだけ出回っているハードであれば多少は買取も来るのですが、今回はコロナで、「また家にこもることになるんじゃないか」という懸念も強かったのかもしれません。
─中古もあまり出回らず?
海津:
そうですね。スイッチはオークションやメルカリ等で高騰したという側面もありますが、ほぼ全ハードに渡って買取が一時弱まりました。
─ソフトの販売状況はいかがだったのでしょう。上期のランキングを確認する限りは『あつまれ どうぶつの森』『FINAL FANTASY VII REMAKE』『リングフィットアドベンチャー』『マリオカート8 デラックス』などが目立ちますね。
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武藤:
3~4月は『あつまれ どうぶつの森』『FINAL FANTASY VII REMAKE』といった注目タイトルが多く出ており、好調でした。例年6~7月は新作が出ない時期であり、その影響が直撃して売り上げが落ちるのですが、今年は『マリオカート8 デラックス』や『スプラトゥーン 2』といった定番ソフトがよく売れた印象です。『マリオカート8 デラックス』は2年以上前のタイトルなのに、今でもランキングに入らない週はないほどですね。『あつまれ どうぶつの森』でスイッチ本体を買った方々の、2本目需要と上手く繋がったのでしょう。
海津:
『脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング』もずっと売れていますよ。7月くらいまでは『世界のアソビ大全51』『Ghost of Tsushima』『eBASEBALLパワフルプロ野球2020』などなど、我々の想定を上回って売れたタイトルが多い感覚です。
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PS5の抽選倍率は50倍、今後の展開をどう読むか
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─PS5に対するファーストインプレッションはどうでしたか?
武藤:
仕様面で言えば、ディスクレス以外のモデルを出してくれてよかったという安堵感がすごくありますね。中古市場が続けられるかどうかに関わってきますから、PS4への互換性があることもプラスに捉えています。
海津:
現状考えうる中では、値段等まで含めて最善だったかなと思います。
─我々としても、本体の値段がディスクドライブありで約5万円というのは思ったより安いなという印象でした。予約状況はいかがでしょう?
武藤:
これは弊社だけではなく、需要が供給を大きく上回っている状態です。予約が殺到してお客様を並ばせてしまう状況は避けたかったため、弊社はゲオアプリによる抽選販売という形をとりました。結果はまだお客様に開示してませんが、(※編集注:インタビューは10月15日に実施。掲載時点では開示済)当選倍率はざっと50倍といったところです。他の法人様でも同程度の倍率だと聞いているので、同じような状況なのでしょう。
─ご、50倍…!それだと当日販売分もなく、事前の当選者に渡すだけになりますね…。
武藤:
そうですね…。過去のPS4やニンテンドースイッチと比較しても、初回の流通量はかなり少ないと感じます。想定の3分の1くらいかな…。
─ちなみにPS5は本体が2種類ありますけども、どちらも取り扱う予定ですか?
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武藤:
割当て次第な所はありますが、どちらも取り扱う予定です。ちなみに抽選予約の応募比率は90対10で、ディスクドライブ有の方が多かったです。実際、SIEさんから出てくる数も85対15くらいで、ディスクドライブ有のほうが多いかなと。
─やっぱりディスクドライブ有のほうが多いんですね。
武藤:
ええ。やはり初回に買うお客様は、一番いいものを買うだろうという考えがSIEさんにもあるのかなと。もちろん北米と日本では比率も変わるでしょうが、世界的にそういった傾向だと思います。
─ソフトの予約はどんな状況でしょう?
武藤:
本体自体が抽選販売ということもあり、展開は強めにせず予約を受け付けている形です。タイトルでいうと、『デモンズソウル』と『スパイダーマン:マイルズ・モラレス』が予約のワンツーですね。後者には限定版と通常版が存在しているのですが、6対4ほどで限定版が選ばれています。
─周辺機器はどうでしょう?
武藤:
周辺機器に関しては予約は受け付けておらず、店舗に割り振ってから決めようかなと思っています。こちらもそれほど数が多いわけではないので…。
─店舗では発売日から大きくスペースを取って展開するのでしょうか?
