講師は、崑崙日本株式会社 副社長の北阪幹生氏、PUBG株式会社 日本室長の井上洋一郎氏、King Japan代表取締役の枝廣 憲氏の3名。最初の議題は「日本市場のマーケティングで注力していること」が挙げられました。

これに対し枝廣氏は「メディアや他タイトルなど、競合する環境の違いを理解すること」と回答。日本のスマートフォンゲームのトップチャートには日本独自のタイトルが多数顔を並べているので、海外タイトルはいかにしてそれらと差別化するか、そして、海外での展開時と比べると"自分たちが提供するのがどのようなゲームなのか、ユーザーに理解してもらうためのワンステップ"が必要になると説きました。
同社の『Candy Crush』では、テレビCMを展開する際にジャニーズの岡田准一さんを起用。これにより、(とっつきの悪さという意味での)海外っぽさが薄れ、大勢のユーザーに親しみを持ってもらえたそうです。
「『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(以下『PUBG』)』の宣伝費は、実は1年を通してそこまで使っていない」と口火を切ったのはPUBG株式会社の井上氏。同作のようなバトルロイヤルモノは「対戦を始めてすぐにやられてしまうことはない」、「ちょっとした宝探しの気分も味わえたりと、1人ひとりに異なるプレイ体験をもたらす」という特徴があるため、インフルエンサーたちに動画を配信してもらい、"人のプレイ風景を見ているだけでも楽しい"という特性を存分に生かしたそうです。

日本での展開時もこれを強みとしていますが、国内では中国のNetEase Gamesが配信・運営するバトルロイヤルゲーム『荒野行動』も人気を博しているため、こちらも負けじとがんばろう、というのが2018年から2019年にかけてのミッションの1つとなっているそうです。
「日本と中国を比べると、実はそれほど大きな違いはない」と語るのは日本でもっとも遊ばれている中国産MMORPG『Goddess ~闇夜の奇跡~』を配信している崑崙日本株式会社の北阪氏。それでも、広告展開などにおいてメーカーが打ち出す内容とそれを見るユーザーとの間でミスマッチが起きる危険性は常にあるので、それだけは避けるためマーケティング展開する国に応じてクリエイティブを最適化することが大切であるとしました。
話題が「日本とそれぞれの本国で見られる市場のギャップ」におよぶと、割り切ったスタンスを披露したのが枝廣氏。「みなさん、韓国、中国、ドイツで現在1位のタイトルは? と聞かれても、パッと思い浮かばないのではと思います。どういうゲームが受け入れられているか、どういうマーケティングがされているかはケース・バイ・ケース。なので、違いを気にするよりは(それぞれの市場に特化さえしていれば)完全に分断されていていいと思いでやってきました」。

ユーザーの数で一番大きなギャップを感じるとしたのは北坂氏。日本のスマートフォンユーザーは約4000万人と見込まれていますが、中国のそれは約6億人。それだけに中国では「(ユーザーを)取れるときに取れるだけ取れ」という考えが根強いのだそう。そういう"焼き畑農業"的な施策に耐えられるほどユーザーがいるからだそうです。「中国では、1日で数十万のユーザーを得られることもめずらしくありません。それに慣れてしまうと、日本での数字はどうしてこんなに少ないの、と感覚がマヒしてしまいそうになります」。井上氏も、同じくユーザー数の違いを指摘。「『PUBG』の日本市場におけるDAUは全体の数パーセント程度。それだけ、中国での数字が圧倒的なんです」と語りました。
「外資企業ならではの苦労」という議題では、井上氏が「スピード感」と回答。『PUBG MOBILE』は本社での決定からサービス開始までがわずか数カ月であったという、中国の大手企業テンセントとの共同開発ならではのエピソードが明かされました。
北阪氏が挙げたのは「人的リソースの確保」。「外資企業で働きたいと思ってくれて、かつゲームのディレクションをしたりチームをまとめられるレベルの力を持つ人はなかなか見つかりません」と語りました。同様の問題に対し井上氏は「自社タイトルのプレイヤーをアルバイトとして採用し、育て上げる」施策に取り組んでいると補足。アルバイトから社員に昇格する従業員の面接を何度も行ってきたため「この人は信頼できるかという目利きができる自信がある」と語りました。

最後の議題は現状の課題と今後の展望。北阪氏は課題に関して「『Goddess』をリリースした時期は、日本のユーザーが海外ゲームに慣れ始めたころで、かつ供給過多にはなっていないという絶好のタイミングでした。今は『黒い砂漠』のように他社からも魅力的なタイトルがリリースされているので、いかに競争を勝ち抜いていくか」と語り「今後も変わらずスマホゲームに注力していきます。今年は自社タイトルのローカライズ、中国の既存タイトルのパブリッシングをそれぞれ予定しているので、しっかり取り組んでいきたい」としました。
枝廣氏は「スマホゲームは、小規模な開発会社はもう戦えない市場になっている。とはいえ、大企業が多額の資金を投じたゲームだけというのも固定化を招いてしまいかねない。ここで斬新でおもしろいゲームを提示できたら、一気に市場を席巻できるかもしれない」と業界への課題と展望を語り、自社の展望に関しては「弊社のパブリッシングで日本のゲームをグローバルに展開できたら。とはいえ、各国で展開するノウハウは一朝一夕では身に着かないので、座組はよく考えたい」と語りました。
井上氏は「口コミやコミュニティなど、ゲームそのものの魅力以外でもユーザーを楽しませられるところが今後残っていくのではないかと思っているので、今年はそういうところを注視していきたい」とし、「今年も引き続き『PUBG』をいかに広げて、定着させるかが勝負。コミュニティをより強固なものにするためにe-Sportsにも積極的に取り組んでいきたい」と意気込みを見せました。