バンダイナムコスタジオの志摩雅則氏は、昨年8月に解説されたバンダイナムコスタジオシンガポールの立ち上げを主にIT面からサポートした経験についてCEDEC 2014にて講演しました。シンガポールは人口541万人、面積は東京23区と同程度。羽田発着便もあり、日本から7〜8時間、時差は1時間。自然災害は少なく、日差しは強いですが、日本よりも過ごしやすい気候。若者が多く、活気に溢れ、英語が公用語で日本人にとっても楽です。そしてIT投資に対する優遇税制もあります。バンダイナムコスタジオシンガポールは、バンダイナムコの東京スタジオからの業務受託や、東南アジアの開発委託先へのハブとして昨年8月に設立。今年8月の時点で約50名のスタッフがおり、大半が現地採用。7割がアーティストですが、プログラマやゲームデザイナーも在籍し、ゲームタイトルを開発できる体制が整っています。志摩氏はこのスタジオの設立を技術環境面でバックアップしました。話があったのは昨年6月末。開発環境のミーティングで、DCCツールの調達を依頼されます。そこで志摩氏は「現場の作業の手をとめない」「できるだけ安価に調達する」「コンプライアンス遵守」の3つを基準に各社との折衝を進めました。まずオートデスク製品です。同社は通常、ライセンス譲渡は認めておらず、東京スタジオの余剰分を回す事はできませんでした。そこで、Regieonal ETRという契約を結び、APAC地域内でライセンス共有ができる契約にしました。その後、グローバルで「エンタープライズプライオリティサポート」と呼ばれる包括契約に移行することで、世界各地のスタジオが同じ契約でツールを調達する形にしました。これはレベルの高いカスタマーサポートを含んだもので、通常のサブスクリプションよりは高価になりますが、新規購入よりは安価だったとのこと。アドビ製品は日本でも取引のある代理店のSoftwareONEと調整。世界展開している代理店だったため、東京オフィスと協議をして、シンガポールスタジオが、同社のシンガポール支店から調達できるようにしました。ZBrushはサーバーを東京に置いて、海外から使ってもOKというライセンス形態です。ただし、ライセンス数に余裕がなかったため、クレジットカードで幾つか新規購入。こちらは管理の人手が現地にはないため、東京スタジオで購入し、管理するという形をとっています。その他のDCCツールは現地でクレジットカード購入したとのこと。本数が少なければ、これが最も早くて、法的な問題も出てこないとのこと。PCやネットワークインフラについてはソフトバンクテレコムのシンガポール支社に依頼。日本人担当者と日本語で調整が出来たため、大変楽だったとのこと。グローバル企業は世界の主要都市には拠点を持っているため、まずは相談してみるのが良いのではないかとのこと。最も難しいのはファーストパーティの開発環境です。任天堂、ソニー、マイクロソフトはいずれも各地域の窓口を用意しているため、基本的には地域の窓口と調整することになります。開発機材も、日本から貸与する場合は輸出に当たるため、輸出規制に抵触してしまいます(暗号装置としての機能を有するものは経済産業省の許可が必要)。志摩氏は基本的には現地調達が良いとしながらも、バンダイナムコのように日本で大量のライセンスを扱っていれば、ボリュームディスカウントも考えられるので、そうした場合は日本から調達することも検討した方が良いとアドバイス。また、もっと重要な点として現地とのコミュニケーションを挙げました、「現地は自分たちが思っている以上に不安がっているので、きちんとケアしなくてはなりません。何度か現地に赴いて顔を合わせるべきです」。どんどん海外に出て行く時代、志摩氏の経験は他の会社にとっても参考になりそうです。
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