2022年も残すところあとわずか。2021年はコロナ特需で多くのゲームメーカーが大幅増収となりましたが、2022年はその影響が薄れてきました。主要なゲーム会社は中長期的な成長戦略に向けた一手を打ち始めています。
ゲーム業界を震撼させたのが、マイクロソフトのアクティビジョン・ブリザードの買収でしょう。総額687億ドル(1ドル135円換算で9兆3,000億円)という超大型案件。ただし、アメリカの公正取引委員会が独占禁止法違反で提訴するなど、課題は山積みです。
日本ではソニーがバンジーを4,100億円で買収しました。空前の円安で米国企業の買収は不利な時代。それでもプロジェクトを進めたソニーには強い意気込みを感じます。
2022年ゲーム業界の主な出来事を紹介します。
マイクロソフトが打ち出した最強の一手
2022年1月18日、マイクロソフトがアクティビジョン・ブリザードの買収意向を明らかにしました。アクティビジョンは米国NASDAQの上場企業。発表当時、マイクロソフトの買収提示額は1株95ドルでした。買収発表前の株価終値は65.39ドル。45.3%ものプレミアムをのせてのTOBでした。総額687億ドルという途方もないものです。
マイクロソフト最大の買収案件は2016年のLinkedInで、買収額は262億ドル。アクティビジョンはその2.6倍に相当します。
しかも、マイクロソフトにとってゲームは主力事業ではありません。かつてはMicrosoft365などのユーザー向けのサービスであるProductivity and Business Processes事業が業績をけん引していましたが、現在はクラウドコンピューティングプラットフォームAzureを主軸としたIntelligent Cloud事業が成長を担っています。
XboxなどのゲームはMore Personal Computing事業に入ります。2022年6月期の売上高は600億ドル(1ドル135円換算で8兆1,000億円)。四半期ごとの推移を見る限り、成長しているとは言えません。
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More Personal Computing事業は更に4つに分割されます。ゲーム領域はコロナ特需が訪れた2022年6月期の売上高はわずか3%の増加でした。マイクロソフトにとってゲームは成長性に欠けた事業。それにも関わらず、9兆円もの大型買収を決めたのです。
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アクティビジョンの2021年12月期の売上高は88億ドル。仮にアクティビジョンの連結子会社化が成立すると、マイクロソフトのゲームを含むMore Personal Computing事業は売上高が700億ドル近くまで上昇し、Productivity and Business Processes事業を抜いてIntelligent Cloud事業に近づきます。
Azureを含むクラウド事業が好調の波に乗り、次の成長領域としてゲームを狙っている様子がわかります。Xboxとの相乗効果があるのはもちろんですが、マイクロソフトはゲームを入り口としてメタバース領域を強化することも示唆しています。事実、2022年10月にメタバース領域でMetaと提携すると発表しています。
オンラインゲームは、仮想空間で遠く離れた人とコミュニケーションをリアルタイムで交わし、経済的な取引も発生しています。メタバースとの相性は抜群。マイクロソフトは中長期的な目線で買収を決めたと考えられます。
目下の課題は、アクティビジョンの買収が独占禁止法に抵触する恐れがあること。バイデン米政権は、大企業による市場の寡占化是正に乗り出していました。バイデン大統領就任前のアメリカは企業のM&Aに寛容だったものの、巨大企業が競争相手を買収によって飲み込み、競争を避けているとの疑念がありました。マイクロソフトは、やや買収のタイミングが悪かったと言えます。