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2010年代の半ば、世界でXR技術がさまざまな分野で広がる皮切りとして、まずVRが浸透していきました。その流れのなかで、コンソールにていち早く専用のデバイスを開発、販売したのがソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のPlayStation VRです。
それから時は過ぎ、コンソールの世代も変わりPlayStation 5(以下PS5)がリリース。より増加したマシンスペックを生かし、さらなる没入感をアピールしているのが今後のリリースを控えているPlayStation VR2(以下、PS VR2)です。
CEDEC 2022では『PlayStation VR2で拡がる世界』の講演にて、そんなPS VR2のスペックが語られています。SIEよりグローバル商品企画部の高橋泰生氏と、同社の東京グローバルデベロッパーテクノロジー部の秋山賢成氏が登壇し、詳しい解説が行われました。
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PS VR2の新たな機能と使いやすい構成
まず高橋氏が、あらためてSIEにおけるVR開発について振り返ります。「プレイステーションでは常に最高の遊び場を提供してきました」と高橋氏は語り、「そのゲームの世界に自分が存在しているような感覚が得られる感動体験があるのはVR」ということから、SIEにて開発が進められてきました。それが2016年のPS VRとしてリリースされています。
こうした初代PS VRの開発を通して「多くを学んできました」と高橋氏は振り返ります。そうして経験を元にした新製品こそが、PS VR2です。高橋氏はPS VR2を「真の次世代のVR体験をもたらす」ものになると太鼓判を押しています。
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さて、そんなPS VR2はどのようなスペックを持つのでしょうか。まず高橋氏はディスプレイについて解説。PS VR2では4K HDKディスプレイを実装しています。片目に2000×2040の有機ELディスプレイとなっており、なんとPS VRの約4倍となる解像度を誇っています。
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また有機ELによって、黒色の表現もより上昇しており、深いビジュアルが実現するとのこと。さらにダイナミックレンジを大きく広げています。フレームレートは90/120Hzとなっており、「より息をのむようなVRの世界を体験できます」と高橋氏は説明します。
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続いてPS VR2の魅力となるのは、広大な視野角です。PS VRが約100度だったのに対し、約110度の視野角を実現。高橋氏は「視野角を広げるレンズの開発は難しいんですが」と前置きしつつも、軽量のフレネルレンズを使用することで実現したとのことです。
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さらにPS VR2では視線トラッキングの機能も実装されます。これは肉眼での視線の動きを検出し、ゲームの操作に生かされるものです。ヘッドセットの中にIRカメラを実装することで実現されており、実際の目の動きでそのままゲームプレイできることから、より直感的にプレイできる魅力があると高橋氏は説明しました。
さらに、フォビエートレンダリング技術も実装。これは中心視野ほど高解像度になり、視野の外側になるに従い低解像度でレンダリングするという機能です。この機能により、効率的に高画質を作れるのです。
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没入感をもたらす仕掛けにヘッドセットフィードバックという機能も内臓。これは振動機能をVRに持ち込んだ機能です。PS VR2のヘッドバンドにモーターが内蔵されており、ゲームプレイに応じて作動。具体的には頭の近くに物が通過した時の衝撃や、車でスピードを出した時の振動をよりリアルに感じられるようになり、没入感を増すものとなっています。
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そしてPS VR2にも、PS5に実装されたTempest 3Dオーディオ技術を実装しています。これはVRヘッドセットのトラッキングを組み合わせることで、プレイする位置や向きに応じてサウンドを変化させます。ゲームで耳元に囁く声や、足音で敵味方を区別するなど、こちらもよりゲームの世界に入り込ませる機能となっています。
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PS VR2ではトラッキングにインサイド・アウト・トラッキングを採用しています。ヘッドセットに4つのトラッキングカメラを配置することで、外部センサーを設置することなくプレイヤーの頭の位置や向きのトラッキングすることを実現。
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こうしたPS VR2は快適な装着感があることも、高橋氏はアピールします。人間工学に基づいたデザインとなっており、一本のヘッドバンドだけで頭部に固定する構造や、ヘッドセットの重量バランスの最適化が行われています。
また両目のレンズ間の調整機能にも気が配られており、調整ダイヤルでレンズを目の位置に合わせて調整できるようにしております。通風孔も付けることで、効果的に換気も行っています。 このようにPS VR2はPS VRに比べて多くの機能がヘッドセットに組み込まれていますが、重さ自体は若干の軽量化も実現しています。
使いやすさということではケーブル1本でPS5とのUSB接続が可能な点も挙げられました。この接続のみで電源の確保や本体への接続が完了できるため、外付けの電源や外部カメラの設置、そしてTVへの配線の再接続といった煩わしい作業をすべて不要にしています。こうしたVRで遊ぶハードルを下げていることも魅力です。
