午前の部ではアカマイのソリューションについて詳しい解説があり、巷を賑わせるゲーム業界への脅威にどう対抗するかが語られましたが、午後の部では実際にアカマイを活用している企業も登壇。終息見えぬコロナ禍の影響で、全員が会社に集まって働くというスタイルは日本のみならず海外でもかなり減ってきています。当初想定されていなかった新たな働き方の課題としてやはりセキュリティの問題も浮上してきます。
安全かつ快適に開発者がゲームを作り続けられる環境とはどのようなものなのでしょうか?最新事例をお届けします。
今ゲーム業界は危機にさらされている…その現状と対策が語られた午前の部もチェック!
ミクシィグループにおけるゼロトラスト型リモートアクセス導入事例
ミクシィ開発本部CTO室セキュリティ技術グループマネージャーの亀山直生氏が登壇し、同社が社内ネットワークに依存しないゼロトラスト型アクセスモデルを導入するにあたってどのようなところを重視したか、また、アカマイが提供するソリューションのひとつ「EAA(Enterprise Application Access)」を導入しての実感などが語られました。亀山氏は最初に、同セッションにおけるゼロトラスト型アクセスモデルとは何かという点を解説。「ローカルネットワークだから信用できるとは限らない。などの考えのもと色々疑いながら、認証や認可を行い情報へのアクセスをコントロールすることで、安全性を保つためのネットワークモデル」と定義しました。
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次に、ゼロトラストを構築するうえでもっとも大切なことはポリシーエンフォースメント(エンフォーサ)の実装であるとし、エンフォーサが果たす役割は「ポリシーエンジンとやり取りをして、リソースへアクセスするリクエストを認可していいかを判断する」ことと「認可/拒否の判断に基づき、アクセスを実際に許可したりブロックしたりする仕組みを提供する」ことだとしています。
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亀山氏はエンフォーサの重要性をさらに強調し「ベンダーの検討を始めると動的ポリシーやAI、機械学習、脅威情報」など聞こえのいい言葉がいろいろと耳に入ってくるが、それらよりも最初に大切なものがエンフォーサです。まずはここをしっかり実装しないと、既存の境界防御よりも脆弱になってしまいかねません」と続けます。
エンフォーサが実装されていない場合には「すべてのリクエストをチェックできない可能性があり、そこから機密性の高いリソースに到達されてしまう恐れがある」とし、「大半は認証エラーなどで弾けるとは思いますが、不正なリクエストが届いてしまうこと自体が問題なのです。エンフォーサがなければ、アプリの脆弱性をフォローしきれません」と語りました。さらに、そうしたアクセスは「"評価しつつ"防ぐことが重要で、それを満たすにはプロキシ型がよい」としています。
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亀山氏はこうした考えから、アカマイが提供するソリューション「EAA」のことを知る前から、社内で似たような環境を構築していたのだそうです。エンフォーサはプロキシ、ポリシーの管理や拡張はプロキシもしくはIDPで実装し、バックエンドのアプリはプロキシを経由しないとアクセスできないようにしました。
その後も他社が提供するソリューション導入の検討を進め、汎用性が高く評価もいい「EAA」を導入。VPNと同等のセキュリティを保ちつつ、VPNクライアント起動の手間がない分、利便性は向上できたと手応えを語ります。
最後に亀山氏は、「ゼロトラストを構築する際は、まず自分たちにとって何が一番大切かを再確認しましょう。我々にとってそれは自動化やAIなどの導入ではありませんでした。もちろん最終的な理想型は抱いておくべきですが、それらを導入するのは、ゼロトラストの地盤をしっかり固めた後で、段階的な強化や効率化をするために行うべきです」とまとめました。
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フルリモートワーク時代でもゲーム開発&運営を加速~"エッジ"が実現するセキュリティAnywhere~
