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OnLiveのSteve Perlman氏 |
OnLiveはゲームをクラウド化することによって、ネットワークさえ備えていれば、あらゆる環境で、ハードの性能に左右されずに、ゲームを楽しむ事を実現しようという意欲的なスタートアップです。OnLiveのSteve Perlman社長兼CEOがGamesBeat@GDCのキーノートとして登壇しました。
GamesBeat@GDCは、ベンチャー情報サイトVentureBeatが協力して今年で2回目の開催となる、ゲームビジネスに特化したサミットです。「Xboxの蹉跌」の著者としても知られるDean Takahashi氏がコーディネーターとなって、今年は「既存のゲームビジネスを破壊する破壊的な取り組みをしているスピーカーを集めた」ということです。
まずPerlman氏は既存のコンソールゲームビジネスについて、5年というコンソールサイクルが壊れそうで、既に4年が経過しているのに次が見えない。物理的なメディアを使ったビジネスは中古や海賊版の影響が大きい。ソフト販売は低迷し、特にPCゲームの収益性が激減、PS3やXbox360のタイトルも収益を上げるのが困難な状況になっていると指摘。非常に厳しい状況にあるとしました。
そしてあらゆるメディアが「Now」(いま)のメディアになりつつあるとして、何でも、何時でも、何処でも、すぐに届けられるものが求められているとしました(パッケージを売るようなビジネスは論外で、ダウンロードして後で遊ぶというビジネスも時代遅れというわけです)。最初に「Now」になったのは音楽で、続いて映像/映画がそうなりつつあり、そしてゲームは今まさに「Now」に向かって走り出したと宣言します。
ゲームを「Now」のメディアにする「OnLive」はクラウドサービスの一つで、最新のハイエンドゲームがラインナップされ、どのタイトルも即時に遊べる、かつデバイスは問わず(TV、PC、Mac、スマートフォン、タブレットPC・・・)その性能も問いません。また、5年に一度ハードを買い替える必要もありません。
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コンセプト | ハードウェア | 周辺機器も多数用意 |
「OnLive」の外観は普通のゲーム機に見えますが、中身は大きく異なります。中には立派なCPUもGPUも積まれていません。ユーザーからコントローラー操作があると、その情報をクラウドに送信し、クラウドではその情報を処理し、ゲーム画面(映像)を生成してプレイヤーの手元のデバイスに返します。ユーザーの手元で発生しているのは、操作情報の送信と映像の受信だけです。デバイスの性能は関係なくなり、ネットワーク帯域次第で、いくらでも精緻な映像が実現できます。
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OnLiveの仕組み | 5箇所にデータセンターを設置 | こちらが実機 |
インターネットの通信速度が課題になってきますが、「OnLive」では独自の映像圧縮技術を採用して、負荷を減らしているほか、全米5か所にデータセンターを設置することで、どの場所からのアクセスも容易になっています。回線速度はSD画質のテレビであれば1.5Mbps(米国のユーザーの71%以上が1.5Mbps以上の回線を保有)、HD画質の場合は5Mbps(同23%)あれば快適に遊ぶ事が出来るそうです。
実際に会場ではデモが行われました。『Assassin's Creed II』や『Bioshock』『Borderlands』など最新のゲームがズラリとラインナップされ、どれもハードディスクにインストールされているかのように一瞬でアクセス可能なようでした。プロフィールやフレンド機能もあり、SNS的な要素も実装されていました。友達が遊んでいるゲームの様子もチェックできるようです。「OnLive」のブラウザ画面やゲームは非常に快適に動いていました。また、iPhone版も用意されていて、筆者の手元でも、そのままの画質で『Unreal Tornament』が動いているのが確認できました。これは驚愕と言ってもいいくらいです。
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メニュー画面 | ゲームを選択 | アサシンクリード2 |
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ゲーム中にメール送信も | クイックランチで別のゲームの起動も | フレンドページ |
「OnLive」では通常のパッケージよりも大きなマージンを参加パブリッシャーに支払う事を約束しています。また、他のプラットフォームからの移植も非常に容易になっているそうです。現在、EA、ユービーアイソフト、テイク2、ワーナーブラザーズ、アイドス、アタリ、THQ、コードマスターズなど主要ゲームメーカーが参加しています。
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参加しているパートナー | パブリッシャーとOnLiveの取り分 | 発売は6月17日 |
そして気になるサービス開始日は6月17日(米国)に決定しました。価格体系は基本料金が14.95ドル/月という以外は今後発表の予定だとのこと。個別タイトルの価格がどの程度に設定されるかが気になるところです。
家庭用ゲーム機という長年続いてきた形を壊すかもしれない破壊的な新サービス「OnLive」。価格体系やラインナップ、実際にどのくらいの回線速度が実現されるのかなど、まだ気になる面は沢山ありますが、実際にサービスインできるところまで漕ぎつけたというのは素直に称賛しても構わないでしょう。正直なところ、最初に耳にした時にはまさか実現可能には思えませんでした。残念ながらパートナーの中に日系メーカーは一社もなく(アイドスはスクウェア・エニックス傘下ですが)、メジャーパブリッシャーやテクノロジーベンダーがこぞって参加してこのようなサービスの実現に向けて走れる、その風土は羨ましくもありました。