このセッションで登壇したのはEpic Games Japanのサポートエンジニアである岡田和也氏。同氏は公式フォーラムのUDNや会社訪問などを通してライセンシの方々をサポートしている人物です。今回のセッションで語られるUnreal Engine 4の「ノンゲーム」という分野は、文字通りゲーム以外で活用される映像や建築、教育などの分野ことについてです。ここで、様々な企業で活用されていることを示す2016年夏のSizzle Reelを披露しました。
■ゲーム分野以外にスピンオフするゲームエンジン
氏は、まず初めにセッションの第1項目である「“ゲーム”エンジンなのに“ノンゲーム”分野?」を説明。ノンゲーム分野においてゲームエンジンが使われ始めた理由は、ゲーム開発において培われた機能とノウハウの需要があることに加え、インタラクティブ性が高いコンテンツ製作とコンテンツ・リソースの適応範囲が挙げられます。
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ノンゲーム分野が抱えていた課題として、膨大なレンダリング時間と反復(イテレーション)性の低い制作工程(ワークフロー)の2つです。一般的なプリレンダリングのワークフローは、絵コンテを切り、プレビズ用の仮モデルを挿入し、アフターエフェクトなどのコンポジット(合成)作業を入れ、最終的な見た目が出来上がります。しかし、一方通行の制作過程で進むこの方法では、前工程に戻りづらいため戻るコストも嵩張り、他の工程との並行作業も難しいという問題点があります。映像業界における原則として、「試行錯誤の回数はクオリティの高さに繋がる」というものがあります。そのため、ゲームエンジン導入によるレンダリング作業の大幅短縮し反復性の高速化を進められます。さらにUnreal Engine 4ではプリレンダリングとほぼ同じ品質を実現可能です。
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例として2016年末に公開された映画「ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー」では、実際に最終カットの一部にUE4でレンダリングされた結果が使われたと述べました。ゲームエンジンを使うことによって前工程に戻りやすく並行作業も行い易いことに加え、リアルタイムレンダリングならではの最終版も確認しやすいこともあります。
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インタラクティブ性に関してはゲームが得意とする分野であり、リアルタイムな処理や入力に対しての反応、そしてバリエーションの高さがあります。コンテンツ適用範囲の広さについては、ゲームエンジンで開発することによりゲーム化への道が開けることや、対応している端末に移植することも可能です。また、あるコンテンツを開発したリソースを別のコンテンツで再活用するという使いまわしができます。
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■Unreal Engine 4が選択される理由
岡田は次に、Unreal Engine 4が選択させる理由について説明しました。Unreal Engine 4では、高品質なグラフィック表現の実現を支援する仕組みが備わっています。その例として先日リリースされたアップデート4.16ではボリュームメトリック・フォグとイメージベースのFTTブルームが対応したことを紹介しました。またマテリアルのセットやフォトリアルなサンプルをランチャーから無料でダウンロード可能です。表現もフォトリアルだけではなく、『ヨッシー for Nintendo Switch』のような折り紙のようなものや、『ドラゴンボール ファイターズ』ではトゥーンレンダリングも出来ます。
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さらに非エンジニアの作業を支援する強力な機能も存在します。ゲームエンジンにおいてグラフィック性能は重要ですが、どれだけ効率的でどれだけ早く作業を進められるかが必要になるからです。映像系などのノンゲーム分野の場合では、プログラマーが不在なケースもあるためプランナーやデザイナーが自由に作業できるかが重要です。それらはプログラマー1人に対し、関わる人数の多さがボトルネックとなってしまうため、非エンジニアが自分のアイデアを実装できることでプランナーなどの間で自己完結できることが強みとなるからです。UE4には、プログラミング不要のノードベースのスクリプトシステムで構成される“Blueprint”とシェーダー開発機能、そしてシネマティックカットシーンツール“シーケンサー”を有しています。
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ソースコードを無料公開したことで、ブラックボックス化を回避し、不具合が起こった場合に調査と修正をすぐに対応できること、様々なユーザープロジェクトからのフィードバックがあることです。それらによってユーザーとともに成長していくことが可能となり、開発を支援していくための資料提供(公式ドキュメントや講演資料、動画など)と、ユーザー同士の交流を行う公式フォーラムなど、ライセンシをサポートするフォーラム(UDN)があります。