アカマイのシニア・プロダクトマーケティングマネージャー 金子春信氏は、開発/運営チームがさまざまな場所に分散するのが当たり前のニューノーマルな世界における、クラウド中心型セキュリティのユースケースについて紹介しました。金子氏はまず、IBMのビジネス・シンクタンクであるIBM Institute for Business Value(IBV)の調査を参照しました。2020年5月1日にアメリカの成人社会人2万5000人を対象に意識調査をしたところ、54%が「新型コロナウイルス終息後もテレワークをメインにしたい」と回答し、75%が「たまにはリモートワークをしたい」と回答したと紹介。コロナ禍によるテレワーク時代の到来をデータから明らかにしました。
そして、ゲーム業界にテレワークを導入する際に考慮すべきことは、「動画や音声などの大容量データの転送をいかに実現するか」、「自社開発データの機密をいかに保護するか」、「ゲーム開発における協業をいかに促進するか」の3点が重要だと指摘。
そこでアプローチとして必要になるのが、世界的なリサーチ会社・ガートナーが定義した「SASE(Secure Access Service Edge)」の概念です。新型コロナウイルス対策をきっかけに、ワークスタイルが世界的にテレワークへ舵を切るとともに、DX(Digital transformation)促進のためにクラウドも活用されます。すると、「企業内よりも企業外からのアクセスの方が多くなる」、「SaaS(Software as a Service)のワークロードが自社インフラを上回る」、「機密性の高いデータの保存場所がオンプレよりクラウドの方が大きくなる」といった企業資源の外部への移行が進みます。そうした"内外逆転"時代に備えてセキュリティをインターネット上に集中させ、セキュリティポリシーの一元管理を可能とするのがSASEであるとしました。
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こうしたSASEを視野に入れたリモートワーク環境を構築するうえで最初に着手しやすい領域が、アカマイの提供するソリューションであるID認識型プロキシ「EAA(Enterprise Application Access)」と、セキュアWebゲートウェイ「ETP(Enterprise Threat Protector)」であるとし、導入のメリットなどが語られました。
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「EAA」は、さまざまなところからSaaS、IaaSやオンプレにアクセスしようとするユーザーを一元管理。個々のアプリへの認証認可などのアクセス制御に加えて、EDRによる不正アクセス検知を元に自動でアクセス遮断も行います。今まで、ネットワークレベルで広く到達可能になっていたクライアントからアプリケーションに対する接続を、IDを元にした厳格な認可制御し、企業の機密データへの侵入を防ぐという考えです。
「ETP」は、ユーザーがどこにいても、クラウド上にあるキャッシュDNSサーバーとウェブプロキシサーバーを介してアクセスさせることで、危険なサイトとの通信、つまりマルウェア感染やフィッシングといった脅威からクライアント端末を保護します。また、不適切なサイトへのアクセスの制御なども提供することで、今後増加するテレワーカーたちの通信効率を落とさず、保護が可能になるとしました。
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金子氏は「テレワークが一般化するニューノーマル時代は、インターネット上にある社内システムに安全にアクセスできるネットワークとセキュリティの構築が必要で、そのためにSASEの概念を取り入れることが有効です。その際はぜひ、アカマイの提供するソリューション「EAA」と「ETP」を検討してみてください」と語り、セッションをまとめました。
グローバルゲーム市場 収益&プレイヤー規模: 2020-2023
ゲーム、e-Sports、モバイルを専門とするオランダの市場調査会社Newzooのマーケットアナリスト 葛原知史氏による本セッションでは、同社のゲーム市場規模予測データを元に、2023年に向けてゲーム市場はどのような変化を遂げるか、新型コロナウイルスの世界的流行はゲーム市場収益にどのような影響を及ぼすかなど興味深い内容が解説されたので、セッションのうち一部を抜粋しご紹介していきます。※当記事では、セッションでご紹介した市場規模データを、2020年11月時点の最新予測値と入れ替えてご紹介しています。
