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世界に浸透しているソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のコンソールであるPS4とPS5。これらのユーザーは、実際にはどのように利用しており、全体としてどんな傾向があるのでしょうか。
今回CEDEC 2022で行われた講演「世界の PlayStation ユーザー行動履歴の検証」では、SIEの東京グローバルデベロッパーテクノロジー部の秋山賢成氏が登壇し、様々なユーザー行動履歴やゲームプレイの履歴を検証した結果、何がわかるかが語られました。
主に膨大なグローバルのデータの中で、地域ごとに行動に差があるのか、どんな特徴があるかが語られており、グローバル向けにタイトル制作を検討している方の参考になる内容となっています。
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一度でもPS4・PS5を起動したユーザーの比率とは
まず秋山氏は近年のPSシリーズを振り返ります。PS4は2013年に発売されてから約9年近くが経ち、その間にスペックを増強したバージョンのPS4 Proや、Playstation VR(以下、PS VR)などが2016年に発売されてきました。2020年にはPS5がリリースされ、すでに2年が経とうとしています。
秋山氏はPS4とPS5ユーザーの行動データや、両コンソールでの行動の差などを紹介していきます。まずはじめに挙げたデータは「Active Deviceの割合」でした。これは一度でも電源を入れ、ゲームをプレイしたことのあるコンソール本体を意味しています。
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秋山氏はその割合について、PS4とPS5を合算したグラフを紹介。2021年4月から2022年6月までのデータをスライドに挙げました。
ここではアメリカやEU、そしてアジア、そして日本のグラフがまとまっています。地域によってあまり差はありません。また秋山氏は「グラフをPS5単体に限れば、全地域で着実に割合が伸びている状態」だと説明しています。PS5ユーザーの増加やPS4からPS5に移行しているユーザーが着実に増えているとのことです。秋山氏はこのActive Deviceの割合を元に、以降のデータを解説していきます。
F2Pやオンラインマルチプレイを利用するユーザーの比率
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続いて「F2Pやオンラインマルチプレイヤーの割合」を紹介。
F2Pのゲームタイトルは年々増えており、『フォートナイト』など人気のコンテンツが出てきています。そんなF2Pのプレイ状況の世界的なデータはというと、まずPS4では一言で「日本のユーザーがやや高い割合でプレイしている」傾向があるとのこと。アメリカやEUが続く形ですが、意外にもアジアのユーザーは非常に少なく、秋山氏は「F2P以外をプレイする傾向がある」と語りました。
一方、PS5ではより顕著に日本のユーザーはF2Pタイトルをプレイしている傾向が出ています。他にアメリカやEU、アジアの傾向では先のPS4のグラフよりも比率が落ちていることがわかります。
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PS4とPS5のプラットフォーム間での比較も紹介。PS4の方がF2Pの割合が多い傾向がわかりました。ただ秋山氏は「この情報はPS4ではF2Pのゲームが最も人気ということを定義づけるものではありません」と忠告します。というのも、F2Pの他にもさまざまな遊び方があるためだと説明しています。
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続いてオンラインマルチプレイヤーの割合について解説。これは圧倒的にアメリカの比率が高く、EUが続く形です。日本が引き離されるかたちで続き、アジアは比率が低いことがわかります。
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PS5においては地域の差はより顕著に現れます。アメリカとEUはほぼ同じ比率で高く、日本とアジアも同じ比率で低い傾向が出ていました。
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PS4とPS5のプラットフォーム間での比較では、なんとPS5のほうがマルチプレイの比率が高いデータがでています。先のグラフでアメリカとEUでマルチプレイが遊ばれている傾向が、どうやらグラフに反映されているとのことです。
平均プレイ時間の推移
秋山氏はコンソールの平均プレイ時間がどう変わっていったかのデータを紹介。まず秋山氏は、一本のゲームを遊ぶユーザーもいれば、いろいろなゲームを遊ぶユーザーもいたり、一週間のうちに遊ぶゲームを変えていくユーザーなどさまざまなケースがあるように、ゲームの多様化によってプレイスタイルも多様化している状況であると説明します。
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そこで世界のプレイヤーは実際にどれくらいプレイしているのでしょうか。秋山氏が挙げたグラフでは、まず日本人の平均プレイ時間が多いことがわかります。またPS4とPS5のプラットフォーム間を比較しても、世界全体でPS5の平均プレイ時間のほうが長いとのことです。
