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モバイル広告市場にて、機械学習の活用で高い成果を上げ、急成長を遂げているスタートアップ・Moloco。
今回、GameBusiness.jpではMolocoの日本事業責任者を務める坂本達夫氏へインタビューを実施。機械学習を活用するMolocoの強みや、ビジョン・ミッション、日本市場の課題、そしてMolocoの展望について、伺いました。
――まず、Molocoについてご紹介いただければと思います。
坂本:実は創業自体もう10年近く前で、2013年です。元々Googleで機械学習エンジニアを努めていたIkkjin Ahnが、同じく韓国出身のSehyuk Parkと共同で設立しました。
そこからプロダクトの方向性を調整しながら、長きに渡り開発を重ねて、今に至ります。実は社員の半分近くがエンジニアやデータサイエンティストでして、地道に愚直に技術に投資をし続けた結果、数年前からパフォーマンスの高い状態でのスケールを実現し、会社として大きく成長。今はアメリカ、ヨーロッパ全てに展開していて、アジアだけでも北京、中国、韓国、シンガポールそれから東京という形で主要なマーケットにオフィスを展開しています。
最近もインドやベトナムに展開していまして、ポテンシャルがある市場には積極的に投資をしています。単一のサービス、単一のビジネスプロセスを単純に展開するではなく、各国・各地域に合わせた展開を続けているというのが、弊社の特徴になります。
――規模感的にはやはりアジア圏が一番大きいのでしょうか。
坂本:東京オフィスは2019年に設立し、そこから徐々にクライアントに使っていただけるようになりました。
現在は私が日本の事業責任者を務めています。日本のビジネス規模としては、他のオフィスと比べてまだまだ小さいものですが、他の地域よりも高い成長率を出しています。競合にあたる会社がレイオフで人を減らしている中、我々は逆に増やしているような状態で、2023年以降もビジネスの伸びとともに、人員を増やす計画があります。
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――坂本さんについてもお聞きしてもよろしいでしょうか。
坂本:もう10年以上このモバイル広告の業界に携わっています。この業界自体がまだ10年と少しの歴史しかないので、その10年間を過ごした意味では、長くこの業界にいるのではないかと思います。
経歴ですが、楽天から始まりGoogleに転職、2011年にGoogleのモバイルアプリ広告の日本事業を担当するようになりました。そこからスマホ広告の黎明期をGoogleで過ごし、その後は別会社にて3年ほど、アプリの動画広告周りに携わり、最後の1年はライオンスタジオのハイパーカジュアルゲームパブリッシング部門の立ち上げに日本から参画しました。ハイパーカジュアルを日本にどう紹介し、業界を大きくするか、最初の礎となる部分に携わっています。長くモバイル広告の業界に身を置いてはいるのですが、その中でも海外で勃興してきた新しいコンセプトを日本に持ってきて広めるというのを続けているのかなと、自分自身では感じます。
Molocoについても同様で、例えばアプリのDSPというものは、海外だと普通に使われていますが、日本だとまだ普及しているとはいえません。機械学習や、透明性の高いネットワークの方がいい、というのも日本ではまだ当たり前になっておらず、逆に言うと、不透明なものがまだまだ多いということです。
それを知らず知らず、もしくは知りながらもマーケターが使ってしまうという現状があります。それを少しでもいいように変えられればと、自分としては考えています。その結果として、Molocoのビジネスも伸びていけばいいなと。
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――ありがとうございます。ではMolocoのビジョンや昨今の状況についても伺えればと思います。
坂本:我々の一番大きい収入源としては、広告ビジネスとなりますが、「広告をやろう」と生まれた会社というわけでは必ずしもなく、我々は自分たちの会社を「機械学習」の会社だと定義しています。
機械学習技術はMolocoだけではなく、様々な企業が使っていますが、特に広告やマーケティングの文脈については、GoogleやFacebookといった大企業が投資を行っており、例えば検索結果やSNSのFacebookのタイムラインなど、彼らの領域にてマーケティングを行う際には、その機械学習の恩恵を受けることができるというような状況になっています。
ですが、実際のユーザーはGoogleやFacebook以外のアプリ・サイトで時間を消費していることも多いです。では、その大企業以外の領域でマーケティングを行う際も、高度な機械学習の恩恵を得られるかというと、それは難しい、という状況が長く続いています。
我々はその状況に対し、どの領域であっても、世界で最高クラスの機械学習技術から得られる恩恵を、全ての企業に提供していこう、「デジタルマーケティングの民主化」をしていこう、というのをビジョンとしています。
加えて、昨今プライバシーの問題でサードパーティーデータが使いづらくなっていますが、我々はクライアントが持つファーストパーティーデータと機械学習を組み合わせて、マーケティングの効果を高め、データの価値を高めることができます。様々なクライアントが自分たちの持っているデータをどう使おうか模索していますが、我々はそこに機械学習という武器を提供できるのです。
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――なるほど。かなり成果も出ていると伺っています。