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現米大統領のオバマ氏が前回の選挙にてゲームの要素を活用したことが、井上明人氏の著書『ゲーミフィケーション《ゲーム》がビジネスを変える』にて紹介されました。今や選挙にもゲームの要素が活用される時代となってきたようです。しかし、ただゲームの要素と言われても、今までの選挙と何が違うの?という疑問があるかと思います。その疑問について、アメリカ大統領選挙での取り組みをご紹介し、まとめとして『選挙』にゲーミフィケーションを活用する、ということを考えていきます。
1. マイバラクオバマ・ドットコム
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前回の米大統領選挙では、オバマ氏が「ソーシャル」を活用して大勝利を収めたということはご存知の方も多いのではないでしょうか。しかし、『ゲーミフィケーション《ゲーム》がビジネスを変える』(著者 井上明人氏)には、「「ソーシャル」であると同時に「ゲーム」でもあったのだ。」と書かれています。そう書かれる経緯となったのは、オバマ氏の『マイバラクオバマ・ドットコム』によるソーシャルでの展開が要因としてありました。
マイバラクオバマ・ドットコムはミクシィやFacebookなどのSNSサイトのような機能があり、また、オバマ氏を支援する各種の選挙キャンペーンが行われています。
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マイバラクオバマ・ドットコムには、ポイントやレベルなどのゲーム要素が存在します。まずは「登録」、次に「個人情報の入力」、次に「友達を誘う電子メールを送信する」など、簡単にできることから少しずつ段階を踏んでオバマ氏の支援をしていくことで、マイバラクオバマ・ドットコムのなかでのレベルが上昇していく仕組みになっています。
このような取り組みをした結果、あまりに熱中し過ぎるプレイヤーが出てしまい、オバマ氏の支援活動よりも、マイバラクオバマ・ドットコムでレベルを上げることに夢中になってしまい、ズルをしようというユーザーが現れたほどのようです。
「ソーシャル」の活用と、このようなゲーム要素の活用(ゲーミフィケーション)によって、オバマ氏のネット献金額は増大し、勝利へと繋がる一員となりました。
■献金総額
オバマ氏…7.5億ドル
マケイン氏…3.6億ドル
■ネット献金総額
オバマ氏…5億ドル
マケイン氏…0.75億ドル
※「ゲーミフィケーション《ゲーム》がビジネスを変える」より抜粋
選挙にゲーミフィケーションを活用する、という事例はこの結果を見るに、今後も増えていきそうです。次に、2012年のアメリカ大統領選挙を見てみましょう!
2. Politify
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TechCrunchにて2012年8月24日に掲載された記事で、アメリカ大統領選挙(オバマ氏とロムニー氏)をテーマにした『Politify』という無料のアプリが紹介されました。
カリフォルニア大学の学生二人が作ったWebアプリ『Politify』は、自分の年齢や収入などの要素を入力すると、二人の候補者それぞれが選ばれた場合の自分の収入への影響を計算してくれます。しかしこのアプリは、各候補者の税制計画を特定の党派色のない経済モデルで分析したもので、「この通りになる」というものではなく、あくまで楽しいゲームとして見た方が良いようです。
Politifyは、インターフェースが良く出来ていてゲーミフィケーションとしての要素も含まれていますが、このツール自体が「選挙というイベントのためのゲーミフィケーションである」という見方もあると思います。選挙という期間が定めらたイベントの中で、イベントを盛り上げ、参加するユーザーの関心度を高める(モチベートする)ことは、まさにゲーミフィケーション!と言えるのではないでしょうか。
3. VOTE!!!
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また、今回の米大統領選挙では、このようなゲームも登場しました: 「オバマ vs ロムニー」米大統領選挙のプロモゲームが登場!開発元はなんとEpic Games。
『VOTE!!!』は、『Gears of War』などの開発元として知られているEpic Gamesが、アメリカ大統領選挙のプロモーション用にリリースしたゲームアプリです。ユーザーは大統領候補のオバマ氏やロムニー氏に様々な服を着せたり武器を持たせたりして、ホワイトハウスの庭などでバトルを行うことができます。
このアプリは若者に対し選挙の重要性をアピールするために開発されたようで、アプリ内からオンライン上の選挙人登録ページへ誘導する機能があるようです。つまりこのアプリは、若者に向けた、選挙へのモチベーションを高めるためのゲーミフィケーションと考えることもできそうです。
4. ゲーミフィケーションは目的が大事
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今までご紹介したように、ゲーム要素ないしゲーミフィケーションを活用する動きは、近年「選挙」というジャンルにおいても活発になってきていることが体感できたのではないでしょうか。しかし、ここで注意しなければならないのは、「ゲーミフィケーションの目的」です。
ゲーミフィケーションを活用することによって、選挙に参加するユーザーをモチベートすることができるかもしれません。それによって、片方の陣営の支持が伸びたとしましょう。しかしゲームに夢中になることによって支持が伸びたとしても、 その人の支持が伸びたこととは必ずしもイコールではない、ということが言えます。
ユーザーが、「その人の応援をしたい!」という気持ちで活動をしたのならば良いです。しかし、「ゲームで活躍したい!」「ゲームが楽しい!」といった気持ちで活動をしたのならば、その人を本来支持しているわけではなく、ゲームが面白くなくなってしまったら活動を止めてしまうことも考えられます。
「選挙に勝つ」という目的でゲーミフィケーションを導入する場合、上述したようなことが起こってしまうかもしれません。なので選挙においてのゲーミフィケーションは、ユーザーに合わせた目的にすることが重要です。「その人のことが分からないのでもっと知りたい」や「支援したいが上手く行動ができていない」といった人に向けた活用であれば、目的がブレるということなく、より良いゲーミフィケーションができるのではないでしょうか。
ここまでいかがだったでしょうか。この他にも考え方はあると思いますが、今回は私の視点としてお考えください。それでは次回の記事でお会いしましょう!