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続いてF2Pの平均プレイ時間を紹介。こちらも日本が突出して高い傾向がありました。秋山氏はこの結果を「日本のユーザーはプレイしてすぐやめるのではなく、長い時間遊び続ける傾向があるのがここからわかります」と評しています。
また、こちらのグラフはプレイ時間全体の中のF2Pの割合でもあるため、見方によってはこの割合が低い地域は他のジャンルのゲームを遊んでいるということにもなるとのことです。オンラインマルチプレイのプレイ時間の比率では、先ほどと逆転してアメリカとEUのユーザーが高い傾向が出ています。
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オンラインマルチプレイでの平均プレイ時間はアメリカとEUのユーザーが高い傾向がみられています。
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平均プレイ時間の内訳を各地域ごとに分けたグラフでは、より各地域の傾向がわかるものになっています。内訳はF2P、オンラインマルチプレイ、そしてシングルプレイをはじめ前2者に該当しないケースをその他と別れています。
最近の2022年6月のデータでは、日本の平均プレイ時間はF2Pの割合が高く、アジアではその他となるゲームプレイの割合が高いことがわかりました。
コンテンツのディスクでの購入やダウンロードでの購入について
PS4やPS5では、ゲームコンテンツの購入においてフィジカルメディアであるディスク購入か、デジタルでのダウンロード購入といった選択肢があります。最近ではダウンロード配信のみのソフトも増えている中、実際にどれくらいの比率でこれらは利用されているのでしょうか。
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秋山氏は直近1年で、PS4とPS5で販売されているゲーム本編をディスクかダウンロードのどちらで購入し、起動したかを調査。
そこでわかったことは、まず日本ではディスクで購入する割合が高いことでした。全地域でダウンロード購入の比率は高いのですが、アメリカではディスク購入の割合が低く、ダウンロード購入が全地域で最も高いことも興味深い情報となっています。
ダウンロード購入が世界的に堅調である背景には、プレオーダー機能や事前ダウンロード機能が実装されることにより、ソフトの購入から起動までの手間をなくしている大きいとのことです。
ただ秋山氏はこのグラフから「ダウンロードと比較して、ディスク購入の比率が低いことではありません」と忠告します。世界的にダウンロード販売が優勢とはいえ、まだディスク購入を主にしているユーザーもたくさんいるという事実として見てほしいのだと語りました。
ユーザーの課金状況
続いてユーザーの課金や購入状況について秋山氏は紹介。ここではPS Store全体でどれくらいの課金率があるかをグラフで解説しています。
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地域別の課金率では、アメリカとEU、日本とであまり大きな差はありません。アメリカとEUとで課金率が跳ね上がる時期が似ているのは、「同時期に人気コンテンツのリリースや購入のトレンドが似ていることが理由と考えられます」と秋山氏は考察しました。またPS4とPS5のプラットフォーム間での比較では、PS5のほうが高い課金率となっています。
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地域ごとのActive Device1台あたりの平均課金額では、日本が高めの傾向が観られます。プラットフォーム間での比較では同じくPS5のほうが課金額が高い傾向が観られました。
またActive Deviceで対象月に課金したユーザーの平均課金額のグラフも紹介。こちらも日本の課金額が高い傾向が見られます。秋山氏は「日本のPS Store上で課金や購入を一度でも行われた方は、たくさんのコンテンツを購入している傾向があります」と考えていました。こちらもプラットフォーム間での比較ではPS5が圧倒的に課金率が高いです。
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追加コンテンツの課金率では、アメリカと日本が同程度に高いです。ディスク購入するケースの多い日本であっても、ダウンロード型の追加コンテンツを購入すること自体は抵抗がないという傾向が見られました。
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Active Device1台ごとの追加コンテンツ平均課金額では、日本が特に高い傾向が現れました。秋山氏は「左のグラフはPS4とPS5のデータを合算したものであり、日本ではPS4の課金額も他の地域と比べて高い傾向があります」とまとめました。
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課金額全体での追加コンテンツの割合では、日本がかなり高い傾向が見られました。プラットフォーム間での比較では、なんとPS4がPS5を上回っており、先述した日本でのPS4による追加コンテンツ購入傾向が現れています。
こうしたデータを裏付けるように、F2Pへの課金率でも日本がかなり高い傾向が出ています。「基本無料だけで遊ばずに、課金して体験を広げるプレイスタイルが一般的になっていると推測します」と秋山氏は評していました。
鳴り物入りで登場したPS VRの、いまのプレイ状況
