4月にリリースされた『フレイム×ブレイズ』はスマートフォンやタブレットでプレイできる3on3アクションゲームとなっており、いわゆる「ガチャ」がないことでも話題になりました。今回本誌では、ゲーム開発秘話から本タイトルのマネタイズ手法を担当プロデューサーの岡山 博紀氏にインタビュー。スマートフォンゲームタイトルならではの運営方針を聞きました。
――まずは自己紹介をお願いします
第1ビジネス・ディビジョン マネージャー プロデューサーの岡山 博紀です。元々PCオンラインゲームを担当していまして、スクウェア・エニックスではブラウザゲームの『戦国IXA』や『モンスタードラゴン』を担当していました。その後、時代がスマートフォンに移り変わってきて、『キングダム ハーツ』のスマートフォン向けゲームや、『メビウス ファイナルファンタジー』などを担当しました。
――スクウェア・エニックスのスマートフォンタイトルへの取り組みについてはいかがですか?
僕がここでばしっとスクウェア・エニックスを代表して語るのはできないのですが、スクウェア・エニックスでは10の開発部署があって、それぞれがスマートフォンからアーケードまで幅広く切磋琢磨しています。
――現在はどんなタイトルを担当されているのでしょうか?
『フレイム×ブレイズ』もそうですが、『KINGDOM HEARTS UNION χ』などを担当しています。
――構想としてはいつごろから立ち上がったのでしょうか
構想が何年前かと言われればはっきり思い出せませんが、海外で『MOBA(Multiplayer Online Battle Arenaの略、プレイヤーは各チームに分かれ、味方プレイヤーと協力しながら敵チームの本拠地を破壊するなどして、勝利を目指すスタイルのゲーム)』というジャンル、『Dota』や『League of Legends』などが流行し始めた時、日本に一生懸命輸入しようとしていても食いつきがあまり良くなく、面白いのにもったいないと思っていて、どこかで何かやりたいなと思っていました。『フレイム×ブレイズ』の形はプロジェクト立ち上げ時にディレクターと話し合って決まっていった感じです。
――本作を制作するにあたり、特に意識した点などはありますか?
構造はすごく深くしてあって、実際の見栄えやルールといったものをどこまでシンプルにできるか、というのがキーワードになっています。シンプルでありカジュアルですね。
『League of Legends』(以下『LoL』)や『Vainglory』はタワーがあって、女の子にとりあえず渡して遊んでみてって言うと、タワーに突っ込んでわからないまま死んでしまって、このゲームの意味がわからないという段階で終わってしまうんです。なので『フレイム×ブレイズ』は、盤面に出てくるオブジェクトを全部モンスターに変更し、大きいモンスターは強い、小さいモンスターは弱いという風にして、モンスターを倒すというシンプルなルールにしました。お互いの本拠地も最初は四角い卵みたいな形になっているんですが、浮き上がったらでかいモンスターになっていて、これを倒せばいいんだなとわかるようになっています。説明する時にどうやって説明したら良いのかというところも重視しています。
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――『LoL』は初めて触った時はミニオンに突っ込んだりしますしね
確かにそうですね。自陣から出ているミニオンを倒そうとしたりして、最終的に覚えることは多いですし、ルールを知らないと見ていてわからないのはあります。なので、『フレイム×ブレイズ』では格闘ゲームのようにゲージを表示することを重視していて、お互いのボス、リアクターと言うんですが、それが覚醒するまでにどこまで育ったかというのがゲージでわかりやすいようにしています。
このゲームに関してはキル/デスに関してはそこまで重視されず、どれだけ倒した、倒されたということに関しては、盤面上の勝利に関しては大きい影響はないです。日本人は対戦ゲームが嫌いで、ノーマルバトルとランキングバトルの2つを用意してありますが、ランキングバトルは全然人が来ないです(笑)。そういうのも含めてアップデートを進めていますが、日本の方に気軽にどうやって遊んでもらおうかと考えて作ったものではあります。
――ジャンルとしてはMOBAを前面に出している形ですか
日本では「3on3アクション」という表記にしています。日本ではMOBAという単語自体がまだまだ認知度が低いので。
――本作はあくまでもアクションということですね
海外ではMOBAと言いたいところです。ショートカットした部分もあれば、MOBAのお作法だったらこれは抜けないと思っているところもあり、MOBAを噛み砕いた部分もあるので、ビギナー向けMOBAと言うところでしょうか。
『フレイム×ブレイズ』はスピード感を重視しています。MOBAの妥当性を守りながら、スピード感をどこまで上げられるかというところにチャレンジしています。スピードを上げればアクションに近づいていき、遅くすればRTSやシミュレーション寄りになります。この技をここで発動したいというようなところをつき詰めていくと、シミュレーションに近づいて行きますが、本作ではこのあたりを1ボタンで技がすぐ出るくらいにカジュアルにしています。
――今後も様々MOBAタイトルが出てくると思いますが、他タイトルと異なる部分でシンプルさ以外はありますか?
