Epic Games は、デモ「Infiltrator」の開発のために使用された新たなテクノロジーとテクニックをさらに進化させます。
筆者 Alan Willard (シニア・テクニカル・アーティスト兼レベル・デザイナー)
■ツールこそ肝要
Epic Games では、優れたツールを作成することが、常に最優先項目の一つとなっています。堅牢かつ洗練されたツール群を利用すれば、大規模なゲームも比較的短期間で開発することができます。また、アーティストとデザイナーは、ほとんど (あるいはまったく) コードを書かずに大量のコンテンツを作ることができるようになり、プログラマーは、ゲームプレイのメカニクスやシステムを新たに作ることから解放されます。優秀なツールがあれば、創造的なワークフローを乱すことなく、新たなアイデアに基づいて迅速にプロトタイプを組み、イテレーションを実施することができるようになるという点も見逃せません。また、ユーザーは、PCやコンシューマ、モバイルなど好みのプラットフォームで素晴らしくも美しいゲームをプレイしたいのですから、現代の多様なハードウェアに対応すべくゲームのスケールを変えて移植を可能にするツールも成功には欠かせません。
アンリアル・エンジン 4 の完成度が高まり成熟期に入った現在、私たちは新たなツールとテクニックを数多く駆使して、発売を控えている弊社タイトル「Fortnite」の完全製品版や、ハイエンド PC および次世代コンシューマ用の試作版を開発することができています。Sony の新製品発表会で PlayStation 4 用のリアルタイムデモが初めて公開されましたが、それを支えていたのもアンリアル・エンジン 4 でした。また、GDC (ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) において Epic Games は、この新エンジンによるデモ「Infiltrator」を発表しています。これについては後ほど触れましょう。
■次世代エンジンに関する新情報
●ブループリントのご紹介
ブループリントは、アンリアル・エンジン 4 に搭載されている新たなビジュアル・スクリプティング機能です。Epic Games の開発チームは、開発パイプラインのほぼあらゆる局面でこのブループリントを使用して、これまでにはないやり方で創造力を解き放っています。ブループリントは、レベル・スクリプティングのために使用できるだけではありません。完全にプレイアブルな小容量ゲームを作成し、瞬く間に動かすこともできます。たとえば、Epic Games の主任アーティストである Shane Caudle は、まったくプログラミングすることなく空き時間を使ってホバークラフトのゲームを作成することができました。彼は、コントロールや簡単な AI、HUD を含め、あらゆるメカニクスをブループリントを利用して作成することができたのです。
シニア・グラフィック・プログラマーを務める Daniel Wright によると、ディスタンス・フィールド・シャドウマップを作成したことによって、これらライトのシャドウイングを効率的に利用することができるようになったとのことです。シャドウは通常負荷が高いため、主にこの方式のおかげでこれほど多数のライトをサポートすることができるようになったのです。
パイプの上で最初の水滴が形成され、金属を伝わっていく様子を表現するために、シニア・FX・アーティストの Tim Elek は、パイプのプロファイルに合致した水滴メッシュを作成し、そのピボットをパイプの中心にオフセットしました。さらに、水滴のスケールを Matinee でアニメーション化することによって、それが形成される様子を表しました。流体が膨れ上がり、表面を転がり落ちるイリュージョンを作り出すためには、Matinee を利用してパイプの継ぎ目に沿ってメッシュを回転させ、そのタイミングを、水滴の下にある第二のメッシュ (このメッシュもパイプの形状に合致します) 上でパンニングするマテリアルに合わせました。
最後になりますが、「Infiltrator」のお終いに映し出される都市のショットは、マット・ペインティングのように見えるでしょうが、実際には多数のテクニックを駆使した 3D で作られています (2:44)。そのようにしてこれほど複雑なシーンを表現しているのです。たとえば、空は空間を覆う大きなドームであり、特別に高解像度な日没がブレンドされることによって、空全体の見かけ上の解像度が向上しています。車やその他の小さな光の多くは、光を出してパスに沿って導かれるパーティクル・システムです。シーンの視覚的な奥行き感覚を増すためには、さまざまな雲のレイヤーが使用されています。これらの雲の多くは深度フェーディングのシートです。それらのシートは、サーファスにおける空間的位置を、近くにある他のサーファスと照らし合わせるとともに、オパシティを制御することによって、サーファスのクリッピングに起因するアーティファクトを除去しています。これらのショットにおける残りの環境は、遠方に向かうレイヤーに配置された 3D オブジェクトから構成されています。