【ポッドキャスト文字起こし】ハイブリッドカジュアルゲームに必要な「メタゲーム」とは?【GameBusiness.fm: Select & Start #2】 | GameBusiness.jp

【ポッドキャスト文字起こし】ハイブリッドカジュアルゲームに必要な「メタゲーム」とは?【GameBusiness.fm: Select & Start #2】

GameBusiness.jpが送るポッドキャスト番組「GameBusiness.fm: Select & Start」配信第2回の文字起こしをお届けします。

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【ポッドキャスト文字起こし】ハイブリッドカジュアルゲームに必要な「メタゲーム」とは?【GameBusiness.fm: Select & Start #2】
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GameBusiness.jpは、ポッドキャスト番組「GameBusiness.fm: Select & Start」を配信しています。ゲームに携わる全てのビジネスパーソンに向けて、国内外のゲーム市場の動向を紹介しながら次世代のゲームビジネスのヒントとなる情報を発信していきます。本稿では、配信第2回の文字起こしをお届けします。

出演者

Game Server Services 代表取締役 CEO
丹羽 一智

GameBusiness.jp 編集部
多賀 秀明

ポッドキャスト「GameBusiness.fm: Select & Start」配信一覧

配信第2回のテーマ:ハイブリッドカジュアルゲームを制作するうえで押さえておくべき「メタゲーム」と「インゲーム」

――前回は「ハイブリッドカジュアルゲームとは何なのか」、「ハイブリッドカジュアルゲームは世界的にどのくらい成長しているのか」をお話いただきました。今回は、ハイブリッドカジュアルゲームのゲーム性について教えてください。

丹羽ハイブリッドカジュアルゲームは日本式のスマホゲームをベースにしてマネタイズしている面があるので、最初に今の日本で主流となっているスマホゲームの特徴をおさらいしたいと思います。

まずはゲームサイクルから見ていきます。ゲームサイクルは「そのゲームに関する一連の流れ」のことで、多くのスマホゲームは「クエスト」などと呼称される単位でサイクルを構成しています。これを私たちは「インゲームサイクル」と呼んでいます。

スマホゲームにはカード、リズム、パズルなどさまざまなジャンルがありますが、インゲームサイクルはジャンルを問わず5分ほどで一区切りがつくサイズ感に収まっていることがほとんどです。

しかし、今日のスマホゲームは「インゲームサイクルだけがおもしろくてもダメ」なんです。この認識を持っているかがどうかが、早期のサービス終了を避けられるかにかかっていると言っても過言ではありません。

――インゲームサイクル以外に、どのようなものが必要なのでしょうか。

丹羽インゲーム以外での大事なゲームサイクルは「メタゲームサイクル」と呼ばれています。

これはゲームをどのように遊ぶかという「戦略(メタゲーム)」によるサイクルのことで、たとえば「かぎられた素材でどのキャラから育成するか」、「かぎられたスタミナを何に使うか」、「課金通貨をどのようなリソースに投じるか」などが挙げられます。

スマホゲームはあるキャラを育成するにしても1か月、あるいは数ヶ月が必要とされることも多く、メタゲームサイクルが取り入れられたゲームはユーザーにとって「長期のビジョンを持って取り組む」ものとなります。

メタゲームサイクルが正しく機能しているとユーザーに長期的なモチベーションを持たせられるので、今スマホゲームを作っている人たちはインゲームサイクルよりメタゲームサイクルをおもしろくすることに時間と労力をかけているはずです。

――長期運営のためには、プレイヤー自身が計画を立てて遊べる仕組みが重要であると。

丹羽「5分遊んで一区切り」というだけでは、すぐに飽きが来てしまいます。ユーザーがもっと長期的な視点で目標を立てられるゲームにして、その目標に向かって取り組んでいけるようにすることが大切です。

ここでもうひとつ重要なのは「メタゲームの成果をインゲームにフィードバックする」ことです。「育成したキャラが強くなったことで、その分強い敵を倒せるようになる」ということですね。

日本のゲーム開発者のみなさんはこれを無意識にできています。しかし海外のゲームの中にはまだメタゲームへの理解が浅く、インゲームは楽しいけどメタゲームが切り離されたままになっているタイトルも見られます。

そうするよりも、メタゲームを遊ぶことでインゲームを有利に進められる設計にした方が、より多くの人に長期間遊んでもらえると思います。

――メタゲームとインゲームの結びつきが重要なのですね。

丹羽はい。しかし、ゲームをデザインするうえで「メタゲームを入れにくいジャンル」というものもあります。

具体的には、将棋や囲碁のような「プレイヤーのスキルによって勝敗が決まるゲーム」です。たとえば麻雀ゲームを「メタゲームをがんばれば配牌がよくなる」ようにしたら、ゲームとして破綻してしまいますよね。

つまり、スマホゲームをデザインする際は「インゲームとメタゲームをうまく結び付けられるか」を考える必要があるわけです。

――そのようなジャンルでもメタゲームを結びつけることはできるのでしょうか。

この点においては『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』がとても参考になります。『パズドラ』はパズルドロップを並べて消していくパズルゲームですので、ゲーム自体はプレイヤースキルに依存しています。

