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「PlayArt ビジュアルノベルゲームジャム」は、一般募集の参加者を数十名迎え、任意で数チームに分けて30時間で企画から開発制作を行う「ハッカソン」。今回で二回目となるこのイベントは昨年の同じ時期に第1回を行っており、その時にも30名あまりが参加して好評のうちに終了しています。
家庭用の普及により「秋の夜長にゲーム」……と言われ始めて30年近くが経過したわけですが、季節はまさにその秋。ゲームプレイヤーもゲーム開発者も、眠れぬ夜を過ごしている事と思います。そんな中、ビジュアルゲーム(ノベルゲーム、サウンドノベル)をテーマに開催された今イベントは、専門学校生や美大生や本職の方、または他職種に勤めているためゲームを作りたくても作れる環境のない方などが協力し合う、ボーダーレスな場。会場では任意に振り分けられた10チームほどを中心に、主にキャラクターを見せる作品作りを行いました。
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第1回もユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとコラボして進めていたこのイベント。第2回では「グラフィックデザイナー向けのをやろう」という話になり、今回の開催となったそう。同系統のイベントは通常プログラマーなどを中心として開発するのですが、この「PlayArt ビジュアルノベルゲームジャム」はプログラマーとデザイナーが半々という珍しいハッカソンとなっています。
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いよいよ発表の段階となり、司会の溝口達洋氏からユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの鎌田泰行氏へバトンタッチ。「みなさん緊張しているみたいですけど、コンテストや順位付けする場ではないので、楽しく発表してください!」と緊張をほぐしたところで、全9チームの趣向を凝らしたゲームをお披露目!
■チームA:Melos
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「走れメロスを乙女ゲームとして作ってみました」というこの作品。気合いの入ったタイトルが表示されると、「タイトル部分で力尽きた」とデザイン担当の方。全編ボイス入りで、乙女ゲームらしく男性キャストだけのフルボイス。女性キャラには声が当てられていませんでした。というか、このチーム、実は二人しかいません! セリヌンティウスが振られるところから始まり、陰謀渦巻く耽美な世界は乙女系サスペンスの装い。二人であるにも関わらずCGと文章量が多かったので、よほど上手く時間を使ったんだなと感じました。なんか……声は一人だけとおっしゃっていたような……なんですかそれ石田彰さん張りですね。正直驚きました。
■チームB:人狼 ザ・サスペンス
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「人狼」をテーマにしたサスペンスノベルゲームを作成したのはチームB。雪山に閉じ込められた7人。そこで起きる殺人事件の犯人を捜すのがゲームの目的となります。主人公は自分自身で、容疑者の一人となっているため、ゲームオーバーは犯人とされてしまう事。ただ単にシナリオ分岐だけで進んでいくわけではなく、重要なタイミングで上部「パッション(情熱、熱意)」ボタン押すと、みんなの信頼を得る事ができてクリアへ向かう……という形式になっています。この「自分の意見を熱情をもって話す」というのが重要で、「この台詞は重要だ」と思ったら迷わず押す事でクリア可能。「汝は人狼なりや?」の経験者なら、どこでパッションを出せばいいのか、どこが重要なのか分かるでしょう。このチームには「NHN PlayArt」の方が参加していたので、どこかでプレイできるかも知れません。
■チームC:ときめき☆妖怪学園
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「制作でいっぱいいっぱい」と青色吐息だったチームCの『ときめき☆妖怪学園』。このゲームは、主人公の男の子が妖怪の世界に連れて行かれ、そこで出会う妖怪JK(女子高生)達とあれこれイチャラブするというもの。シナリオと企画を兼ねた女性は息も絶え絶えで、「Game Jam舐めてました」と辛そう。徹夜で仕上げたシナリオの文字数は2万字となっており、「今すぐ帰りたいです」と限界も近い様子。「全体の雰囲気はぶっちゃけエロg……」と言ったところで男性陣から「せめてギャルゲって言って!」と突っ込まれ、「クラ○ドっぽい作品になっています」と語りました。つまりは泣きゲーであり人生という事ですね。ていうかあれは全年齢ですから!