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次にPS VR2のSenseコントローラーについて高橋氏は解説。円形が印象深いエルゴノミクスのデザインに加え、PS5のDualSenseコントローラーと同じくハプティックフィードバックとアダプティブトリガーを実装しています。その他にはフィンガータッチ機能などがあり、「これまでにない豊かな感覚を味わうことができます」と高橋氏は述べています。
コントローラーは握ったときに自然と手にフィットするデザインであり、手の動きを妨げることなく自由なゲームプレイを可能にしています。ボタン配置もデュアルセンスコントローラーに準拠した形となっています。
フィンガータッチ操作について詳しい解説も。これはボタンを押さなくても指で触れるだけで認識する機能であり、主にボタンを押す親指と人差し指、中指が置かれる場所に搭載。「この機能により自然なジェスチャーが可能になります」と高橋氏は説明しました。
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続いてPS VR2のシステムUXについてを高橋氏は紹介します。本ヘッドセットではトラッキングカメラを利用したシースルービューも実装。たとえばヘッドセットを被ったまま、コントローラーを探したいときなどにリアルの空間を映してくれるため、わざわざヘッドセットを被りなおしたりする手間をなくしています。
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プレイエリアのカスタマイズもやりやすくなっています。こちらはトラッキングカメラによって部屋をスキャンし、床や環境を認識する機能を実装しています。おもにPS VR2とコントローラーを使ってプレイエリアの拡大と調整を行っていきます。さらに別売りのPS5 HDカメラを使うことで、ゲームプレイ中の自分の姿を配信することもできます。
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その他に360度の視界で楽しめるVRモードと、仮想空間上の巨大な画面でVR非対応のゲームや映像コンテンツなどを楽しめるシネマティックモードも実装しており、以前のPS VRに引き続き、さまざまな使い方ができるようになっています。
PS VR2向けのコンテンツ制作
続いて秋山氏がPS VR2向けのコンテンツ開発について解説します。まず秋山氏が取り上げたのは、そもそものPS VR2対応タイトルの開発環境についてです。
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開発には主にPS5 SDKで行う形であり、PS5の機能をPS VR2にも適応しているとのこと。PS VR2向けのVR開発ツールもPS5 SDKと密接に連携することで、専用タイトルの開発を容易にしていると秋山氏は解説しました。基本的にはPS5のタイトル開発経験はそのままPS VR2のソフト開発に生かせる環境になっているといいます。
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またUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンでの開発にも対応。これらのエンジンを使ったVRタイトルをPS VR2にも簡単に移植できるとのことです。また、PS VR2コントローラーも他のプラットフォームによるコントローラーと類似のボタン配置となっているため、移植対応の時にボタン対応も大幅に行う必要がないことも秋山市は説明しました。
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次にFlexible Scale Rastertization(FSR)による高画質トラッキング機能について紹介。これはレンズに合わせて画面を中心に高解像度に替え、その周辺は低解像度にするというPS5のGPU機能ですが、PS VR2では先述した視覚トラッキング機能と組み合わせることでレンダリングを効率化しているとのことです。
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続いて、先述した振動機能であるヘッドセットフィードバックの設計についても解説します。これも振動をゲームに実装する際に、サンプルプログラムとしていくつかのデモを用意しています。マシンガンやショットガンの発射のほか、歩行やジャンプのデモによって、振動をどのようにPS VR2に実装するかを確認できるようにしています。
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そしてVR Traceという機能も用意。これは開発中のVRタイトルの問題点を診断できるツールであり、問題を自動検出できることを特徴としています。さらに、秋山氏が説明してきたPS VR2ならではのヘッドセットフィードバックやFSRの高画質トラッキング機能のチェックにも対応しています。
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またリモート開発環境も構築。これは通常のリモートワークみたいな話ではなく、VRヘッドセットを開発機に接続しなくてもVRタイトルを開発できること言うことを意味しています。
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PS VR2 Comfort Sampleという機能では、いわゆるVR酔いを引き起こさないための開発について学ぶことができます。時にクイズも織りませながら、視覚的な不快感を起こす可能性のある問題を見分ける方法を学習できるようにしています。
まとめとして、今回の講演からPS VR2でわかったことは「かなり使いやすさが増しており、かつ開発しやすさも強化されている」ということでした。やはりVRは没入感を楽しむ最大のメディアの一方、継続して使うには煩わしい部分も少なくなありません。そうした課題を初代PS VRの開発経験から洗練させたことが伺え、まずは期待できる内容だったと言えるでしょう。
PS VR2は2023年の初頭に発売を予定しています。
「CEDEC 2022」他の講演レポートを読む