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DMM.comは、2022年8月31日(水)から9月2日(金)にかけてオンライン展示会「アニメ・ゲームサミット 2022 Summer」を開催します。事前の登録を済ませておけば講演の聴講はすべて無料で、イベントでは6つの基調講演が予定されています。
本稿では、その中からスクウェア・エニックスによる基調講演「『資産性ミリオンアーサー』を通して得た知見と今後の展望について」のハイライトと登壇者へのインタビューをお届けします。
技術そのものではなく技術がもたらす遊びに注目させる
講演では、スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部 事業部長の畑圭輔氏と、同社同事業部プロデューサーの渡辺優氏が登壇しました。
今回のテーマになっている『資産性ミリオンアーサー』は、同社初のNFTプロジェクト。購入したデジタルシールに好きなフレームや背景を組み合わせて自分だけのシールを作り、それをホルダーに貼り付けるとOMJ(おまんじゅう)ポイントを獲得。ポイントが一定数貯まると色違いバージョンのシールを作れるなど、さらなる楽しみが提供されます。
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畑氏によれば、同社でNFTビジネス、およびブロックチェーン事業に関する取り組みが始まったのはおよそ4年前とのこと。最初はそれらに関する知見を深めるところからのスタートでした。そして2021年には「何らかのプロダクトを手がけて実証実験を」という流れになり、急ピッチで『資産性ミリオンアーサー』が制作されました。
その際のこだわりは「ブロックチェーン技術を使いつつ、同技術の専門用語をそのままユーザーの目に入れない」こと。前述したOMJ(おまんじゅう)ポイントは、一般的にはステーキングと呼ばれる仕組み(暗号資産/仮想通貨の保有による報酬)からヒントを得ているもので、サービス独自のアレンジを加えた仕組みとして提供。用語も親しみやすいものになっています。
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また、シールは専用のマーケットを通じてユーザー同士で売買できるようになっています。シールにはブロックチェーン技術を活用した保有情報が紐づけられているので、これらを利用し、サービス内イベントとして「ししゃもグミまつり」を実施しました。購入者の行動次第でイベント専用ポイントであるSMG(ししゃもグミ)付与の対象が変化する仕組みを導入し、SMGを一定数以上保持しているユーザー全員に限定シールを配布しました。こうしたブロックチェーン技術を活用した遊びも、ユーザーから好意的に受け入れられているとのことです。
シールのラインナップはイラストのみならず、オフィシャルで展開している4コママンガを1コマ単位で販売するというチャレンジにも着手。この手法は成功し、1コマだけでもクスリと笑えるコマや、購入者の意思表示としても使えそうなセリフやシチュエーションが描かれたコマなどが人気を博しました。
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2022年8月現在展開中の1stシーズンは「固有のNFT資産(デジタルシール)をいかに自分らしくカスタマイズできるか」に楽しみの軸を置いており、渡辺氏が主導する2ndシーズンでは新たな楽しみとしてゲームが実装されるとのこと。
渡辺氏はデジタルシールをただ販売するだけではなく、シールを用いてどのような体験や楽しみを提供できるかを考え、それをユーザーに届けたいと語りました。
基調講演の全容は「アニメ・ゲームサミット 2022 Summer」でご覧ください。最後に、登壇した両氏へのインタビューをお届けします。
【ミニインタビュー】デジタルシールでさまざまな楽しみ方ができる「シールエコノミー」の構築へ
――両名ともブロックチェーン・エンタテインメント事業部所属とのことですが、どのようなきっかけでできた部署なのでしょうか。
畑私は元々プラットフォーム関連の社内窓口や渉外業務などを担当する部署で働きつつ、ブロックチェーンタスクフォースチームのリーダーとしてリサーチも継続して行っていました。活動を続けていく中で自分事として「そろそろNFTやブロックチェーン技術を活用した実証実験をやりたい」気持ちになり、会社に『資産性ミリオンアーサー』の企画提案を行うと同時に、これまでの業務を担う独立した部署の立ち上げと部門長の話がありました。
どちらも重要なミッションということで両方にチャレンジし、それぞれ成果を出すことができたこともあり、2022年の2月から新部署であるブロックチェーン・エンタテインメント事業部の立ち上げにつながり、今に至ります。
――その実証実験に『ミリオンアーサー』を用いた理由は?
畑『ミリオンアーサー』はこれまで数多くのメディアに展開しているIPだったので、「新しいチャレンジをするときは『ミリオンアーサー』が斬り込み役になる」という印象が強くありました。また、私が『拡散性ミリオンアーサー』からテクニカルディレクターとして関わっていたので、思い入れが強かったというのもあります。
――『資産性ミリオンアーサー』のプロジェクトが始動して、社内での反応はいかがでしたか?
畑立ち上げは静かなものでしたので、リリースされてから初めて知ったという方も多かったです(笑)。興味を持ってくれた方たちからは「デジタルシールを買ってみようと思ったけど、(目当てのものが)もう売り切れてしまった」ともよく言われました。
ユーザー同士による二次流通でも購入はできるのですが、プライマリー(一次流通/運営による販売)を買いたがる人が多かったのが印象的でした。デジタルデータですから劣化などはもちろんないのですが、どこかで「中古感」のようなものも感じているのかもしれません。
――社内の声からも興味深い傾向がうかがえたのですね。それでは、現時点(本インタビューは2022年7月に実施)のユーザーの反応はいかがですか?
渡辺すごくポジティブな反応をいただいています。とはいえ、ユーザー数としてはまだ小さいサービスですので、ここからどんどん広げていきたいですね。
私たちはデジタルシールを軸にしたさまざまな楽しみ方、およびそれを提供することを「シールエコノミー」と呼んでいます。これをきちんと構築させて、ゆくゆくはゲームセンターのようにいろいろな楽しみ方ができるようにしていきたいなと。
――それでは、最後に今後の展望をお聞かせください。
畑「NFTとかブロックチェーンとかよく分からない。中途半端に手を出すとなんだか痛い目を見そう…」。消費者・ユーザーのみなさんの間では、まだまだそういった雰囲気が強いなとひしひし感じています。
基調講演でもお話しましたが、技術ドリブンで生まれたものをそのままお届けする場合は、受け入れていただきやすい設計が必要だと感じています。特にブロックチェーンという技術は難解な用語や仕組みが次々と生まれていくため、分かりやすく噛み砕いて、まずはシンプルに楽しんでいただける商品設計を心がけよう…と常に配慮しています。
渡辺テーブルトークRPG、ビデオゲーム、インターネット回線を用いたオンラインゲーム…と、ゲームは技術の発展とともに新しい形態が生まれてきました。その流れに連なるものとして、ブロックチェーン技術を使ったゲームはどのように楽しい体験ができるのかをお届けできるようがんばります。