
8月31日から9月2日まで、合同会社DMM.comがオンライン開催する「アニメ・ゲームサミット 2022 Summer」。
アニメ・ゲーム業界の発展を目的に、出版社やアニメ制作スタジオ、ゲームパブリッシャーなどの関係者が異業種のPR担当者や学生と講演・商談を行うもので、4回目となる今回は、BtoBのみならずクリエイターや一般来場者にも門戸を開く、規模を拡大したものとなっています。
円谷プロダクション、スクウェア・エニックス、一般社団法人アニメツーリズム協会などそうそうたる登壇者の中で、今回IP活用分野の基調講演をするのは「壽屋」。
「壽屋」といえば、立川に本店を置く国内大手のフィギュア・プラモデルメーカーです。「コトブキヤ」または「KOTOBUKIYA」として知られ、自社IPの美少女プラモデルシリーズ『フレームアームズ・ガール』が2017年にTVアニメ化されていたりもします。
その壽屋より、ライセンスチーム・チームマネージャーの下吹越 達也氏が登壇。「コラボを通したコンテンツ育成 -“創彩少女庭園”のコラボ戦略-」と題し、6月におこなったばかりの『創彩少女庭園』と「ZOZOTOWN」のコラボについても語ってくれています。
本稿ではその基調講演の一部内容と、講演終了後に行ったミニインタビューをお届けします。なお、事前の登録を済ませておけば講演の聴講はすべて無料となっています。

◆『創彩少女庭園』は美少女プラモブームのトップランナー
組み立て式プラスチックキットの分野で、ここ数年モデラーおよびキャラクタートイのファンから熱視線を浴びているジャンルがあります。それが「美少女プラモデル」と呼ばれるジャンルです。
これまで男児向けトイの分野では、女性キャラクターはあまり目立つ存在ではありませんでした。しかし2000年代のフィギュアブームの流れで美少女キャラクターが男性ファンの間で定着すると、それがやがて組み立て式プラスチックキットの分野にも波及。今や大手メーカーや中国の新興メーカーがこぞってシリーズを展開するようになっています。
コトブキヤが本格的に美少女プラモデルの展開を始めたのは2015年のこと。2009年に自社IPとしてロボットプラモデル・シリーズ『フレームアームズ』をスタートし、2015年にはそのスピンオフとしてメカを美少女化した『フレームアームズ・ガール』を開始。2016年には美少女プラモデルシリーズ第2弾となる『メガミデバイス』をスタートさせています。
『創彩少女庭園』はコトブキヤの美少女プラモデルシリーズとしては3つ目のIPとして2021年よりスタート。Vtuber「キズナアイ」を手掛けた森倉 円氏がキャラクターデザインを担当したことでも話題になりました。

コンセプトは「自分の手で組み立て、女の子をコーディネートする“プラモデル”!」。
それまでの美少女プラモデルといえばアーマーをまとう「メカ少女」がメインストリームでしたが、『創彩少女庭園』ではあえてそのアーマー要素をオミット。普通の少女として立体化してされています。
そして『フレームアームズ・ガール』や『メガミデバイス』と同様、髪パーツや小物も別売りオプションパーツとして販売することで自分だけの世界観が構築できるようになっています。まさに「自分の手で組み立て、女の子をコーディネートする“プラモデル”!」です。
「おかげさまで、リリースした3人のキャラクターはすべてAmazonさんのホビー総合ランキングで1位を獲得するほど反響をいただきました」
登壇した「壽屋」ライセンスチームマネージャーの下吹越 達也氏はそう語ります。
ライセンスチームとは、IP活用、海外作品のライセンス申請、地域貢献業務などを統括する部署のことを指します。
講演内で「壽屋」や自社IPについて紹介をした下吹越氏は、『創彩少女庭園』の概要、企画の経緯、作品の特長などを説明した後、最新の動きとして6月17日から実施していた「ZOZOTOWN」とのコラボを紹介。

森倉円氏の描き下ろしイラストをもとにしたプラモデル、プラモデル用のコラボジップパーカー、実際に着用できるジップパーカー、Tシャツ、そのほか雑貨類を展開し、好評のうちに販売終了したという『創彩少女庭園』初のビッグプロジェクトについて語ってくれました。

もともと『創彩少女庭園』のキャラクターは普通の女の子という設定。コラボに合わせてどのような展開もできる、いわば真っ白なキャンバスが強みです。そこでかねてから設定していた「キャラクターをタレントとして扱う」という方針に従い、「(創彩少女庭園のキャラクター)結城まどかがファッションモデルに挑戦した」という背景でコラボを展開しました。
またドールメーカーの「アゾン・インターナショナル」にも協力してもらい、プラモデル用のジップパーカーの型紙を起こしてもらう試みも紹介。いわばトリプル・コラボを実現した形です。
この試みは好評で、プラモデルとプラモデル用のジップパーカーはZOZOTOWNの公式サイトの総合ランキングで1位を獲得。特にジップパーカーは7分で完売しました。