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PS VRのプレイ状況についてもデータを紹介。ただ、他の関係もあって詳細なデータは出せないとのことで、ここではデータから見えてきた傾向を語っています。
まずPS5でのプレイ状況を2021年4月からデータを収集してきたグラフを解説します。PS VRはPS4だけではなくPS5でも動作するため、いまPS5でVRで遊ぶユーザーが増えていることがわかっています。いまはPS4からPS5にシフトして遊んでいるユーザーが多いことも推測できるようです。秋山氏はこの結果に「Playstation VR2のリリースを前に、ポジティブな状況」だと評価しています。
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PS VRのタイトル別のプレイ時間の傾向では、地域ごとに違いがみえたそうです。アメリカとEUではユーザー間のコミュニケーションがあるタイトルが長時間遊ばれており、ワンプレイの時間が決まっているコンテンツが人気を博しているとのこと。日本では、むしろノンゲームのコンテンツが長く遊ばれており、幅広いコンテンツが遊ばれている傾向があるとのことです。
プレイの実績を示す「トロフィー」の獲得状況
さまざまなゲームプレイの実績を示すトロフィーの獲得状況についてもデータを紹介します。実績はこれはゲームプレイのモチベーションを生み出す仕掛けとして一般的になっているものであり、秋山氏は「このデータから何かしら開発のヒントになれば幸いです」と語っています。
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こちらには調査条件が設定されました。直近1年で、地域ごとに遊ばれているゲームのトップ100の中で、かつ全地域がランクインし、プラチナトロフィーが存在するタイトルを調査。
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その結果、日本のユーザーは平均トロフィー取得率が高いことがわかったそうです。このデータからわかることとして、秋山氏は「ひとつのタイトルを長く遊び、かつトロフィーを多く取得する」傾向があるとのことです。
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続いてプラチナトロフィーの取得状況のデータを解説。あらためて、プラチナトロフィーとはゲーム中すべてのトロフィーをコンプリートすることで手に入る実績です。そのため、取得は困難なのですが、調査結果なんとアジアとEUが突出していました。秋山氏は「やりこみ要素の高いタイトルがアジアでは人気だからかもしれません」と分析します。
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全体のトロフィー取得率の分布を見ると、地域ごとの違いも伺えます。基本的にトロフィー取得率が高くなるほどグラフは下がっていくのですが、要所を見ると興味深い状況が推察できます。たとえば取得率80~90%よりも100%のほうがグラフが高いのは、「ここまで来たら最後までやろう」と考えるユーザーが少なくないことが考えられるとのことです。
日本の場合は他の地域よりも取得率が0~10%で止まっているケースが少ない傾向が見られました。これはゲームの最初の段階を越え、ある程度まで遊ぶユーザーが多いのではないかと推測できるといいます。
PS4、PS5のハードウェア所有者について
最後にPS4、PS5のハード所有者が、どのくらいのソフトを持っており、1タイトルあたりどれくらいのプレイ時間をかけているかの参考情報を提示しました。
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まず直近1年でハード所有者が何本のゲームをプレイしたかのグラフを紹介。アメリカが一番多く、日本が他の地域よりも少なめという結果が出ています。
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一方、1タイトルあたりのプレイ時間の統計では、日本が突出して高い結果に。ここまでの講演でも言及されたように、1タイトルを長く遊ぶ傾向があることがわかる結果となっています。
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続いてPS4とPS5の両方を所有するユーザーのデータを解説。両ハードを持つユーザーはゲームの平均プレイ時間も増えていることがわかったそうです。PS5という新しいハードを手に入れたことが増加の要因になっていると推察されています(余談ながら、ハード購入が困難であることも、ようやく手に入れたから遊ぶんだというモチベーションに繋がっていると考えられます)。
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またハード1台あたり、PS専用コントローラーの接続数がいくつあるかのデータも。2台までは接続するというのはわかりますが、5~10台というかなり多いケースは友達の家にコントローラーを持って遊びに行ったときなどが加算されていると考えられています。
今回のデータからは、コンソールゲームの中で、playstationシリーズにおける世界の各地域のゲームプレイ傾向が見えてくる結果となりました。本講演のデータは今後、開発側がどのような新規プロジェクトを立ち上げるかの参考になるだけではなく、他にPCゲームやモバイルゲームといった他プラットフォームにおけるゲームプレイ傾向も参照しながら見ていくことで、より具体的に世界のユーザーの傾向を推察できる内容とも感じました。
「CEDEC 2022」他の講演レポートを読む