ゲーミングに特化したコミュニケーションプラットフォーム「Discord」が、さらなる進化を遂げようとしています。同社のグローバルパートナーシップ責任者であるケリー・リャン氏に、最新の取り組みと今後の展望を聞きました。
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Discordは2015年に設立され、現在は月間アクティブユーザー2億人という一大プラットフォームに成長しました。ユーザーのゲームプレイ時間は月間15億時間を超え、数千タイトルを横断的にプレイしているといいます。
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「当初からマルチプレイヤーとモバイル性が高まっていくと予測していました」とリャン氏は振り返ります。「現在、ゲーム業界は2000億ドル規模、30億人のプレイヤーを抱える巨大市場となっています。新規参入も活発で、ユーザーの選択肢は広がっていることは素晴らしいですが、逆にデベロッパーやパブリッシャーにとっては、プレイヤーの注目を集めることが難しくなっているのが現状です」
そうした中、同社は2024年前半に新機能「クエスト」をローンチ。15分間のゲームプレイ配信で報酬が獲得できる仕組みで、多くのパートナー企業と協力しながらサービスを展開。クエストでの施策を実施後、プレイヤー数が9%、プレイ時間が16%増加(全体の平均)するなど、すでに効果が表れているとのことです。
またタイトル個別の実績として、たとえば『原神』では7日間の「クエスト」キャンペーン中にプレイ時間が83%増加し、Discordでのライブ配信も296%増加。さらにキャンペーン終了後にも数週間にわたり効果が持続したといいます。
Discordといえば、ゲームを複数人でプレイする際のコミュニケーションツールとしての印象が大きいですが、リャン氏によれば「マルチプレイヤー」の概念が変化しているといいます。「マルチプレイヤーとは、必ずしも複数のプレイヤーが同時にプレイすることだけではありません。フレンドのプレイをストリーミングで見て、直接プレイしなくても、それを体験の一部として楽しむスタイルが増えています。これはシングルプレイヤーゲームでも同様の傾向が見られます」
また、ゲームを通じたコミュニケーションも多様化しており、「ゲームの前に作戦を話し合い、プレイ中は観戦して楽しみ、終了後はゲームについて話を交わす。そういったユニークなつながりが生まれています」とリャン氏は説明しました。
PCゲーム市場が拡大する日本市場について尋ねると、リャン氏は「元々PCでプレゼンスが大きかった当社ですが、現在はPlayStationやXboxとの統合も進めています。最終的な目標は、プレイヤーがどのプラットフォーム、どのデバイスでも、クロスプラットフォームでゲームを楽しめる環境を実現することです」と、PCに限らずプラットフォームを横断したサービス展開に主眼を置いていることを強調しました。
今後の展望については、確かに90パーセントのユーザーがゲームをプレイしているものの、それだけが目的ではなく、様々な形でフレンドとの繋がりを求めていると分析。「これからも素晴らしいゲーム体験の提供に注力しますが、それ以外のユーザーにもメリットをもたらしていきたい」と話しました。