Shear氏が「著作権指令(いわゆる著作権法)の改正案」で焦点を当てているのは、「第13条」にて言及されている通称コンテンツフィルター(アップロードフィルター)の存在。「第13条」をおおまかに説明すると、仮に著作権を侵害する映像などが投稿された場合、いままで責任を負う対象はアップロードしたユーザーでしたが、この責任がYouTubeやTwitchといったサービス運営側に課される、というものです。
この改正案では、著作権者(音楽アーティストなど)が正当な権利に基づいて利益を得ることができます。声明によると、Twitchも改正案と著作権者が自分の作品によって対価を受けること自体は支持していますが、「第13条」のアプローチに関しては、「クリエイターとインターネットにおけるあらゆる表現の自由に対して不必要な損害を与えると考えています」とコメントしました。
以下はTwitchが第13条に懸念することです。
■当社が懸念すること
第13条によってTwitchのようなサービスがコントロールしなければならないとされていることが、そのままクリエイターにとっての損失となります。
第13条ではアップロードされた作品に著作権侵害の可能性のある場合、Twitchが責任を負うこととされています。そのためTwitchはEUの居住者がアップロードしたすべての作品に対してフィルタリングとモニタリングを強いることになります。このことにより皆様には著作権の所有情報やクリアランスを提供していただいたり、厄介で複雑な著作権法を遵守していることを証明するために必要な措置を取っていただくことになります。クリエイターは、このような措置に関連した誤った判定に対処しなければならなくなる可能性が非常に高くなります。また、EUの視聴者が利用できるコンテンツを制限することにもなります。
このような制約が課された上で運用すれば、実況解説、批評、ファン作品、パロディーなど、多くのコンテンツは公開することが難しくなります。あらゆるコミュニティや視聴者の方々にとっても楽しんだり批判したりする選択肢が少なくなるため、不利益を被ることになるでしょう。
以上のことからTwitchは(EU圏内においては)検閲に近い手段を取らざるをえなくなり、EU圏内に在住のストリーマーなどは大きな影響を受けることになります。当然、日本から見られなくなるストリームも増えるおそれがあるほか、第13条に反対する運動「#SaveYourInternet」も発足。表現の自由を制限する、という指摘もあります。
また、現状この「著作権指令の改正案」はEU圏内の国家のみに適用されることになるため、国内やアメリカなどへの影響は直ちにはありません。ただし、TwitchやYouTube、Twitterなどがこの問題の対応(フィルタリングなど)をグローバルに適用する可能性もゼロではないことは留意しておく必要があります。
Twitchは、コミュニティへの情報提供を広く呼び掛けており、欧州議会に所属する議員への直接的な意見の共有や、前述の#SaveYourInternet、オンライン署名サイトChange.orgにて展開している嘆願書への参加(記事執筆時点で387万1,086人が署名)などを紹介しています。
ほかにも、「リンク税(第11条)」なども盛り込まれている改正案は、2019年1月に本採決される見込みです。
Press Release: EU Parliament flip-flops backwards on copyright. https://t.co/oCkQqcLnF1 Next steps? #SaveYourInternet pic.twitter.com/qr7ZBUw1eh
— EDRi (@edri) 2018年9月12日