しかし「ドロップを消すことで手持ちのモンスターたちが敵を攻撃する」という仕様にすることで、時間をかけてキャラを育成した結果(メタゲームの結果)がインゲームにフィードバックされるようにもなっています。

「プレイヤースキルに依存するゲームでも、工夫次第でメタゲームの結果をインゲームにフィードバックできる」ことを示す好例だと思っています。

当時のブラウザゲームは「インゲームの魅力に乏しく、ほぼメタゲームのみで設計されている」ようなタイトルも多く見られましたので、これは大きな発明だったと思います。

メタゲームを深く理解している日本のユーザーは「玄人」である

丹羽スマホゲームにおけるメタゲームの重要性は押さえられたと思うので、ハイブリッドカジュアルゲームに求められるゲーム性の話に移ります。

今の日本のスマホゲームは、初期はブラウザベースのソーシャルゲームであった『ドラゴンコレクション(ドラコレ)』がベースになっています。まず最初にメタゲームがあり、それにインゲームを付けていくという作り方をしています。

また、今日のスマホゲームは大体の作品でオートプレイがありますよね? オートをオンにすると、自動で敵と戦ってくれるという。

――確かに、よく見られます。

丹羽オートバトルがおなじみになった背景には『ドラコレ』の頃に発明された「キャラのパーティー(デッキ)を構築し、そのデッキでインゲームを遊ぶ」というスタイルが主流になっていることが挙げられます。

強いデッキを構築できる環境を整えた段階(メタゲームの段階)でクエストをクリアできるかが大体決まるのでインゲームが面倒になり、オートプレイが付いてないと遊んでもらえなくなる……というわけです。

――インゲームよりも、メタゲームの方に熱心に取り組む状況になっているということですね。

丹羽はい。それは悪いことではありませんが、そうしたユーザーに向けたゲームは「かなり玄人向けの仕様である」ことは認識しておくべきだと思います。

メタゲームの概念があまり浸透していない海外ユーザーなどは、そういうゲームを遊んだときに「肝心のゲーム部分をオートで進められちゃうけど、これは何を遊ぶゲームなんだろう?」と思ってしまう可能性があります。

メタゲームに慣れているユーザーは「インゲームはメタゲームを進めるための作業」というような認識を持っている場合も多く、オートバトルがないと面倒だと感じてしまいやすい。

それに対して、まだメタゲームにあまり親しみがないユーザーはインゲームがおもしろく仕上がっていないとそれを包むメタゲームのおもしろさに気付けない。

だから今後のハイブリッドカジュアルゲームは、(より広い層に訴求できるよう)インゲームもしっかりしたおもしろさを持ったものが求められるようになると思います。

アーケードゲームにハイブリッドカジュアルゲームのヒントが隠されている

丹羽(日本の)カジュアルゲームは、メタゲームの考え方やフォーマットはとても完成されていると思います。その結果をインゲームにフィードバックする仕組みに関しても同様です。しかし、インゲームに関しては一皮むける必要があり、そのうえで参考になるのはアーケードゲームであると考えています。

カジュアルゲームは10秒程度の動画(動画広告)だけでゲームの概要や魅力を伝え、遊んでもらう手法を磨き続けてきました。これは、かつてアーケードゲームを作っていた人たちもとても強く意識していたことなんです。

コンソールゲームはお金を出して数千円のソフトを買ってくるところがスタートなのでユーザーのモチベーションが基本的に最初から高いですが、アーケードゲームはそうもいきません。筐体に100円を入れて遊んでもらったあとにもう一度100円を出してもらうためには、3分や5分といった1回のプレイ時間だけでおもしろさを伝える必要があります。

カジュアルゲームは、そういう「アーケードゲーム的なアプローチ(インゲームの魅力だけでユーザーを引きつける)」を取り戻さなければいけないと思います。

近年のスマホゲームを手がけてきた人たちがいきなり練り込まれたインゲームを作るのは難しいかもしれませんが、とてもクリエイティブな行為でもありますのでぜひ取り組んでいただければと思います。

――ハイブリッドカジュアルゲームとアーケードゲーム。意外なところに共通点がありました。

丹羽大学を出て新卒でセガに入社した頃は、よく「家庭用ゲームとアーケードゲームの違いは何か」という話を聞かされました。1プレイでおもしろさを体感してもらう必要があるというのもそうですし、それよりも前の段階として「どのゲームで遊ぼうかな」と思っているお客さんに選んでもらうことも大切である……と学びました。

日本のカジュアルゲームはメタゲームをインゲームにフィードバックする手法に優れていますし、インゲームそのものの魅力でもユーザーを引きつける……というのも日本のアーケードゲームが通ってきた道です。

そういう意味では、日本の開発者のみなさんは優れたハイブリッドカジュアルゲームを作るうえですごく有利なポジションにいると思います。

――ここまでお聞きいただき、ありがとうございました。次回以降も引き続きハイブリッドカジュアルゲームについてお話をうかがいます。

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《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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