武藤:
やはりPS5本体が安定して供給できる状態ではないため、大々的に入り口で構えるといったことは考えていません。PS4の売り場を変化させつつ、PS Plusの利用権といったダウンロード販売周りも整理して、売り場を作ろうと考えています。
─そうなると、まだまだPS4との2軸という形になるのですね。
武藤:
ただPS4自体の供給も少ない状況にあるため、仕入れ担当からするとどちらも買えず、ハードでいえばニンテンドースイッチに寄っちゃうのかなと。ソフトに関していえば、PS4のソフトはPS5で遊ぶとフレームレートが上がる等のメリットもありますし、そういった部分がお客様にちゃんと伝われば、引き続きPS4の定番ソフトや中古ソフトも買って頂けるかなと思っています。
海津:
PS4 Proよりも快適に遊べる機能がPS5にあるのであれば、PS4用に発売された定番タイトルや名作タイトルも、引き続き引っ張っていけるのかなと。
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─PS5にはディスクドライブが無いデジタルエディションもありますが、中古業界への影響はどんなものがあるでしょうか。
海津:
新作タイトルをダウンロードで買うというお客様は、販売ベースでも増えてはいます。これは我々の想定となりますが、おそらくSIEさん関連のタイトルであれば、ざっくり3割くらいはダウンロード版なのかなと。ただ、今の状況であれば、ダウンロード版に移行する割合は、進んでも年数%ほどと見ています。
─それほど急激には進まないと見ているわけですね。
海津:
ええ、その理由の一つは「通信環境」です。5Gどころか4Gも容量無制限でとなると普及したとは言い切れない状況の中、ソフトの容量が増えて100ギガが当たり前なんて状況になった時に、なかなかダウンロード版を選ぶのはまだ厳しいんじゃないかなって思っています。二つ目の理由は「SSD容量」です。PS5本体に内蔵されているSSDは実質800ギガ程なのですが、これもゲームが増えるほど足りなくなってくるのかなと。SSDの継ぎ足しにも費用がかかりますし、これから1~2年でディスクレスが主流になることはまず考えられません。とはいえ、PS5の後期やさらに次世代にはどうなっていくのだろうというのは懸念しながらの扱いになるかと思います。
─なるほど。
武藤:
今後もダウンロードが伸びていくことは間違いないでしょうし、中古ビジネスが縮小するとしても、弊社としては最後まで残していく方針でいます。他法人さんが撤退すれば、相対的に中古ビジネス全体における弊社のシェアが上がりますし、「中古といえばゲオ」という形になるのかなと思っていますね。それとダウンロードカード、ニンテンドースイッチやPS5に用いるSDカード・SSDといったアイテムを並行して取り扱う考えもあります。デジタルだから遮断するのではなく、共存できる商品やメーカーとも共存していこうと。白旗振ってるように聞こえるかもしれませんが(笑)、ダウンロード化の流れ自体は仕方ないことですから。
─昨今はメルカリ等のサービスを使って、ユーザー自身がソフトを売ることも多くなりましたが、中古業界へはどのような影響が出ていますか?
海津:
どちらかと言えば、ニンテンドースイッチといった単価が高い本体、特に新品の転売に影響が出ています。中古業界に関しては、ないわけではないけど、それほど強くはないですね。もちろん先進的なユーザーは売って買ってをうまく繰り返しているとは思うのですが、やっぱり思ってる以上に手間なんですよ。ましてやソフト1本1本で見ると本体と比較すれば単価は高くないし、まとめて店頭に売っちゃったほうが楽という考えも根強くて。
─転売対策としては、やはり抽選が基本になるのでしょうか。
海津:
それ以外は今のところ考えつかないですよね…。
武藤:
抽選販売のやり方についても、例えばメールアドレスを入れてお一人様ひとつまで等はしていますけど、こればっかりはいたちごっこだなとも。
─PS5について、今後期待していることを教えてください。
武藤:
ストレートに言ってしまうと、PS4より普及してほしいに尽きます(笑)。PS4は現時点で、国内1,000万台に届いてないんですよ。逆にスイッチはライトも含めて1,500万台を超えています。このラインを超えるとそこに紐付いて新品中古問わずソフトや周辺機器等全てが売れますので、そこを突破して上手く機種の世代交代をしていってもらうのが、何より期待していることですね。
─歴代PlayStationのロンチ時と比較して、ソフトの数はどう捉えますか?
