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己の宇宙船で広大な宇宙を駆け、交易や海賊退治に勤しむ……宇宙SFファンの多くが夢見ることですが、そんな内容を1984年、まだポリゴンの処理能力も乏しかった時代に3D空間を舞台にしたオープンワールドタイトルとして実現させ、一躍有名シリーズとなった『Elite』。同作はその後、『No Man's Sky』『X』などを含め多くのフォロワーを生みましたが、同作自身も2014年にクライアント買い切り・月額課金なしのMMO『Elite Dangerous』として復活、6年の長きに渡り、日本を含め世界中で多くのファンを獲得しています。
本稿では、そんな『Elite Dangerous』を手掛ける開発Frontier Developmentsにメールインタビュー。同作の新要素、空母「Fleet Carrier」や同作の過去・未来、そして日本ユーザーが気になる日本語対応についてまでを聞くことができました。
――『Elite Dangerous』は日本においてもコアゲーマーを中心に、近年の宇宙ものとして十分に高い知名度を誇っています。存じていましたでしょうか。
Frontier Developments PRマネージャー Joss Herraez(以下Herraez)もちろんです!『Elite Dangerous』のコミュニティは世界中からプレイヤーを歓迎しており、多くの日本人コマンダー(筆注:同作のプレイヤーは「(船の)コマンダー」と呼称される)を迎えたことを誇りに思っています。
――まだ『Elite Dangerous』を知らない日本のユーザーに同作の魅力を説明してください。
Herraez『Elite Dangerous』はMMOの宇宙ゲームの決定版であり、オープンワールドゲームの元祖を、接続された宇宙・完全に再現された天の川銀河・変わっていく物語などの現代に向けた作りでもたらす作品です。
プレイヤーは小さな宇宙船といくばくかのクレジットだけを持ち同作の世界に飛び込みます。その後は、4,000億もの星系で構成される殺伐とした未来の銀河系で生き残るために、必要な技術・知識・富・力を様々な活動を通じて獲得し、象徴的な「エリート」を目指すことになるでしょう。
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銀河の超大国の星間戦争の時代において、すべてのプレイヤー自身の「物語」は相互に接続されユニークなゲーム体験をもたらし、我々の手掛けるゲームの物語そのものにも影響を与えていきます。政府の崩壊・戦いの勝敗……人類のフロンティアはプレイヤーの行動によって形を変えていくのです。
――『Elite』は歴史が長い、というよりジャンルの元祖と呼ばれるタイトルですが、その成り立ちにはどの様なドラマが有ったのでしょうか。当時のPCでは3Dを実現するのは非常に大変なことでした。
Herraez『Elite』は史上初のオープンワールド(もしくは「オープンギャラクシー」)作品として知られています。1984年にDavid Braben(筆注:Frontier Developments創設者・CEO)とIan Bellが初代『Elite』を手掛けた際、彼らの野心的なビジョンは8ビット時代のコンピュータの技術的限界をはるかに超えたものを作り出しました。
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エミュレーターと、当時のマニュアルのスキャン品付きで無料配布されている
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8bitPC(おおよそ記録媒体が“カセットテープ”だった時代の直後だ)で実現していたのは驚異である
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ワイヤーフレームによる優れた3Dグラフィックだけでなく、同時期のゲームと一線を画していたのは惑星の位置・名前・政治・一般的な説明を含む、自動生成の宇宙でした。(筆注:初代『Elite』のシード値は固定なので、ローグライク作品と違ってマップ自体は常に同一。自動生成の技術を使って少ないデータ量で膨大なコンテンツを実現したところが大きな技術的特色となる。近年の作品だと『No Man's Sky』が近い構造を持っている)
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後年の移植版の要素を多く取り入れており、2020年現在、最も手軽に遊べる初代『Elite』だろう
長年に渡り“大人の事情”で配布が中断していたが、2014年に『Elite』30周年記念として配布再開された
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上記オリジナル版と比べてみるのもいいだろう
