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2022年も新型コロナウイルスでの影響でオンラインのみの開催となったゲーム中心の開発者向けカンファレンスCEDEC 2022。RTA in Japanにて『リングフィットアドベンチャー』にて視聴者を沸かせた「えぬわた氏」が解説する「RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて」のセッションレポをお届けします。
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このセッションに登壇したえぬわた氏は、ゲーム実況者ではありますがゲーム業界に属し、営業を務めていた経験を持つ人物で、現在もゲーム業界に身を置いています。今回CEDECに登壇した切っ掛けは、「RTAを用いたプロモーションは今までにいい活用方法がある」ことと、RTAの走者として「どちらの立場も理解できている自分だからこそ」という理由からです。
RTAイベントとゲーム実況の違いとは?
えぬわた氏は、あるゲームの四半期ごとの売り上げ本数の図をもって説明。10月ごろにリリースされたタイトルは300万本ほどを売り上げますが、当然のことながら発売日以降少しずつ売り上げが減衰していきます。しかし4月ごろを境に7.6万本と微増へ転じていました。それはユーザーによるRTAイベントが実施され、イベント終了後にも流行ったことから増加したと分析しており、世界的にみても大きく成功した事例であると説明します。RTAはどちらかといえばゲーム実況に近いものですが、厳密に言えば似て非なるものです。
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ユーザーのやり込みプレイを大まかに分けると「タイムアタック」と「トロフィーコンプリート」、そして「縛りプレイ」の3種類。トロフィー(実績)コンプリートは開発者からの挑戦状に近いものですが、タイムアタックや縛りプレイ(ノーダメ、最低歩数、低レベルクリア、目隠しプレイなど)は「もっとこのゲームを遊び尽くしたい」と思ったユーザーが勝手に行う遊び方に近いものです。
タイムアタックは、通常のクリア時間を突き詰めるタイムアタックと実時間プレイでロード時間も含めて計測するRTA(Real Time Attack、海外ではSpeedrun)の2種類があります。加えて、TAS(Tool-Assisted Speedrun)はツールを用いて最速の理論値を出す遊びです。特にRTAでは、タイムアタック機能が無いRPGなども含め、ありとあらゆるジャンルにユーザーが挑戦しています。
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ここで『たべごろ!スーパーモンキーボール 1&2リメイク』の公式RTAを例に、えぬわた氏による通常プレイとの違いを披露。通常プレイでは、ステージギミックに翻弄されながら慎重に攻略する姿を見せていますが、RTAではネガティブなステージギミックを逆手にとって攻略しています。
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ここでRTAの歴史を紹介。RTA自体は、90年代にもゲームメーカー主導で行う遊びがあり、ゲーム雑誌や攻略本でも最短・最速プレイという形で特集されていました。ゼロ年代ではpeercastやニコニコ生放送など映像配信サービスの登場で少しずつ浸透。2016年ごろから開催された「RTA in Japan」は、2019年頃には大きな注目を浴びるようになり、RedBullや日清食品がイベント協賛を行っていました。
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一方でRTA自体は常日頃から意識されているワードではなく、ゲームジャンルやゲーム実況、そしてVTuberなど流行のものと人気傾向を比べてみても小さくあります。しかしながら、「RTA in Japan」が開催されている時期であれば、最大瞬間風速的にVTuberと同レベルの人気を得ています。これはゲーム配信の同時視聴者数でも似た傾向を持っており、スターYouTuberやVTuberと比べてみると、国内では5番目に最高同時視聴者数を稼いでいます。
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RTA自体は、バグ/グリッチを使って攻略することや、練習でmodツールを活用したりなどメーカーとして公に認めにくい状況があります。かつてのゲーム実況という文化がグレーゾーンだった事に近く、公にプロモーション活用しづらいことが現状です。その中、少しずつ変化が起こっており、先の『スーパーモンキーボール』においてセガが公式生放送でRTAプレイヤーを起用したり、にじさんじによるRTA駅伝やニコニコ超会議での生披露などが行われてきました。また海外では、RTAの賞金付きのオンライン大会がメーカー側だけでなくユーザー企画としても実施されたそうですが、日本国内で賞金付きRTA大会は多くありません。
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先の『スーパーモンキーボール』の事例はメーカー企画であり、ゲーム内でタイマーが表示されることで最速クリアと相性の良いゲームであることでした。また公式RTA配信に適したタイトルは、最新作の関連作品や過去作の最新版(リメイクやリマスター、移植など)、タイムアタック前提のゲーム、そしてストーリーモードがあるクリア概念があるゲームなどが挙げられます。しかしながら、ストーリーに重きを置いたゲームにおいて会話などスキップされてしまうことや、ストーリーモード(クリア概念)がないゲーム、そしてオンラインゲームは相性が良くありません。様々な善し悪しがありますが、RTAゲームプレイが人気かつ魅力的なことが重要です。
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ユーザーからのゲームへの関心とその熱量を保持し続けるためには?