「課外活動という設定があるのでどのようなコラボにも対応できる下地が彼女たちにはあります。彼女たちにはどんどんと色々なことに挑戦していってほしいですね」
そうやって送り出したキャラクターたちがZOZOTOWNとのコラボをやりとげた今、コラボ企画で必要なことを問われて下吹越氏はこう告げる。
「コラボで大切なことはお互いを知ることだと思います」
自社の強み、できること、そして弱いことを開示し、何が求められているか知った上で最善作を取る。意思疎通こそコラボ成功の近道だということです。
その他にも、動画内ではIPコラボにまつわる話が紹介されています。IPコラボの展開を考える際に必見の内容となっていますので、講演の全容はぜひ動画をご覧ください。
【ミニインタビュー】
――『創彩少女庭園』のデビュー当初、キズナアイさんを手掛けた森倉円さんのキャラクターということで注目していたのですが、予約していなかったため即完売になってしまい、後悔したとともに驚いたことを覚えています。
下吹越弊社の美少女プラモデルについては、ありがたいことにご好評をいただいているので、当時は生産キャパ最大数をご用意しました。それでも完売という状況が、再生産を重ねてもしばらく続いてしまいましたね。
弊社の美少女プラモデルは組み立てただけでもイメージに近い仕上がりを楽しめるよう目の部分などを塗装しているので、フィギュアの生産に近く、もともと一度に生産できる数に限りがあるんですよ。特に『創彩少女庭園』は、森倉さんのイラストをしっかり再現したいという思いがあるので、目の部分で使用している色の数が膨大です。こだわった部分なので大変ではありますが、その分、クオリティに対する自信もあります。
――ファンとしては、塗装済みなのはありがたいですね。「人形は目が命」とよく言いますが、自分で塗装したりデカールを貼ったりすると十中八九失敗しますから。
ところで今回はアパレル分野とのコラボでしたが、作品のポテンシャルとして、コラボではそのほかどのようなことができるのでしょうか?
下吹越自由度は高いです。普通の学生という設定ですが、リアルの役者さんのように、バトルものの作品であればその世界観に合わせることができますし、ZOZOTOWNさんの時のようなファッションモデルもできます。プラモデルと同じくどのような姿、役割にでもなれるのが彼女たちの強みです。
SQUARE ENIXさんの『プロジェクト東京ドールズ』というゲームでは、「髪型パーツを3Dプリンターで出力し、それを配布するキャンペーンをしたいです」と打診を頂いたこともありました。
――カスタマイズ用の髪型パーツですね。
下吹越そうです。当時、『プロジェクト東京ドールズ』の周辺グッズにフィギュアはありませんでしたから、その髪型パーツに差し替えるだけで『プロジェクト東京ドールズ』のキャラクターに擬似的に改造できます。それは『プロジェクト東京ドールズ』のファンとしても嬉しいし、『創彩少女庭園』のファンも新規の髪型パーツが手に入るということで好評でした。
――それは許可取りだけが行われたケースかと思うのですが、実際に御社が企画として動く際、チーム内の設定のすり合わせはどのように行われるのですか?
下吹越特定の部署ではなく、部署をまたいだ「創彩少女庭園プロジェクト」というチームで動いているのですが、隔週でプロデューサーがメンバーを招集しています。キャラクターたちは普段、普通の学生生活を送っていますから、コラボで特別なことをすればその分、キャラクターたちに意外性が出てさらに輝きます。そのあたりをじっくり話しながら各チームメンバーが持つリソースを最大限活用出来るように内容を詰めていきます。彼女たちは何にだってなれますが、何でも請けるようなことはしません。意味が見いだせるかどうかが重要です。
――そこまで考えていただけると、コラボ企業としては安心ですね。
下吹越実はコラボだけでなくグッズ化の打診をいただくこともあります。ただ『創彩少女庭園』は人気アニメ作品のように誰もが知るタイトルというわけではないので、単にイラストをグッズ化しただけでは売れません。そういったことも素直にお伝えした上で、結果として企画を辞退させていただくこともあります。
しかしお互いの良さを話し合い、ブラッシュアップしてお互いを高められる企画なら全力で取り組ませていただきますし、有名アニメ作品にも負けない結果を生み出すことも可能だと考えています。
――そしてZOZOTOWNさんとのコラボで驚いたのが、アゾン・インターナショナルさんとのコラボです。同業者とのコラボはクロスオーバー感があって、意外でもありますし豪華です。
下吹越もともとブログやSNSで、アゾン・インターナショナルさんがリリースしているドール衣装を着せたり、アゾン・インターナショナルさんの店舗で飾っていただいたりするなど交流がありました。いずれ何かでご一緒できれば……と思っていたところへ、今回ZOZOTOWNさんとコラボをすることになり、アゾン・インターナショナルさんが得意とする縫製型のプラモデル用衣装の制作をお願いできればと思いました。

――国内の可動フィギュアはおよそ1/12スケール前後で、それとの絡みを想定したドール商品や、カプセルトイも多くリリースされています。その意味ではアパレルだけではなく、家具メーカーや雑貨メーカーなどともさまざまなことができそうですね。
下吹越この子たちを現実の世界まで持っていくくらいのことをしたいですね(笑)。フィギュアの世界と現実の垣根を超えたいですし、ZOZOTOWNさんとのコラボはその可能性が見えました。できればあの子たちが企業CMをこなすところを見てみたいです。
――それでは最後に、今後の展望をお願いします。
下吹越我々は誰もが知る大きなタイトルを持っているわけではなく、ニッチな市場からコンテンツを生み出している特殊な会社です。しかし、だからこそ他の企業様が持たない武器やできる企画があると思います。その部分をコラボ先の企業さんとじっくりと話し、そこから新たなものが生み出せればと考えております。まずは気軽に弊社とお話ししてみませんか? それがたとえ異業種のかたであっても、遠かった業界が近づくきっかけにしたいと思いますので、ぜひ一度お声がけいただけますと嬉しいです。