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また、MayaやMaxなど様々なミドルウェアやDCCツールに対応しており、効率的なワークフローを導入できます。Mayaのライブリンクプラグインを用いてUE4上でリアルタイムにアニメーションや物理挙動を確認し、修正と繁栄が可能でバージョン4.17にて実験機能としてリリースが予定されています。さらに今後は他のDCCツールやモーションキャプチャーシステムと連携予定です。
■広がるUnreal Engine 4
最後の解説項目として、自動車や航空機、エンジニアリング、映像、映画、航空分野など様々な分野と国内外での利用されたUE4活用事例をピックアップして紹介。コトブキヤのキットブロックメカシリーズ「ヘキサギア」を紹介する映像作品の「MASTER BOOT RECORD」を披露しました。コラットが制作したこの映像は、この映像はUnreal Engine 4で表現されており、映像で登場する3Dモデルは現実にプラモデルとして発売されています。
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制作人数は7人、UE4の概念とフロー把握に1ヵ月弱、モデルのルック調整に1週間強、背景レイアウトからライティング、そしてレンダリングまでを1ヵ月で作り上げています。コラットがUE4の利点と特性を活かしたワークフローでは、高速なレンダリングによる作業時間の確保し、4K素材を5枚/分で書き出ししたようです。
各キャラクターの質感確認用のシーンを構成し、最終ルックに近い環境で確認と調整が可能で、クライアントチェックにも有効です。UE4で標準に入っている質感確認用のシーンはAdvanced LightingとHDRI Cubemapで変更します。さらに前述のミドルウェアとの連携によって更なる速度向上と効率化が行えます。これらによって、アニメーションとレイアウト、ライティングとコンポジションが並行して作業が可能となります。ここでは使用するツールに適したワークフロー構築が重要と結論づけています。
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続いてNinja Theoryが開発するPC/PS4向け新作アドベンチャー『Hellblade: Senua’s Sacrifice』のSIGGRAPHで公開されたリアルタイムモーションキャプチャーの映像を披露。さらに国内でも似た事例のものがあり東映のツークン研究所が制作した「Unreal Stage」です。
バーチャルカメラ撮影やレンズの画角も調整可能でキャラクターやカメラのアニメーションを複数同時にUE4へ自動インポートもできます。またIKinemaはモーションキャプチャー用のシステムプラグイン「FullBodyIK」を販売しており、高品質なアニメーション作成時間を1/5に短縮したようです。さいに、VRデバイスを用いた簡易モーションキャプチャーシステムを開発したそうです。
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Unreal Engine 4におけるVRの対応状況に関しては、HTC ViveやOculus Riftなどの主要なVRHMDやVR用のテンプレート、エディタ、プラグインに対応。さらにMacへのVR対応(Metal2や幅広い最適化)に加え、10月リリース予定のUE4バージョン4.18にて提供を予定しています。ARではApple ARkitへ対応しており、従来はマーカーを設置して表現する必要がありましたが、精密な精度でトラッキングできるようになっています。バージョン4.17でバイナリをサポートし、それ以降のバージョンでGoogle Tangoへ対応しMRを実現するためのサポート機能が実装されます。
他の企業ではBMWがMRシステムを開発しており、「試作しなければわからない」というコストを削減するようなものや、建築業界における活用例として「IKEA VR Pancake Kitchen」や、海外テレビ業界によるグリーンバックMRの「Lost In Time」で活用されています。そして最後にユニークな活用事例として、バンダイナムコエンターテインメントによるUnreal Engine 4を使った3Dアニメ制作のメディアミックス作品「Project LayereD」を紹介しました。
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またNVIDIAによるUE4を用いたAI学習システムも開発や、ユニークな事例として中台製作所による神輿製造シミュレーターを紹介。最後にライセンスに関して解説してこのセッションを終了しました。
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