まず、2020年における世界のゲームプレイヤー人口は、前年比率+4.9%で27億人に達すると予測。日本・中国・韓国を含むアジア・太平洋地域のみで14億万人超と、世界市場の過半数を占めるとしました。プレイヤー人口は今後も増加を続け、2023年には30億人に達する見込みです。
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アジア太平洋地域のゲームプレイヤーに焦点を当てると、同地域はモバイルゲームプレイヤーが圧倒的に多く、それゆえに新作ゲームの開発もモバイルゲームに重点が置かれ、そのサイクルがモバイルゲームの一強状態をより先鋭化させているとしました。
2020年のグローバルゲーム市場の収益規模に関しては、前年比+19.6%で1,749億ドル規模に達すると予測。この成長は、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンや外出自粛などによるエンゲージメントの増加や、同年11月にリリースされた新世代ゲーム機、PlayStation 5とXbox Series X|Sへの期待によるものです。
市場規模を押し上げるのは同年時点で全体の49%を占めるモバイルゲームで、2023年にはこれが過半数を超えて52%に到達。モバイルゲームによる収益の大幅な増加は、アジア・太平洋、中東、アフリカ、中南米によりもたらされると予測しました。家庭用ゲーム市場も2018年から23年にかけて9.4%程度の成長が期待され、2023年には約632億ドル規模が見込まれます。
これらの傾向はアジア・太平洋地域でも同様であるものの、一番成長が見込まれるのはモバイルゲームであるとのこと。
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次に、新型コロナウイルスの感染拡大がゲーム市場に及ぼす影響について語られました。世界各地でロックダウンや外出自粛が宣言・要請されると多くの人々がゲームプレイや関連動画の視聴により多くの時間を割くようになり、NewzooのPCプレイヤーシェアデータで最大の成長幅を見せたジャンルはシューターとバトルロイヤルとのことです。
TwitchとYouTubeでのゲーム関連動画の視聴時間も大幅に増加。『iRacing』をはじめとするスポーツシミューレションゲームの動画もよく視聴されており、伝統的なフィジカルスポーツの視聴に取って代わる傾向が加速しています。その一方で、ビジネススタイルの急激な変化が世界中で新作ゲームソフトの開発に多大な影響を与えており、当初予測されていた新世代ゲーム機発売による成長の一部は2021年へとシフトされています。
最後に、2020年のゲーム市場に大きな影響をもたらすもう一つのトピックである新型ゲーム機に関する見通しが紹介されました。葛原氏は、ソニーとマイクロソフトを比べた場合、ゲーム機の性能のみならず、それらによって追求するコンテンツ戦略に大きな違いがあると指摘します。
マイクロソフトはクラウドサービスを「Xbox Game Pass Ultimate」に統合するなど、Xboxの重要性をあえて抑えてPCやモバイルからもゲームを遊べるようにすることでアクセシビリティの向上に注力。「最新ゲームを遊ぶには、最新ゲーム機を買う必要がある」ソニー、任天堂とは一線を画する戦略であるとしました。
次に、家庭用ゲーム機の世代交代にともなう消費者の支出傾向を、課金プレイヤー1人あたりの平均支出の推移を踏まえて紹介しました。家庭用ゲーム市場ではユーザーの支出傾向に周期性が見られ、新型ゲーム機のローンチから3~4年間は上昇傾向で、さらにその後継となるゲーム機のローンチ2年前あたりから緩やかに減少を始めるサイクルで構成されているとのことです。
また、家庭用ゲーム機のオーナーは、一緒にプレイする友人やネットを介したソーシャルコミュニティの影響、ゲームのバックログ、新型ゲーム機専用の周辺機器の存在などから、メイン利用するハードを簡単にはシフトしない傾向があると説明。主要32か国、6万人以上を対象に実施された年次消費者調査に基づく、新世代機へのアップグレード意向の推定結果を紹介しました。ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長兼CEOのジム・ライアン氏による「PS5ローンチ後、12か月以内にPS5を購入するユーザーは1500万から2000万人程度」という予測に基づくならば、アーリーアダプターは現PS4ユーザーの1/4未満に留まると述べました。
