
任天堂が2025年2月4日に2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の通期業績予想の引き下げを発表しました。
売上高は従来予想比7.0%減の1兆1,900億円、営業利益は同22.2%減の2,800億円に修正しました。任天堂は2024年11月に通期業績予想の下方修正を行っていましたが、今年に入って再度見直した形。年末商戦で販売が振るわず、ハードを150万台、ソフトを1,000万本それぞれ計画から引き下げました。
第3四半期の決算説明会では「ニンテンドースイッチ2」への具体的な言及はなく、詳細は2025年4月2日の「Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 – 2025.4.2」で明らかにすると語っています。
『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』はパーティシリーズ最高の販売数を記録
2025年3月期第3四半期累計期間(2024年4月1日~2024年12月31日)の売上高は前年同期間比31.4%減の9,562億円、営業利益は同46.7%減の2,475億円でした。
同期間における「ニンテンドースイッチ」の販売台数は前年同期間比19.4%減の274万台、「ニンテンドースイッチ(有機ELモデル)」が同37.9%減の507万台。ソフトウェアが同24.4%減の1億2,398万本でした。
後継機種の「ニンテンドースイッチ2」を発表したことによる買い控えの影響があったことは間違いないでしょう。
ただし、代表取締役社長の古川俊太郎氏は決算説明会にて、後継機でも既存のソフトウェアが遊べることもあり、現時点での買い控えの影響は大きくないと考えていると語りました。前期の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』や『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』のようなヒット作を生み出せなかったことが主な要因であると説明しています。
確かに、今期は2作のような1,000万本級のメガヒット作は生まれていません。しかし、2024年10月17日にリリースした『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』は617万本を突破するヒット作となっています。パーティシリーズの中では、発売から11週間の販売数でトップに立ちました。
同タイトルが発売された2025年3月期3Q単体(2024年10月1日~2024年12月31日)のソフトウェアの販売本数は5,370万本で前年同期間比19.7%の減少。一方、「ニンテンドースイッチ(有機ELモデル)」の販売台数は同26.1%減の257万台でした。ゲーム機の販売台数の落ち込みが激しく、買い控えの影響が大きいことは否めないでしょう。
任天堂が後継機の発売を発表した後、2024年11月6日には既存のスイッチ向けタイトルもプレー可能であることをアナウンスしました。それが『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』のヒット要因にもなっていると考えられます。後継機を発売する予定があることで、消費者はソフト・ハードともに購入の意志決定をするのが難しい時期。そうした中、任天堂の販売戦略は奏功しているように見えます。
任天堂のソフトウェア開発リソースの多くは、すでに後継機向けのものへとシフトしているはず。今期の大幅な減収減益は次の成長に向けた踊り場といったところでしょう。下方修正を発表した後も任天堂の株価が上昇していることがそれを物語っています。
経営陣はむしろ、ハードの買い控えが起こっていることを強調し、機種交代のはざまでもソフトウェアのヒット作を生み出せたことを投資家にアピールするべきだったような印象も受けます。

※決算短信より筆者作成
下方修正したことにより、任天堂の今期の売上高は前期比28.8%減の1兆1,900億円、営業利益は同47.1%減の2,800億円で着地する見込み。確かに減収減益にはなるものの、任天堂のこれまでの業績から考えると、明らかに潮目が変わっています。売上のピークを迎えた2021年3月期から3期連続でその水準をキープしていたからです。
しかも、2024年3月期は『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』などの爆発的なヒット作が生まれたために増収となっていました。
Wiiを発売したころは、2009年3月期に売上のピークを迎え、翌期は2割の減収、次は3割減、そして4割近い減収と凄まじい反動に襲われました。当時はソフトウェア販売だけで業績を維持することが難しかったうえ、後継機であったWiiUの手痛い失敗が重なりました。