武藤:
PS5のロンチタイトルはそれほど多くありませんが、本体自体の流通が少ない現状を考慮すると、これでよかったというのはあります。仕入れ側からすると、本体が無くソフトだけ展開し続けるというのはかなり厳しいので。『スパイダーマン: マイルズ・モラレス』もPS4版が同時に発売されますしね。
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─ユーザーの動きについては、いかがでしょう。
武藤:
昨今、転売需要といった動きがあるのは事実です。仮にPS5の流通量が、当初我々が想定したとおりだったとしても、抽選販売にせざるを得なかったんじゃないかなと思いますね。今後もハードが新しく発売する際は、この形がスタンダードになるのかなと。
海津:
PS5はロンチだけを見るのであれば、相当強かったんじゃないかなって個人的に思いますね。リファインではありますが『デモンズソウル』や『スパイダーマン: マイルズ・モラレス』がありますし、発売翌日には『コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー』が出ます。今のPSユーザーにとって需要のあるタイトルが、最初から揃っているんですよね。その分、ちゃんとハードがあればという気もあり、いろいろもったいなかったかなって印象です。
─PSVRはPS5でも使用可能ですが、こちらはどうでしょう?
武藤:
こちらも需要がある限り、続けたいと思っています。
─ちなみに次世代機、Xboxの方の取り扱いはどうでしょう?
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武藤:
少ない店舗でも取り扱っていきたいっていう気持ちはあったのですが、なかなか数がPS5よりも少なくてですね…とりあえず現在は弊社のECでのみ取り扱いの予定です。メーカーから数が出てくれば購入はさせていただくっていう形になると思います。やらしてもらいたい数が入ってこないと言いましょうか。日本全国的にそんな感じですね。
海津:
日本国内は、かなりガラパゴス化してるとはいわれますけど、それを解消するのは本当に遠い道だなと。
上半期を振り返って
─上半期を振り返って、改めて印象に残っているタイトルを教えてください。
武藤:
『あつまれ どうぶつの森』が凄すぎて、他が霞んで見えるほどの数字を叩き出しました。関連商品としてamiboカードが入荷するたびに日別でトップ販売数になるなど、コロナ抜きにしても過去にないパワーを持っていて、今でも売れ続けています。それと、最近は『パワプロ』が過去にないペースで売れています。
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─『パワプロ』はVTuber関連で流行っていた影響もあったかなと思いますね。
海津:
そこは中古のほうが目立ちやすいですね。『パワプロ』に限らず、登録者が多いYouTuberやVTuberが取りあげたゲームは、割と動きが出てきます。こちらとしても、急に売れたタイトルの原因を探ると、そこに行き着いたということは何回かあります。特に今回は、ゲームの実況動画が家にこもるときの巣ごもり手段の一つだったと思うんですよね。それによって売れたタイトルがいくつかありますし、『パワプロ』もその一つでしょう。似たような例で言うと、新品では『世界のアソビ大全51』が、中古では『ARK』がしばらく動き続けました。
武藤:
コロナならではと言えば、やはり『リングフィット アドベンチャー』が一番大きいです。運動不足が叫ばれましたし、テレビCMの影響もあったのでしょう。これもかなり売れた『Wii Fit』を彷彿とさせる勢いでした。さすがにこれも最近落ち着いてきましたが、一時期はゲオでも抽選販売の対象でしたからね。当初予想の10倍以上の売れ行きでした。
海津:
余波で『Fit Boxing』まで売れていますからね。
武藤:
なのでゲーム業界にとってはプラスなのかなと。普段ゲームをしないお客様まで来てもらっているというのは、良いことだと思います。
海津:
これ『Wii Fit』のときも全く同じ現象がありましたからね。それと一緒のことが起きています。
─『Wii Fit』の時はヨガマットを店頭に置いていたと以前伺いましたが、今回もそういった動きはされたのですか?
武藤:
正直、今回は色々と間に合っておらずでして…。年末に向けて準備はしているのですが。
海津:
『リングフィット アドベンチャー』がかなり売れると分かり、何かやろうとしたタイミングでコロナとなりゲーム以外の商品でも仕入しづらい状況になってしまい…。ここは後手後手に回ってしまったという感じになっちゃってますね。未曽有の事態の中で出来なかったこととして反省点として考えています。
─こういった所にも影響は出てきているのですね…。本日はありがとうございました!