一方、日本で2020年4月に「Xbox Game Pass」を開始したマイクロソフトは、Xbox Liveにおける日本のマンスリーアクティブユーザー数が同年夏時点で前年比+82%を記録。前述のアップグレード意向の推定結果では依然PS5が有利でありつつも、市場の趨勢は引き続き注視していくとしました。
当記事では割愛しておりますが、セッション時にはアジア太平洋地域・日本の市場規模データや、新型コロナウイルスによる市場収益予測への影響値、消費者調査結果など、Newzoo独自の調査データに基づく説明がなされました。
インタビュー:ニューノーマルに向けたゲーム企業の働き方
サミットの最後を飾ったのはインタビュー企画です。アカマイの金子春信氏がCygames情報システム本部 副本部長の津留大介氏にインタビューする形式で、コロナ禍がゲーム企業にどのような影響を与え、これからどう変わっていくべきかが語られました。
津留氏によれば、同社は2020年4月上旬の緊急事態宣言発令と同時期に在宅勤務へと移行。当初は2~3カ月間を予定していましたが、終了延長が続き今日にいたるとのこと。ほとんどの社員が在宅勤務に移行しているそうです。
在宅勤務に移行したことで、元より社内で運用していたSlackの使用率が大きく上昇。日々のやり取りの大部分がチャットになった影響で、チャットによるコミュニケーション力が重要になってきました。個々人のチャット能力の差が明確に現れるようになってしまい、「人とやり取りするときは、あいづちなどのリアクションを取る」など、社内で意見を持ち寄ってSlackを活用する精度を日々上げ続けているとのことです。
在宅勤務のメリットとデメリットを尋ねられると、津留氏は、メリットは「出勤、帰宅時間がなくなることによるストレスの軽減」、「1人で作業を進められるタイプの業務の生産性向上」であると言及。デメリットは「運動不足が加速する」、「社員間の調整を担当するリーダーやマネージャーはコミュニケーションが取りづらいという課題が見えてきた」と述べました。
セキュリティ面のチャレンジについては、IDとパスワードだけでアクセスできるVPNは脆弱なので、在宅勤務を狙った攻撃を防ぐために二要素認証などでよりセキュアな環境を構築すること、ログ管理ツールで在宅勤務導入以前と今でセキュリティーツールの検知率が変わっていないかを逐一監視し、変化が見られるなら何が起きているかを把握することが重要であるとしました。
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最後に津留氏は「テレワークで十分に仕事が出来ているという企業もあるかもしれませんが、始まって間もない企業がほとんどで、完成形にはほど遠いと思いますし、課題もたくさん出てくるでしょう。その把握と解決のために、アンテナを常時張り巡らせておく必要があります」としつつ、「今後どのような働き方が主流になっていくかはまだわかりません。もしかしたら、出社とテレワークの良いとこ取りをしたハイブリッド時代になるかもしれません。いずれにせよアナログな仕組みをデジタルなものに変えていくことは必要ですので、情報システム部門は在宅勤務を前提とした業務プロセスの構築を視野に入れていくのが良いのではないでしょうか」と語り、セッションをまとめました。
前半とは少しベクトルを変えながらも、新しい働き方と切っては切れないセキュリティのノウハウや知見が多く披露された午後の部のセッション。ミクシィやCygamesといった大手パブリッシャーがどのようにこの状況を捉え、新たなゲーム開発の環境を整えているかは非常に学びの多いものとなりました。
Cygamesの津留氏が指摘するように、今後これまでと全く同じワークスタイルに戻る可能性は決して高くはありません。コロナ禍が一旦の収束をみたとしても、企業内外から機密情報にアクセスが発生することは想像に難くないはずです。そうした状況になったとき、どのようにコストを抑えて情報を守るのか、そのソリューションとしてアカマイのサービスは数ある選択肢の中でも有力なものになるのではないでしょうか。
アカマイ 公式サイト
今ゲーム業界は危機にさらされている…その現状と対策が語られた午前の部もチェック!
※ UPDATE(2020/12/25 11:13):津留氏のお名前に一部誤記がありました。お詫びし訂正いたします。