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――まずは改めて自己紹介をお願いします。
織田氏: 織田博之です。SIEJAで主にアジア地域のビジネスを担当しています。
――例年に比べ、SIEブースが大きくなっている気がします。
織田氏: 今年はPlayStation VRのエキストラブースも設けており、去年に比べ約1,4倍の大きさになっています。
――オープンニングセッションでもありましたが、韓国国内でのPlayStationプラットフォームへの認知度および期待度が高まっているかと思います。
織田氏: おかげさまで韓国での売上も非常に好調です。G-STAR 2016では41タイトルの出展を行っているのですが、そのうちの37タイトルがローカライズされたタイトルになっています。また今年発売したPlayStation VR、PlayStation 4 Proが非常に好評で、現在供給が追いつかない状況です。それを見ると、いままでのコアなゲーマーの方はもちろんのこと、それ以外の幅広いお客様にもPlayStationを楽しんでもらっているのかな、と感じます。
またデベロッパー様から見ても、全世界で4,000万台が売れているPlayStation 4のプラットフォームに配信することで、多くのユーザー様の手元に届けられるのも魅力のひとつだと感じます。
――オンラインゲームおよびスマートフォンゲームをプレイするユーザーが多い韓国ですが、なぜいまコンソールが支持されているのでしょうか。
織田氏: PCオンラインゲームにはないゲーム体験がPlayStationでは体験できる、という部分でしょうか。例えばゲームジャンルでいいますと、PCオンラインゲームでは、MOBA(マルチオンラインバトルアリーナ)やRTS(リアルタイムストラテジー)といったジャンルが多いですが、PlayStationではスポーツからRPGまで幅広いジャンルのタイトルを韓国語でプレイできます。ただ、PCオンラインゲームからスイッチするユーザーはあまりいないと考えていて、「新たにPlayStationも購入して新しいゲーム体験を」、という方が多いと思います。
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PlayStation Moveを用いた実際に体を動かすタイトルなども人気
――いまの韓国のゲーム市場をどう見ていますか。
織田氏: やはり圧倒的に大きい市場はPCオンラインゲームとモバイルゲームです。一方で韓国ではVRがものすごくブームになっています。政府からもコンテンツ開発に対して、補助金を出す体制となっていて、それはまさしく私達が提供しているPlayStation VRおよびPlayStation 4と合致しています。国全体としてVRが注目されている中で、PlayStation VRを活用して新しい市場が開拓できるのではないかと考えています。
――韓国国内でよく売れているタイトルなどはあるのでしょうか?
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織田氏: 韓国語にローカライズされたタイトルはやはりよく売れますね。もちろん『ファイナルファンタジー15』も非常に期待されています。また韓国内では「ゲームショップの店長さんが推すタイトルがよく売れる」傾向にありまして、アジアの中でも韓国では『The Last of Us』が非常に売れています。PlayStation 4を初めて買うお客様に「ラストオブアス、いいよ!」とセットで売ってもらうことが多いみたいです。今回『仁王』も展示していますが、『Bloodborne』のようないわゆる死にゲーも非常に好評です。その他『FIFA』『NBA』などいろいろなジャンルのタイトルが売れますね。
――格闘ゲームはどうでしょうか?
織田氏: やはり「e-Sports」が非常に盛んな国ですので、需要は高いです。今回もG-STAR期間中に『ストリートファイターV』のアジアプロツアーを開催しているのですが、人気度は高いです。
――日本と韓国のe-Sportsの盛り上がりの違いの理由はなんでしょうか。
織田氏: PCオンラインゲームがメインということもあり、基本的にはファンダメンタル・土壌ができているのが大きな理由のひとつだと思います。ユーザー様がゲームを「エンタテインメント」と捉えていますし、ゲームメーカー様もe-Sports専用の施設を作ったり、ゲームの大会を数多く開催するなど、比較的早い段階でe-Sportsに積極的に取り組んでいる印象が強いです。
e-Sportsが成功する要因として「プロプレイヤー(上手な選手)」、「賞金」、「放送局」この3つが重要だと考えています。特に3つ目の放送局は、オンラインなどを通して「如何に面白くユーザーに届けられるか」が重要かな、と。一等地ビルが丸々e-Sports配信・会場施設、という場所もあったりします。
――以前、江南(カンナム)にある「Nexon Arena」に行ったことがありますが、設備がすごくて驚きました。
織田氏: 我々も「PlayStation Arena」という大会を「Nexon Arena」で年2回開催していたります。恐らく韓国はe-Sports環境が世界一整っていると言っても過言ではないかもしれません。
――SIE独自で会場などを作ったりはしないのでしょうか。
織田氏: e-Sportsはやはり「興行」なので、ノウハウが必要になります。そこで言うと我々はまだまだ後発ですのでこれからいろいろと勉強させてもらえればと思います。
――今後PlayStationが韓国マーケットでよりステップアップしていくために、どういった戦略を考えていますか。
織田氏: 今、韓国の市場(売り場)が大きく変化しています。我々がメインとしている販売チャネルはゲームショップ様が多いのですが、そこではコアなゲーマー様が集まって購入してくれています。ただ、逆に言うと販路が限られています。しかし、ここにきて韓国の大手家電量販店「Eマート」というものがあるのですが、そこではゲームはもちろんのこと、VRガジェットであったり、ドローンであったり、美容室があったり、バーカウンターがあったりして、本当に幅広い層のお客様が訪れます。いまそういった場でのPlayStationの普及が急速に広がっていて、今後はそういった販路での販売も強化していきます。
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――韓国向けに特別なタイトルの投入などは行っていくのでしょうか?
織田氏: ローカルデベロッパーさんが作ったタイトルを多く投入していく予定です。主にPlayStation 4、PlayStation VRタイトルになるのですが、現在も30タイトルの制作が進んでいます。もちろん『ファイナルファンタジー』や『仁王』など日本のみならず、海外のAAAタイトルも「同時発売」するということを行っていきたいです。
――e-Sportsという観点で何か特別なことは実施しますか。
織田氏: 今回はカプコンプロツアーを一緒に実施させてもらっていますが、今後はゲームジャンルを増やしていきたいです。そのあたりは現地の韓国スタッフと相談しながら進めていて、例えば「PlayStation Arena」で『ギルティギア』に続く、次のタイトルは何か、という話をよくします。『Call of Duty』などのFPSもあるし、『FIFA』や『グランツーリスモ』などのスポーツもあるし、いろいろな方向からいけるな、と。来年の「PlayStation Arena」は個人的に非常に楽しみですね。
――アジア全体の調子はいかがでしょうか?
織田氏: 韓国が突出して調子が良いですが、おかげさまで全体的に好調です。中国については、なかなかタイトルが投入できておりませんが、国全体として「VR」が社会的にムーブメントになっており、それに引っぱられる形でPlayStation VRの注目度も非常に高まっています。PlayStation VRからPlayStation 4に入ってくるユーザー様も多いです。
――本日はありがとうございました。
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韓国およびアジアのゲームマーケットに注力していくと語ってくれた織田氏。欧米や日本以外でも攻勢を強める今後のPlayStationプラットフォームの展開を見守りたいところです。