qureateは、先日発表されたばかりの新作、マッサージゲーム『マッサージフリークス』キャラクターの名前を変更することを発表しました。これは、現在、同作についてSNSを中心に巻き起こっている様々な議論の白熱を受けたもののようです。
同作は、「リズムゲーム×美少女×マッサージ」をテーマとした作品です。リズムに合わせて美少女をマッサージし様々な悩みを抱えるキャラクターたちのコリをほぐします。マッサージだけでなく、店外でのデートイベントも楽しむことができるようです。詳しいゲーム内容は元記事をご覧ください。
『廃深』『デュエルプリンセス』といった“お色気”作品をリリースしてきた同社ですが、本作に関しても下着を露出しながら太ももをマッサージ、マッサージが進行するにつれ服がはだける、最後にキャラクターが裸になるモードが存在するなど、得意とするセクシャル表現が多く盛り込まれています。
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しかし、今回に限ってはその表現そのものが、是非を問う議論へと発展してしまったようです。議論の論点となっているのは、大きく分ければ下記のようなもの。
マッサージにおいて性的なニュアンスを含んだ女性への接触表現があること
過去作(PC版のみの描写を除く)より踏み込んだセクシャル表現があること
強めのセクシャル要素を含む画像をプレス向けのリリースで利用したこと
主要な(性的な接触の対象となり得る)キャラクターの名前が実在のアイドルグループのメンバーの名前をモチーフにしたものであったこと
冒頭で触れた措置は、この最後の部分へと対応するためであったと考えられます。では、実際の内容はどうなのでしょうか?
同作はいわゆる「R18」として区分される表現ではなく、ましてやレーティングを介していないわけでもなく、CEROレーティングにてD区分(17歳以上対象)と正規に審査されているタイトルです。その販売は現状の仕組みにおいて一切の問題がないことには注意すべきでしょう。
ただし、プラットフォームによってはそのレーティング機関の審査の上に、さらに独自に規制を行っており表現に差がでる場合もあります(『LoveR Kiss』の仕様比較やIGN Japan誌による『ネコぱらVol.1』の検証がわかりやすい)。
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では、『マッサージフリークス』が発売されるニンテンドースイッチはプラットフォームとしてどういったスタンスを取っているのでしょうか。
任天堂の取締役社長である古川俊太郎氏は、2019年6月に行われた株主総会の質疑応答にて、「発売を認めるソフト、認めないソフトを恣意的に取捨選択すると、ゲームソフトの多様性や公平性を阻害することになってしまう」と答えており、少なくともこの時点では指定された第三者機関による審査を受けたタイトルについては独自に規制を行わない姿勢を示しています。
結果としてニンテンドースイッチにはマイルドなものから過激なものまでセクシャル表現が含まれるタイトルが多くリリースされています(『シノビリフレ』のような女性へのマッサージを主題としたタイトルもハード初期から存在しています)が、現在のCEROレーティングでは、「性器及び局部(恥毛を含む)表現」「性行為または性行為に関連する抱擁・愛撫等の表現」といった表現が禁止表現とされているため描写できず(倫理規定PDFを参照)、18歳未満が購入できないZ区分としての販売も不可能です。
国内のニンテンドースイッチとしても過去に複数回、女性キャラのバストトップのわずかな露出が原因とみられる販売の一時停止を行ったタイトルがあります。(『スーパーリアル麻雀PV』『Waifu アンカバード(Automaton誌による記事)』など)
逆を言えば、『マッサージフリークス』は「性行為または性行為に関連する抱擁・愛撫等の表現」もキャラクターの露出度も、発表と同時に公開されたスクリーンショットを超えるにしても早々に限界があるのです。
なお、ニンテンドースイッチ全体を見ると、2020年10月頃からは、ダウンロード専用ソフトに限りCEROレーティングを通さずとも無料で審査できるIARC汎用レーティング(過去記事が詳しい)でリリースすることも認めており、コンソール市場においては、比較的配信できるタイトルの幅が広いと言えます(なお現在はPlayStationもIARCレーティングに対応)。
同様に海外では『ウィッチャー3』のようなヌード表現や強いセクシャルコンテンツの一部ある作品でも「アダルトゲーム」という枠ではなく認められています(ESRB)。これはニンテンドースイッチの配信タイトルの描写にも影響しており、前述した『Waifu アンカバード』などをはじめ、海外ニンテンドースイッチではイラストで描かれた女性のヌードが規制なく見られるタイトルが複数存在している、二重規範が発生してしまっているのには注意が必要でしょう。
日本における家庭用のゲーム機のレーティングは「多様化するビデオゲームの青少年に与える影響への配慮」という社会的要請に答えるべく、16年ほど前を皮切りに発展してきました。しかし今日ではゲームタイトルがより一層多様化し、性的なものに限らず、大人向けのゲームや過激なタイトルがコンソールでリリースされることも当たり前になっています。
その上、当時は「洋ゲー」として多くは国内で主流ではなかった、異なる基準で作られた大人向けのタイトルがこの長年の間に当たり前のように日本でリリースされるようになりました。それらはときに表現の日本地域のみの特別な規制を招き、ゲーマーの間にたびたび議論を巻き起こしています。
既存のレーティングの枠組みと共存するかはともかくとして、大人向けタイトルが、それを嫌う人、嫌わず製作者が最も意図した表現で楽しみたい人、双方が納得できるように正しく大人向けタイトルとしてリリースされる仕組みが望まれる時期なのかも知れません。
なお、qureateはゲーム内容に関する意見は同社へと直接送って欲しいとしています。