まず先行調査として、立命館慶祥中学校(北海道)の1年生を対象に、『得点力学習DS・中学理科』を用いて、ソフトの使用頻度と成績の相関関係を調査。配布したソフトを任意で使ってもらい、その後のテストを受験したところ、冬休み明けテストの成績には弱い正の相関が見られ、夏冬テストの成績差には使用頻度の影響が見られたそうです。
立命館大学 映像学部ではサイトウ・アキヒロ教授の提唱するゲームニクス(ゲームで人を夢中にさせるユーザーインターフェイスのメカニズムを体系化したもの)に基づき、テレビのリモコンやタッチパネルの操作画面の設計などの実用領域へと活用する研究を進めています。ベネッセとの共同研究では、これを応用して学習への動機づけや反復学習による学力の定着に活かそうとしています。
立命館大学 映像学部 副学部長 細井浩一教授は次のようにコメントしています。
デジタルゲームは日本が世界に誇る新しい表現文化の代表格です。映画やテレビと比べると30年ほどの浅い歴史であり、子どもの遊びというイメージがまだ抜け切れていませんが、最近では単に楽しくておもしろいというだけでなく、大人も納得したり感動したりする深みのあるソフトが増えてきました。
1980年代以降、特に低年齢層を中心にして生じたデジタルゲームの大流行が私たちにもたらした変化は、大きく2つあると考えられます。一つは、メディアから一方向的に情報を受け取るだけでなく、双方向(インタラクティブ)に働きかけて情報を探索していくという行動や態度であり、もう一つはそのために必要になるメディアや情報機器とのつきあい方(ヒューマンインタフェース)の革新です。
先行調査として実施した今回のフィールド調査では、限定された条件ではありますが、この2つの変化とも関連して興味深い結果が得られたと思います。速報として得られた2つの分析結果については、夏季学期から冬季学期までの通常の学習による効果との関係をより精査しなければなりませんが、とりわけ「今回の調査ではソフトの使用頻度が高いほど成績が向上したといえる」という点については、携帯型ゲーム機であるニンテンドーDS®のハード、ソフトの特性(可搬性や操作性、ゲーム的デザインの学習単元など)が生徒の学習に対してなんらかのプラス効果をもたらした可能性を示唆するものであり、今後の研究において重要な出発点となる結果だと考えています。
立命館大学 映像学部では、インタラクティブメディアとテクノロジーを総合するソフトウェアとしてのゲームを重要な研究教育の対象としていますが、その中でもサイトウ教授が取り組んでいるゲームニクスは、ゲーム分野によって開発、蓄積された優れたヒューマンインタフェースを体系化して他分野に応用することで、情報に対して双方向的に働きかける仕組みや効率を改善しようとする画期的な技術です。
今後の共同研究においては、このゲームニクスを中核として、立命館大学 映像学部におけるインタラクティブ映像研究の成果を応用していくことで、いままでにない新しい教育・学習の環境デザインとコンテンツの開発を目指していきたいと思います。