■チームD:Siri+
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某ゲームの名前をそのまま使ったかのようなチームDのゲームが「Siri+(しりぷらす)」。iPhoneに搭載されている「Siri」と「ギャルゲー」の要素を合わせた作品です。内容は、「コングロマリットである”アプール社”に支配された近未来。ある日、主人公がスマホの新機種を買いに行くと、『あなたはえらばれました』という“Siriちゃん”の合成音が聞こえてきて……」というもの。この「Siriちゃん」がヒロインで、彼女は試験的に作られた人型デバイス。iPhoneとしての機能の他に人としての機能を備えています。実はこのゲームのSiriボイスはすべてが本物の「Siri」のものとなっており、チームの制作者が一晩中「Siri」に話しかけ続けてボイスを引き出し作成されました。そのリソース数はなんと50個超え。多くの音声を得るために、夜を徹しひたすら話しかけるシュールな姿を想像すると哀愁を誘いますね。大変に面白い試みで、「努力の方向性」ってやつは本当に多様性があるものだと染み染み思います。
■チームF:殴れ!メロス
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「ただノベルゲームを作るとなると、シナリオが面白い、立ち絵がかわいいという部分だけを競うゲームになってしまうため、何とかノベルゲームっぽくないゲームを作りたい」という気持ちで始まったチームF。「走れメロス」のラスト2000文字だけを抽出して作ったというゲームのジャンルは、「近代文学ビジュアルノベルバトルロワイアル」。メロスの「僕を殴れ!」という部分にフィーチャーしたストーリーの分岐は、基本的に「殴るか、殴らないか」の2択で進むというもの。最終的な目的は、メロス以外の登場人物を「自分が殴り殺されないうちに殴り殺して倒していく」となっています。何を言ってるか分からねーと思いますが、筆者はこんなのが大好き。また、エロ成分を求めて「メロスにマントをかける少女」に大フィーチャー。エロい展開や差分を用意しているとの事。ただし、そこに辿り着くには「一発殴られただけで即死させられる、ゲーム内最強の王様」を倒さねばならないため、以外と高い難易度となっています。Fチームはユニティの「宴」を使用する予定を変更し、UI諸々、BGMもSEもゼロからすべて作り上げたとの事でした。
■チームH:です・まあち 〜主人公子のねむれない一日〜
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ゲームが始まりタイトル画面には「です・まあち(・はハートマーク)」の文字。「本当は”〜主人公子のねむれない一日〜”を組み込みたかったんですけど、それができないほど激しい労働を強いられました」とのっけからデスマーチが鳴り響いている今作は、会場にいる開発者の心にグサリと刺さる作品。ゲーム製作会社の新人が主人公です。ゲームは開発から完成までの各パートに分かれていて、地獄の開発パート(プログラム、デザイン、サウンド)では各キャラが余計な事を言ってきます。画面上では文章が左右に引き延ばされて動いていましたが、これ、実は意図されて作られたものでは無いそう。「なんじゃそりゃああ」といった感じですが、これがまた地獄の開発パートに合っていました。この他に、「地獄のデバッグパート」もあり、これがまた非常にシビアな展開。最後のデバッグで失敗すると即死するという、「冒頭で選択を誤り、いきなりバーサーカーにミンチにされる」的な勢いを感じました。新人が酷い目に遭うのは既定路線のようです。泣ける。
■チームI:オタサー国の姫君
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「近くのコ・ワーキングスペースを借りてデスマーチをしていました」と、こちらもデスマーチからの帰還兵が集合したチーム。参加者のみなさんそれぞれがきつめのデスマを経験したようです。このゲームの開発に当たっては、「オタサーの姫が男の友情をクラッシュしていく話にしよう」と考えてシナリオ重視にしたそう。文字数は1万文字を数え、「プロットを作っていくうちに、憂鬱な展開、シリアスなものになってしまいました。ト書き的なものが多いですかね」とはシナリオ担当者の言。また、ゲーム終盤には3Dアクションパートがあって『ウィザードリィ』や『女神転生』のような展開に。ここでミスるとバッドエンド一直線でした。泣ける。可愛らしい姫にばかり注目しそうではありますが、「ヒゲ・小太り・某QPのようなモヒカンのような不思議な容貌」を持つ隊長の鎧の胸に「LOVE」の文字があり、みなさんそれが気になっていたようです。
■チームJ:災厄のユヴォール
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19歳から50代まで幅広い年代が揃うチームJは総勢6名という大所帯。オリジナルストーリーのゲームタイトルは『災厄のユヴォール』で、ユヴォールという小国家の中で5代目アーサー王として即位する若干16歳の主人公セイビアが、国の秘密に抗っていくというもの。ベースはアーサー王伝説ですね。一年周期ごとに試練を乗り越えなければならないというシステムを根底に置いています。時間的な余裕で細かい分岐までは作れなかったそうですが、道を選ぶ中で「王としての強さ」を求めていかなくてはいけないという内容に。また、こちらのチームも他のほとんどのチームがそうであるように、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの「宴」を使用しています。二日間で作ったとは思えないほど美麗な画像の差分が多くあり、画像的に高いクオリティを誇っていました。
■Kチーム:時間逆 時間逆転御伽草子
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「めでたしめでたし」から始まるこのゲームは、時間を逆転させて始める事で、「本当にこの御伽話はめでたしめでたしで終わるのか?」と言う事をプレイヤーに考えていただきたい、というコンセプトのゲーム。とある御伽話をベースにした、との事ですが、ファーストインプレッションは桃太郎ですね。このチームはイラストレーターが3人も揃っているという「リッチなチーム」(メインライター)であり、岡引き、飛脚、弓を持った女の子、と3人のキャラの立ち絵を含め、グラフィックが充実していました。「仕上げの部分が製品クオリティに近い」とは溝口達洋氏の言。「時間が逆」というと、映画「アレックス」(ギャスパー・ノエ)や「メメント」(クリストファー・ノーラン)を思い出してしまいますが、この物語がどうなるのかは、実際にプレイできる機会があればやってみてください。
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プロもアマも混じって成り立った「PlayArt ビジュアルノベルゲームジャム」。これからの展望をNHN PlayArtの溝口達洋氏と話したところ、オープンイノベーションを含めた様々なジャンルや企業、または他のイベントなどと複合的に発展させて行く事を視野に入れたいとの事でした。ハッカソン自体はゲーム業界のみならず様々な業界で行われているため、今後は今よりもっと楽しく、もっと革新的な何かが生まれる事でしょう。ゲームだけに留まらず、これから何が生まれてくるのか楽しみでなりません。