これから強みになっていくとは思いますが、対人戦ありきではないところがあると思います。今はユーザーさんに協力してもらっている最中ですが、どこに落ち着かせようかは悩んでいるところです。蓋を開けて感じたのが、3vs3だと6人必要なので、厳格にマッチングしようとするとマッチング完了までの時間が長いです。気軽に遊べるモードのノーマルバトルでは少し待って集まらなければ残りをCPUで埋めるというような形になっています。サクサク遊べるのをウリにはしたいですし、1試合も10分程度で終わります。
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――試合自体もスピード感を重視していますか?
最初に僕がディレクターに要望したのは、スマートフォンで遊ぶなら10分が限界じゃないか?というところでした。『Vainglory』などは20~30分ぐらい遊べるので、2~3分のマッチング待ちは許容されますが、10分程度の試合であれば1分ぐらいがマッチングの限度ではないかと思っています。
――レーンやキャラクターの得意な行動などは用意されているのでしょうか?
キャラクターはエージェントと呼ばれていますが、それぞれに特徴はあります。どのレーンというよりはシチュエーションに特化しています。盤面上に時間経過でのモンスターのポップがありますし、リアクターに送り込めるモンスターなどもいます。このゲームで一番重要なのはリソースをどれだけ奪えるかというところで、自陣に近い方は取りやすいですし、中央のリソースは奪い合いになります。敵のリソースを奪えればしばらくは有利を取れます。リソースは何を指すかというと、モンスターなんです。モンスターを倒すと仲間になり、強いモンスターを敵陣から1匹持ってきて、自陣のモンスターも取ってしまえば、勢力的にはアドバンテージが取れます。あそこのモンスターを先に取って有利を取りたいけど、セオリー的にはここを攻められるからここを1人で守ってくれ、といった戦略で遊ぶことができます。MOBAでは珍しく同キャラクターが複数存在することができますので自分の好きなエージェントをそれぞれ好きなように使うことができます。
――通常のMOBAのようにそこまで役割分担にこだわらなくてもプレイはできる、ということですね
リアクターがやられそうなのにジャングルでモンスターを狩っていると怒られるとは思いますが、倒すと自動で相手の拠点を攻撃してくれるバッフルというモンスターがいたり、とりあえずミサイル発射ということもできます。エネルギーを送り込むと相手のリアクターがダウンしてガードが5秒落ちるので、エージェントが集まっていれば大ダメージを与えられます。
――ビルド(アイテム構成)の概念はありますか?
『フレイム×ブレイズ』では、スクウェア・エニックス風に言うとジョブチェンジを行います。全エージェントが表と裏の2パターンの技やパラメーターを持っています。ビルドとショップのお陰で試合時間が長引くので、真っ先に削除しました。
その代わりにパラメーターを持っていく仕組みが入っていて、それをカードと呼んでいますが、カードごとに強さが設定されていて、Lvや時間に応じて発動できる能力や潜在能力もあります。それをデッキビルドのように事前にやっておけるようになっています。プレイヤーはセオリー通りに組むのも、自分の動きたいようにビルドを行うこともユーザーが任意に行えます。
――戦況に応じて考えていたビルドが変わることもある、ということですね
マップは変わらずともモンスターの配置が変わるだけで戦略が大きく変わります。モンスターを狩ることを優先するのであれば、モンスターに効果的な武器を積めばいいですし、エージェントとやりあうのであればエージェントキラーのような武器を積むことで対応ができます。
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――ライトゲーマーでも入りやすい気がしました。慣れてくるとやれることも増えそうです。
今はカードのパラメーターをぼかしていますが、慣れたユーザーはパラメーターもきっちり把握しています。しかし、そこで出しすぎるとカジュアルゲーマーには厳しくなってしまうので、ジレンマを抱えています。ターゲットユーザーがコアユーザーであればあるほど情報を出した方が良いんですが、誘われた人が入りやすいものであり、コアユーザーも納得できるもの、という難しいところを目指していて、チャレンジングなタイトルではあります。
――e-Sportsは視野に入れていますか
e-Sportsは当然視野に入れています。『フレイム×ブレイズ』の大会開催を考えていますし、オンライン、オフライン大会のどちらも開けるようにしたいです。最初は弊社の社長から「みんなが集まってワイワイ楽しめるスマホゲームをやれたら良いね」という話もあり、僕らなりに出した解答がこれでした。
――マネタイズについてはどういう形で取り組んでいますか?
