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7月12日、ディライトワークス本社にて、同社での仕事に興味がある人を対象とした情報交換・キャリア相談イベントの「肉会(MEAT MEETUP)Vol.13 プロデューサーの目利きのコツ教えます?! ~ディライトワークスインディーズ編~」が開催されました。開催の前日にはニンテンドースイッチ『タイニーメタル 虚構の帝国』が発売。本格始動した「ディライトワークスインディーズ」が、どのような考えでインディーズゲームを手掛けていくのか、というところにフォーカスが置かれました。ここではそのイベントについてレポートします。
「ディライトワークスインディーズ」を手掛けるのはディライトワークスの第3制作部。この制作部ではモバイルからコンシューマまで多彩なタイトルをプロデュースしています。インディーズゲームプロデュースもそのうちの一つというわけです。
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今回の肉会では第3制作部アシスタントプロデューサーの齋藤晃氏(1枚目)が進行役・聞き手となり同部プロデューサーの岡村光氏(2枚目左)・林真理氏(2枚目右)に話を伺う、という構成でした。
岡村氏はアートゥーン(のちにマーベラスへ吸収合併)を経てディライトワークスに入社。代表作は『ソウル・サクリファイス』『ブルードラゴン』などです。
林氏はポリゴンマジック、エイベックスピクチャーズなどを経てディライトワークスに入社しています。
なお、林氏と『タイニーメタル 虚構の帝国』開発陣によるインタビュー記事が姉妹媒体のGameSparkに掲載されています。こちらもお読みください。
『タイニーメタル 虚構の帝国』でインディーズパブリッシングに参入する真意は?「ディライトワークス インディーズ」キーマンに訊く【BitSummit 7 Spirits】
齋藤氏はモバイルゲームなどを手掛けていたエイタロウソフト、DMM.comラボなどを経てディライトワークスに入社しています。
◆未発表タイトルを含む「ディライトワークスインディーズ」の目利きポイントとは?
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「ディライトワークスインディーズ」はディライトワークスの理念である「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」のもとに、インディーズゲームメーカーが作るゲームをプレイヤーに届け、それがプレイヤーにとっての「価値あるコンテンツ」になることを目指す、開発段階からマーケティング、販売まで一貫してサポートするレーベルです。
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具体的には共同開発から国内・海外へのパブリッシングまで、あらゆる形でのインディーズゲームパブリッシングサポートを行います。第一弾となる『タイニーメタル 虚構の帝国』では国内パブリッシングサポート(海外では開発元であるAREA 35の関連会社がパブリッシュ)、デバッグ・ゲームチューニングなどがディライトワークス側で行われました。
今回の肉会では未発表タイトル2本を含めた「ディライトワークスインディーズ」の目利きポイントが紹介されました。
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まずは『タイニーメタル 虚構の帝国』について。これはミリタリーシミュレーションというジャンルに愛情を持ってプレイしてくれている人が少なからず存在するため、その人たちに開発元であるAREA 35の想いを届けたい、ということがポイントとなっています。ディライトワークスの参加によって、そこにより磨きをかけています。
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続いては岡村氏のプロデュースする未発表のタイトル。ここでは「プロジェクトA」と名付けられています。これは新しい遊びを提案するというもので、デジタルとアナログを融合させることが得意なクリエイターとディライトワークスが手を組んだ、というライン。アイディアを軸にしてゲームを開発しているということですが、まだ届けるところまでは進んでいない、ということです。アナログゲームのファンは決して少なくはないため、どのようなものに仕上がるかも含めて期待したいタイトルです。
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もう一作も岡村氏がプロデュースするタイトル「プロジェクトB」。ゲーム専業ではなくイベント用のデジタル作品などのクリエイティブワークを行っている会社によるアートワーク性の高いタイトルとのこと。企画を行っている会社がゲーム開発に関するノウハウが少なく、ディライトワークスを通じて開発チームをアテンドする、ということになりそうです。アート性とゲーム制作の融合を目指しており、完成したタイトルは世界に向けて発信する予定です。