ここではえぬわた氏が、ユーザーの興味関心が瞬間的に高まることを「瞬間風速」と、ゲームに対しての興味関心を維持し続けることを「熱量の保温」として使用していることについて解説しました。「熱量の保温」では、SEO的に「RTA」というワードが強く、自身でYouTubeチャンネルを運営しているえぬわた氏も中身が面白いか以上にSEOが重要に感じるそう。なぜなら、RTAを題材とした2つの動画のタイトルに「RTA」という文字が入っているのとそうでないものでは、再生数の伸びが著しく違うからです。他にも、RTA走者はゲームのプレイスキルが高くコメント欄が湧きやすいことからサジェストされやすくなります。
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「瞬間風速」では、対戦ゲームでは瞬間的な熱量生み出しやすいものの、オンラインを含めた対戦がない非運営型のゲームでは難しさがあります。しかし、スーパープレイが尋常じゃなく盛り込まれたRTAでなら、記録更新か否かで盛り上げることが手段として成り立ちます。他にも、RTA走者は作品への愛の表現の一つとして「好きでそのゲームを走っている」ために、彼らが望んでいることとして「そのゲームを遊んでくれること」であることから、セールをやっているタイミングが重なっていると積極的に宣伝してくれます。
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RTA配信が持つ課題
RTA配信は、様々な課題を持っておりここでは「公式配信時」と「RTA文化(コミュニティ)」の2つに分けています。公式配信時では、ネタバレがあることとバグ/グリッチが公の目に触れる可能性があること。そしてRTA文化では古いゲームも人気なため売り上げに結びつきにくいこと、最後に練習配信自体が地味で盛り上がり難いことです。
特にネタバレについては、最新作のプロモーションと相性が悪く、発売前に全てを見せてしまう形となってしまうため、「最初のボス撃破まで」や「体験版の部分まで」と制限を設けること、他にはリメイクや移植など結末が知られているタイトルで試すことが望ましいです。また大きな課題としてバグ/グリッチが公になってしまう可能性があるために、バグやグリッチを使わないレギュレーション「No Major Glitches」カテゴリを用いることが推奨されます(しかし、軽微なバグ/グリッチを用いる可能性があるためにカテゴリの確認は必須)。また、なんでもありの「Any%」や先の「No Major Glitches」はユーザーが勝手に決めたルールなので、公式が特別ルールを設けるのも有効です。
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RTA文化の面では、発売から20年以上経過したタイトルで記録更新合戦が行われるなど古めのタイトルでも人気があります。しかし、移植系のゲームでも人気が高く公式RTA配信をやる価値があります。また練習配信は地味で接続数が少なく、RTA配信コミュニティがeスポーツのように盛り上がり難い面があるのです。
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最後にこれまでのセッションの内容まとめたスライドを映すと共に、えぬわた氏はフリーの人物でありTwiiterを含めて連絡がしやすいことを告知してセッションを終えました。また最後の質疑応答で気になったものを抜粋すると、「ゲームメーカーに望むRTAや、ゲーム作りはあるのか?」という質問については「どこでもセーブ機能」(巻き戻し機能も含む)と答え、どこでもセーブが出来るとRTAで難しいポイントを練習出来るようになるからと説明しました(他にもタイマーやリプレイ機能、ボス戦のみ、ステージのチャプター分けなど)。
「RTAがやりやすいタイトルは?」という質問には、Matt Makes Games開発の『Celeste』のような「即復帰のリセット性の高さ」と答えます。加えて、RTA向きにゲームを作ることが正しくなく、普通のプレイヤーが遊んでもストレス無く遊べることがRTA的にも同じく快適であると思っているとのこと。「ゲームメーカーがスポンサーになることは?」については、「嬉しくはあるもののスポンサーが何らかの制限を求めるのであればRTA的に拒否せざる終えない」ため、歩み寄り方が今後の課題であるという。「RTA配信を盛り上げるコツは?」では、「フィジカルスポーツのように実況/解説がないとわからないため必須である」と答えました。
「えぬわた氏が個人的にコラボしてみたい企業や人はいるか?」という質問には、「企業公式RTA配信を増やしていきたいと思っており、RTAコミュニティを盛り上げる裏方に回りたいと思っている」と答え、メーカーと公式配信ができればと思っているそうです。以上が質疑応答でした。
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以上がセッションの内容でした。セッションを聞いていたなかでRTAは、ユーザー主導のやり込み要素として発展してきたこともあり(90年代ではゲーム誌や攻略本でも最速クリア記事があった)、カテゴリ的にはどの位置に属しているのか、そしてどのような歴史を持つのかという説明がまだまだ必要な、近年知名度的に発展している分野であると思えます(RTA in Japanへのインタビューが掲載されたのも2020年なため)。
えぬわた氏が紹介したRTA動画も、なるべく誤解が無いような内容を取り上げていることから、RTAの説明の難しさを感じさせます。RTA in Japanにおける「Any%」レギュレーションでも、ゲーム内の要素のみを使ってバグ/グリッチが目立たない(使えない)走りも多く、「Any%」という形式だけでもタイトルによって見えてくるものが大きく違います。
これらの解釈のズレや誤解、先入観を少しずつ小さくし、公式/ユーザー問わず走者や観戦者を増やしていくことがRTAコミュニティとしての発展に繋がるのではなかいと思えるセッションでした。
「CEDEC 2022」他の講演レポートを読む