Photonはオンラインゲームを手軽に開発するためのミドルウェアで、クラウドサーバとセットで提供され、インフラ側の開発が不要なPhoton Cloudと、独自にサーバを構築し、インフラ側のカスタマイズもできるPhotone Serverに大きく別れています(他に機能特化型のPhoton Realtime, Photon Turnbased, Photon Networking, Photon Chatもあります)。20種類以上のOSやプラットフォームに対応し、中でもUnity向けにはAsset StoreからPUN(Photon Unity Networking)をダウンロードするだけで、SDKを使用することもできます。

このうち並木氏がプッシュしたのが、今夏にV3からV4にメジャーアップデートが行われるPhoton Serverと、新たにファミリーに加わるPhoton Voiceです。V4では新たにHTTP(S)がサポートされ、より堅牢なセキュリティが求められる環境下でもPhotonが使用可能になります。このほかPhoton Turnbasedの一部機能(イベント発生時に外部Webサービスを呼び出す、ルームの情報をクラウドサーバにセーブするなど)の実装や、アプリ構造とカウンタ構造のリニューアルも行われます。
これに対してPhoton Voiceは音声通信の機能を追加するもので、Photn Realtimeで培われた技術を(APIをはじめとして)ベースとしています。1対1だけでなく、グループ単位でのボイスチャットも可能で、音声コーデックにはゲーム向けに開発され、定評の高いTeamSpeakが使用されています。気になるリリーススケジュールについて、Photon Server V4はRC1版はすでに提供中で、正式版もまもなくリリース予定。Photon Voiceは夏頃にアーリーアクセスを開始する予定とされました。
■Windowsサーバ縛りを除けばスムーズに開発できた~小倉氏
セッション後半では最大で30人同時対戦が可能なリアルタイムストラテジー『リトル ノア』を開発した、ナイルの小倉唯克氏が登壇し、並木氏の質問に答える形でセッションが続けられました。本作ではクライアント間の通信部分にPhoton Server V3が使用されており、小倉氏は選択の理由として「ユニティとの相性の良さ」を最初に上げました。もともと初期段階ではオンライン対戦機能が考慮されておらず、開発後半で急遽実装することになったため、選択肢が限られていた点も背景にありました。

『リトルノア』を開発したナイルの小倉氏
もっともコードをC#で記述できるため、クライアント向けに作った機能をサーバ側に移植することも容易だったとのこと。作業をはじめて1ヶ月強で動かせるものが完成し、2ヶ月くらいでレイドボスバトルを試せるようになったといいます。またPhoton CloudではなくPhoton Serverを採用した理由には「サーバの深い部分まで自分たちでコードを書くことができるため」と回答。同様にSDKもコード不要で実装できるPUNではなく、ネイティブSDKをカスタマイズして実装したとのことです。
一方でネックとなったのが、PhotonがWindowsサーバにしか対応しておらず、Linuxサーバが使用できなかったこと。開発ノウハウが社内に乏しく、専門家についてもらったそうです。もっとも運用は非常に判定しており、ベンチマークの結果もLinuxサーバより良くて、サーバ台数の節約につながりました。「Windows Visual Studioで開発できたのも開発の効率化につながりました。欲を言えば日本語のドキュメントがそろっていないことくらいで、他にはないですね」(小倉氏)。
小倉氏は「自分たちは古くからのゲーム屋なので、他にごてごてと機能が付いているよりも、Photonのように大本はシンプルで、他にさまざまな機能がオプションで選択できるようなものの方が使いやすい」と言います。SDKのソースコードが公開されている点もポイントで、「海外展開などもふまえて、パケット量のチューニングを自分たちでやりたいという思いがあり、SDKのカスタマイズが必要だった」とのこと。今度もシンプルな良さを失わないで進化していって欲しいと語りました。
他にも『Rise of MANA』『ファミスタドリームマッチ』『テラバトル』など、採用実績がどんどん増加しているとのこと。最後に並木氏は「一般的に難しいイメージがあるマルチプレイのゲーム開発もPhotonを使えば簡単に行えます。すべてのサービスが無料から使用できるので、ぜひ試してみてください」と呼びかけ、セッションが終了となりました。