第1章 eスポーツとの出会い。賞金1億円とプロゲーマー
昨年の夏、ゲームアプリ事業を起こそうとネタを探っている時にふと見たニュースが事の始まりでした。
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ニューヨーク・タイムズの1面に「eスポーツ」の紹介記事が掲載
(ニュースの見出し.1)「ゲーム大会の優勝賞金が1000万円!」
(わたしの反応) え?なんでそんな事が出来るの?
(ニュース見出し.2) 「プロゲーマー同士の熱い戦い!」
(わたしの反応) ほう、ゲームで飯が食えるんだ。すげーなー
(ニュース見出し.3) 「世界が熱狂するeスポーツ」
(わたしの反応) eスポーツ?? なんでゲームなのにスポーツなの?
「eスポーツ」を初めて見聞きする人のほとんどは同じ反応をするのではないかと想像できますが、私もこんな素朴な反応をしたことを覚えています。
ニュースには、『Dota2』という5対5で陣地を取り合うオンラインゲームのイベント風景の写真が掲載されており、数万人の観衆がステージ上で戦う(PC端末を操って)風景が見て取れました。
「なんだこのコンサートや格闘技イベントのような熱気は!?」と。すごく、興味を惹かれたことを覚えています。
◆スポーツという言葉の定義にビビッときた瞬間
中でも一番不思議に思ったことは「ゲーム」に関連するイベントやプレイジャンルに「スポーツ」という名前がついている点でした。「スポーツ」というワードは、「競技」や「競う」という意味であることは周知として、理解が必要なのはこの「競う」という意味にもう一段の解釈を持っていることです。
「eスポーツ」に類するゲームの不文律として、「ゲームでの競争において勝敗や優劣を金銭で解決してはならない」という解釈があります。これは、「金をつぎ込めば勝てるゲームは、金を持っている人が勝つゲームであり、それは公平・公正な競争(スポーツ)ではない」という意味です。代表的なeスポーツのゲームである『League of Legends』は武器やスタミナ回復ではなくアバターがマネタイズポイントです。
まず、このことを知って大きく感銘を受けたことを覚えています。なぜならば、「eスポーツ」の課金の定義は私たちが今まで作ってきたゲームとは真反対の位置にあるからです。内心、「一番の課金ポイントで課金しなきゃ儲からねーよ!」と独り言を言ったのも覚えています。ゲームを作ってきた我々からすればゲームの設計思想にまでさかのぼる課題を突きつけられた気分でした。ただ、だからこそ世界中のユーザーが慣れ親しんでいるんだろうなぁ…と思ったのも事実です。実際、『League of Legends』のユーザー数は全世界で7000万人を越えると言われています。
また、もう一つの定義として「eスポーツは年齢差、体力差、性差を問わないスポーツである」という事がよく言われます。例えば、マイクさんという『ストリートファイター』の人気ゲーマーがいます。この方は重度の障害者で手の指しか動かせない方なのですが、指と口を使った独自の操作方法で『ストリートファイター』の大会で好成績を収めたことで、ゲーマーとして社会との接点を持て、「eスポーツ」が人生を変えるきっかけになったと言います。
この「eスポーツ」の2つの定義を知る事で一気に引き込まれたのが私のeスポーツとの出会いでした。そして、自身が得意とし、日本が世界に誇るモバイルのゲームジャンルで、「モバイルeスポーツ」を作れないものだろうか!?と一念発起し2014年の夏に「ワンダーリーグ構想」を立ち上げたのが始まりのプロローグです。