基本的にはアイテム課金で対応しています。ゲーム内で利用できる有料通貨をご購入いただいて、ゲーム内のアイテムを購入していただく形になります。ただ、せっかくのチャレンジなので、PAY TO WIN(基本無料ゲームで、課金をすることで無課金プレイヤーに容易に勝利することができるシステムが用意されているゲームを指す用語)にならないようにはしてあります。まだそういう意味では手探りの部分も多いです。
現状、ゲームプレイ後に報酬をもらうためにはスタミナ(エナジー)みたいなものが必要になっていて、そのスタミナは時間で回復するんですが、スタミナをかけないと少ししか報酬がもらえません。6人全員で最大18スタミナが必要で、全員で負担しても1人で負担してもいい共有システムになっています。足りなければ動画広告を見て補充するという形も選択できるようになっています。ただ、もう少し報酬を渡してもいいとは思っています。
――何故アイモバイルの「maio」を選んだのでしょうか?
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まず日本で運用するというのがあったからですね。他社さんであれば外国製などもありますが、maioは純国産の動画アドネットワークですし、日本案件を多く抱えていると考えました。広告は季節ものですし、ゲーム広告以外にどれだけ営業で持って来れそうかというのを考えることもあります。動画が最後まで視聴されたタイミングで収益が発生するのも、いいなと思いました。僕たちは動画で相性が良い広告が出るところは否定しません。
後、アプリに広告を実装する際の安全性も考えました。国産のmaioはその辺りの、サポート体制も良かったので、maioに決めました。
――ビジネス的に効果は出ているのでしょうか?
今の規模で言うと、単価を見ると良い感じです。あとは動画広告を再生した時に報酬を増やしてモチベーションを上げて、再生数をのばしていく必要があると感じています。
――ガチャをなくした理由を教えてもらえますか?
結構ヒリヒリとしてバランスの取れたものを作ろうとしていたからです。ガチャで低いもののパラメーターが10だとしたら、今時のソーシャルゲームのガチャは強いやつは3万、天地ぐらいの差があります。対戦ゲームでそういうものを出してしまうと、試合に参加すらできないようなものになってしまうので、10のものがあれば11のものもありますというものは面白いのか?というのが発端です。
Pay to Winで成り立つものであればいいんですが、自分たちは大会を開いて盛り上げたいので、公平にパラメーターを設定したいのと、バランス取りが大変なので数字で遊べないというのもあります。当たりを作っても、プレイヤースキルの方が影響しますし。
――スキンなどの装飾系のアイテムの導入はしないんでしょうか?
求められれば当然導入していきます。今のフェーズであれば、みんなが買いやすいもの、これを買っておけばずっと遊べますよ、というのをファーストパッケージで僕達がどれだけ提供できるかという段階です。
――今後の展開と読者に向けてのメッセージをお願いします。
このゲームは本当に初めて尽くしというか、日本の皆さんからすると触ってあれ?と思うようなところが多いと思います。しかし、噛めば噛むほど味が出るようなスルメゲーに作り込んであります。絶対楽しいので、怖がらずに一度触って見てください。対戦する時は広告動画を見て、エナジーをためてフルベットして遊んでみてください。キャラクターも全員魅力的ですよ。
――ありがとうございました。
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新しい領域に果敢にチャレンジをしている『フレイム×ブレイズ』。今後の展開に期待です。