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今、世界のゲーム業界ではサウジアラビアの影響力が日に日に強くなっています。
一般的な日本人にとってのサウジアラビアのイメージとは「厳格なイスラム教の国」ではないでしょうか。しかし、近年のサウジアラビアは国内のゲーム産業に多大な投資を行い、また日本を含めた外国企業の誘致にも動き出しています。
なぜ、サウジアラビアはゲーム産業に対して熱心な働きかけをしているのか? CEDEC 2023の講演『アラブ諸国のゲーム市場・産業、2023年の現状と将来~何故サウジアラビアは日本のゲーム会社の株を買い、ゲームに5兆円超を投資するのか?~』で、ルーディムス代表取締役の佐藤翔氏が「サウジアラビアの劇的な内情」を解説しました。
サウジアラビアの「二巨頭」
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まず前提として、佐藤氏はサウジアラビアのゲーム産業への大規模投資を行っているプレイヤーを紹介しました。
第一に、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が設立したMiSK財団。第二に、政府系ファンドのPIF。実はPIFも、ムハンマド皇太子が率いています。それぞれ目的が異なるとはいえ、王室が深く関わっていることに違いはありません。
ゲームビジネスに詳しい人は、PIFが任天堂の株式を「爆買い」していることをご存知のはず。今年2月には任天堂株の保有比率を7.08%から8.26%に買い増ししました。また、MiSKも『餓狼伝説』『KOF』で有名なSNKの株式を2020年に大量取得しています。
このように、MiSKとPIFは日本のゲームメーカーとも大きなつながりがありますが、一方でサウジアラビアのプレイヤーはこの2団体だけではないという側面もあります。
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「ゲーム産業育成」は国家戦略の一部
ただし、それらの団体の大半がサウジアラビアの国策の下で活動しているようです。
サウジアラビア政府は2016年に「サウジ・ビジョン2030」を発表。これは従来の石油採掘ありきの国内産業構造からの転換を意味します。
その中で、ゲーム関連分野は非常に重要な位置を占めます。これはサウジアラビアに限ったことではなく、たとえばインドネシアでも「ゲーム産業を雇用創出につなげる」動きが政府主導で行われています。ゲームづくりはモノづくりとは違い、原材料が不要。さらにデジタル配信のできる現代は、作品を物理ソフトとして製品化する必要もありません。
「いろいろな思惑がありますが、基盤にはしっかりとした国家戦略があり、その上で組織が様々な行動・活動をしているという認識が最も正しいと思います」
サウジ・ビジョン2030では「国内における文化・娯楽活動への支出を、総家計支出の2.9%から6%に引き上げる」「失業率を11.6%から7%に引き下げる」という目標も掲げられています。これを達成するには、ゲーム産業の存在が欠かせません。
鍵となる4つの目標
佐藤氏は、サウジアラビアのゲーム産業戦略についてさらに細かい解説を加えました。
「2022年9月にサウジアラビア政府が『国家ゲーム・eスポーツ戦略』を発表しました。ゲーム開発やeスポーツ等の分野で、86にも及ぶテーマが設定されています。それぞれ“こうしなさい、ああしなさい”といった戦略が規定されているのです」
さらに、サウジアラビアは以下4つの目標も設けています。
サウジアラビアをeスポーツイベントの最も有力な拠点にする
サウジアラビア国内のゲーム会社の数を250社に増やす
2030年までにサウジアラビアを拠点とするゲームスタジオから30以上のタイトルがトップ300に入る
国民1人あたりのeスポーツ選手数を世界3位以内にする
その戦略が制定される5年前(2017年3月)には「日・サウジ・ビジョン2030」という二国間協力プロジェクトが発表されていました。この中で掲げられているテーマのひとつ「娯楽とメディア」について、ゲーム産業がはっきりと言及されています。
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時系列を遡る形での解説ですが、こうして見るとサウジアラビアの財団が日本のゲームメーカーの株を「爆買い」する現象は決して不可思議なものではないというのが理解できます。