一方で今回のTGSを見て思ったことがあります。新興系のパブッリッシャーの今秋から今冬にかけてのラインナップが「ゲームらしく」なってきたと思いました。
誤解を恐れずに言うならば、一般にソーシャルゲームと言われていたものは、ゲームというよりは画面をタッチすることを、ある種の儀式、義務化したようなもので、惰性で行っていた要素も多いと思います。つまりゲームというエンタメ要素よりも一時期流行った「タイピング養成ソフト」のようなものだと言っても差し支えないと思います。
ところが先般のTGSにおいてはそれらのゲーム的要素もったコンテンツが減り、ゲームらしい要素をもったものが増えていたように思いました。個人的なそれに至る仮説はふたつあります。
ひとつは5月のコンプガチャ規制以降、従来型の重課金タイプのゲームが展開できなくなったこと、またはできにくくなったこと。そしてもうひとつの理由は、2年ほど前から増えてきた、家庭用ゲームメーカーなどから転職をしたゲームプランナーやデザイナー、プログラマーが活躍し始めたということだろうと思っています。
もちろんほかの複合的な要因もあると思うのであくまでも推測として・・・。
そしてTGSにおける家庭用ゲームメーカーの出展コンテンツはというと、あまり変化はなく、従来ヒットしたゲームの焼き直しや、続編などが目立ちました。その意味ではなんとも忸怩たるものがこみあげますが、生みの苦しみの最中ということで結果を待ちたいと思います。ただし、セガのオンラインコンテンツ系へのシフトやコナミのメタルギアのスマートフォン向けゲームなど時代の変化に対応を急いでいるという様子もうかがえます。一方でレベルファイブのように良質な作品を家庭用でといいうコンセプトを維持しようと努力している会社もありで、家庭用ゲームソフト各社の存在意義と価値と存続性を問われているような感じを受けます。
そのような環境のなか、アメリカを中心とする海外で起こっているムーブメントで、フリーやインディーズとしてゲームを開発し、そこからヒットが生まれているとい状況があります。「発想こそ命」のようなゲームコンセプトで、数人で始めたゲーム開発で、ゲーム性が高く評価され、ファンドやベンチャーキャピタルから多額の出資を受けて成長するという事例もあります。すでにアメリカでは大手が徐々に体力を落としていく中で、インディーズ的な開発企画ソフトが台頭しているようです。つまりゲームの歴史が一周回ってしまったということではないかと個人的に分析しています。
おそらく似たようなことは日本でも起こるはずでしょう。ソーシャルゲームの顧客獲得単価が数百円と言っている昨今の事情を聞くにつけて、なかなかインディーズ的な感覚でゲームソフトを導入することは難しいと思います。ただしユーティリティアプリ系などは個人でも参入の余地があることは明らかで、プログラマー個人が自分で作ったアプリを自分の名義で販売しているのをみると勇気づけられるのは私だけではないでしょう。
TGSも新しい才能を発見するような場所や時間をさらに創ってもらいたいと思うと同時に、新しい才能に投資をできる環境を整備していくべきではないでしょうか。インディーズ系の開発者、企画者に事業計画とかKPIとかPDCAとかありきたりのことを言う前に、開発資金をだすような仕組みや発表の場所を作るべきではないでしょうか。それがゲームに限らず新しいエンタテイメントを生み出すことになると思います。
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■著者紹介
メディアコンテンツ研究家
1960年・東京都生まれ。武蔵大学卒。レコード会社を経て、株式会社ギャガコミュニケーションズ(現・ギャガ)、株式会社セガエンタープライゼス(現・セガ)、株式会社デジキューブを経て株式会社デックスエンタテインメントを起業。映画製作配給、オンラインゲーム企画開発運営に携わる。その後株式会社ブシロード副社長、株式会社コナミデジタルエンタテインメントを経て、現在は株式会社NHNジャパンにてオンラインゲームの企画開発運営に携わる。一方で数々のエンタメ産業への造詣が深くメディアコンテンツ研究家としてコラム執筆を行う。ブログもご参照ください。Twitterアカウントはku6kawa230。