◆オリジナリティ、ターゲット、サクセスの目利きがインディーズの成功には重要なポイント
6月に開催され、ディライトワークスインディーズとしては初の大型ゲームイベントへの出展となった「BITSUMMIT 7 SPIRITS」の話題も飛び出しました。時間をかけて作られたタイトルがいよいよ形となって飛び出した、という印象があり、今年あたりは新しい開発者が参加する「第二次インディーズゲームブーム」と称すべき現象が起きている、と話していました。これはコンシューマ機向けのインディーズの敷居が低くなったことも、盛況の理由として挙げられます。また、メジャータイトルと変わらないクオリティも飛び出してきているため、ユーザーの期待感も高まっているとのこと。
ディライトワークスブースでは『タイニーメタル 虚構の帝国』の試遊スペースに加え、インディーズゲームの相談スペースが設けられていたため、多くの開発者が訪れました。持ち込まれたタイトルの中には、ほとんど完成品に近いものもあったそうです。
その中で注目しているタイトルを両氏が紹介しました。岡村氏は「独創的なもの」や「ありそうで実はなかったタイトル」に注目しているということで、ターゲットユーザーの新たな広がりを起こせるタイトルや新しいものを生み出せるように思案しているそうです。
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また、海外からのタイトルの話にも触れ、東南アジアからの持ち込みタイトルでディライトワークスと一緒にやりたい、という話を頂いたそうです。海外の開発者は特に熱意があり、まずはお話をしましょう、とプッシュしてくれるとか。ちなみにディライトワークスでは翻訳やカルチャライズのみの案件も受けるとのことです。
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プロデューサーの目線として、3つの目利きポイントが挙げられました。まずはオリジナリティが重要で、ありきたりのものではインディーズゲームの世界で大成することが難しいのではないか、とのこと。岡村氏は尖った・作り手の熱意のある、新鮮なタイトルが欲しい、と語っており、「プロジェクトA」は圧倒的なオリジナリティを持っていると自負しています。
また、ターゲット層については、インディーズはマスを意識せず、こういう人たちに遊んでほしいというビジョンが開発側にあることを優先したいとも。例を挙げれば『タイニーメタル 虚構の帝国』はウォーシミュレーションというジャンルに多くのユーザーが付いており、そのユーザー層に刺さるような内容に仕上げたということです。
そして、「サクセス」、ゲームが成功してほしいという想いとなります。なによりもゲームで成功したい、プレイヤーの方々に楽しんでもらいたいという気持ちが強いところが目利きのポイントとなるようです。
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最後に、通常のゲームプロデューサーとインディーズゲームのプロデューサーの違いはあるのか、という疑問に関しては、規模感の違いはあるものの、プロデューサーとしての根幹部分・業務は変わらない、と話しました、第3制作部はインディーズ以外の案件もあり、やっていることの違いはほとんどない、ということでした。
質疑応答では、「『タイニーメタル 虚構の帝国』はなぜスイッチだけなのか」「インディーズゲームにおけるエッセンスの加え方」「インディーズのクリエイターと仕事をする上での気づき」などが挙げられました。最初の質問は冒頭で紹介した関連記事内で触れているので、そちらに譲ります。エッセンスの加え方については、ターゲット層に対して特定のエッセンスを加えることで訴求感・没入感が高められることや、その開発チームのユーザー層に加えて、別のエッセンスを加えることでさらにユーザー層を増やせるのではないか、という話も。また、『タイニーメタル 虚構の帝国』の開発ではデバッグ・チューニングのレポートが山のように出て、一気にフィードバックすることで、少人数で開発をしているAREA 35に負担がかかってしまった、というエピソードも披露。パートナーとの足並みの揃え方を考えることは重要、という意見も飛び出しました。
最後に、第3制作部ではインディーズだけでなく多くの作品を手掛けており、今までにない新しいものを一緒に作っていきましょう、というメッセージでMEETUPは終了しました。「ディライトワークスインディーズ」の今後の展開に期待が高まります。
◆今月のお肉
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今回は「トマトと豚肉の塩麹仕立て冷しゃぶ素麺」をメインディッシュに「短冊のように吊り下げられた生ハム」やうなぎの蒲焼など、七夕をイメージした肉料理が提供されました。