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改善する可能性がある(筆者環境では改善を確認)
それぞれに256個の星を内包する8つの銀河は、8ビットPC向けゲームとしては前代未聞のコンテンツ量でした。そうしてジャンルの先駆けとなった『Elite』は、その後長年に渡り多くの別テーマのフォロワー作品を生み出し続けることになったのです。
――『Frontier: First Encounters』から、何度かの『Elite 4』の企画と長い年月を経て完成した『Elite Dangerous』ですが、どの様な点がユーザーに広く受け入れられたのだと考えていますか。
Herraez『Elite Dangerous』はただのスペースシミュレーション(筆注:宇宙船を操縦するシムタイトルは「スペースシミュレーション」と呼称されることがある)ではありません。このゲームでは、プレイヤーは自由な人生を歩むことができます。良心的な商人になるか、冷酷な海賊になるか、その中間を選ぶこともできますし、途中でその道を変えることすらできます。このような爽快感のある自由な感覚と、とても遊び切ることができないタスク量、前例のないほどの細部へのこだわりは、2014年末のリリース以来、何年にもわたってプレイヤーを魅了し続けています。
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――ベータがついに開始となったFleet Carrierは、維持費も膨大で、クランでの運用が前提になっているようです。実際にはソロプレイヤーでも楽しむことができるコンテンツなのでしょうか。また艦と共に運用できる、恒久的なNPC僚機のような要素は今後検討されているのでしょうか。
HerraezFleet Carrierのベータ版は順調に進行しており、こうしている間にも開発チームは何千人ものプレイヤーから貴重なデータやフィードバックを収集しています。このフィードバックはすべて、6月の本実装に直接影響を与えることになります。
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ソロのコマンダーや、小規模な集団がFleet Carrierを平等に利用可能にするための維持費の削減など、インパクトのある変更が一週間ですでに実施されました。(筆注:このメールインタビューの間に、Fleet Carrieの劇的な維持費の削減がなされた)このような微調整は、開発チームと本作の素晴らしいコミュニティとの協力精神のたまものです。Fleet Carrier自体はもちろん個人でも所持が可能で、大小16基の他のプレイヤー向けのランディングパッドや500光年のジャンプ能力を備えています。恒久的なNPC僚機についてですが、開発チームでは常に新たなアイディアを検討はしていますが、知る限りでは現時点での計画はありません。
――この先、『Elite Dangerous』はどの様な方向へと拡張されていくのでしょうか。「Horizons」のような更なるシーズンパスの可能性はありますか?
Herraez我々はすでに本作の「次の大きなマイルストーン」にむけて開発を続けています。まだ具体的な情報を明かすことはできませんが、新しい時代の幕開けはすべてのコマンダーが体験できるものになりますのでご安心ください。
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――『Elite Dangerous』は近年のFrontier Developmentsの作品では唯一日本語に対応していません。同作はPCですら近年数少なく、コンソールではほぼ皆無でもある本格的なスペースシムです。また本格的なVR対応ゲームでもあります。日本でも長年本作の正式な登場を待ち望んでいるユーザーは多いのですが、今後日本語対応される予定はあるのでしょうか。
Herraez弊社の『Elite Dangerous』のビジョンには、ゲームプラットフォームに関係なく、より多くのプレイヤーがゲームにアクセスできるようにすること、そしてVRや周辺機器など体験をより豊かにするツールへの対応が含まれています。残念ながら直近では本作の日本語化の予定はありませんが、今後その時が来たら最初にお伝えします!
――日本のユーザーへのメッセージをお願いします。
HerraezFrontier Developmentsを代表して。『Elite Dangerous』をプレイしていただき、誠にありがとうございます。皆様の継続的なサポートをいただけることは大変光栄です。今後も『Elite Dangerous』が最も魅力的でエキサイティングなコンテンツを提供し続けられるよう努力してまいります。「ありがとうございます!」(敬礼)
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『Elite Dangerous』はSteamおよび、海外PS4/Xbox One向けに配信中です。