弁護士が「ゲーム大会利用のガイドライン」を解説 法的問題の要点とガイドライン策定のポイントとは【CEDEC2024】 | GameBusiness.jp

弁護士が「ゲーム大会利用のガイドライン」を解説 法的問題の要点とガイドライン策定のポイントとは【CEDEC2024】

「自社タイトルでユーザーがゲーム大会を開きたい場合、ガイドライン制定が必要か?」を弁護士が解説

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弁護士が「ゲーム大会利用のガイドライン」を解説 法的問題の要点とガイドライン策定のポイントとは【CEDEC2024】
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2024年8月21日から23日まで、国内最大級のゲーム業界向けカンファレンスイベント「CEDEC2024」が開催され、エンジニアリングからアート、そしてビジネスまでさまざまなジャンルの講演で知見が紹介されました。

その中から本稿では2日目に行われたセッション「ゲーム大会の法的問題とゲーム利用ガイドライン策定のポイント」をレポート。eスポーツ人気も高まる昨今、増えつつある「ゲーム大会」について法律の観点からどのような点に注意すべきか、現役弁護士の目線で解説された講演の模様をお届けします。

ゲームを巡るガイドラインの変化

本講演のスピーカーを務めるのはシティライツ法律事務所の弁護士であり、大のゲーマーでもあるという前野孝太朗氏。

「法律監修は日中にゲームが出来て嬉しい仕事なので是非依頼してほしい」とユーモアを交えて自己紹介した前野氏

ゲームに関するドキュメントは「利用規約」や「プライバシーポリシー」、そして比較的新しい「配信ガイドライン」など既に数多く策定されています。ここに新たに「ゲーム大会用ガイドラインが必要なのか?」といった疑問が本講演の主題のひとつに挙げられます。

有志がゲーム会社が提供するタイトルを使用して「大会を開きたい!」と考えた場合に「大会を開くことは法的にOKなのか」、そしてコンテンツホルダーは「どういったルールを決めるべきなのか、あるいは決めなくて良いのか」を考えていきます。

セッションではまずゲームの使用と法的問題に関するガイドラインについて経緯を確認。ゲーム実況動画の投稿が盛んになり始めると一部では公式に認定する制度は導入されていたものの、ある程度は“黙認”と言える状況に。しかし2018年に任天堂が「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公表すると、追従するように多くのメーカー・開発者がガイドラインを設けるようになり、配信者としても活動しやすい状況になりつつあります。

このガイドライン制定はゲーム業界のみならず[法曹業界でもインパクトのある発表だったとのこと

そして2023年には任天堂から「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」が公表され、こちらも大きな話題を呼びました。

任天堂のゲーム大会向けガイドラインを整理すると「申請不要で開催できる大会」「申請のうえ許諾を得て開催できる大会」、そして「申請をしても開催できない大会」の条件が明記されているほか、出場料や観戦料についても上限を定めて細かく規定されています。

会計についても詳細な記載があり、徴収する出場料および観戦料は大会運営費用に充てる目的のみに利用して景品の購入に充ててはいけないこと、開催費用に関する会計書類を誰もが閲覧可能な形式で直ちに公開することなどが求められています。

他にも任天堂のゲーム大会のガイドラインでは対価やスポンサー、大会動画の収益化、大会名など多岐に渡る項目で詳細に遵守事項が定められているため、コンテンツホルダーの立場としてガイドラインの必要性を考えている方、そしてその策定内容について疑問を持っている方も多いのではと前野氏は分析しました。

ゲーム大会の法的な問題の整理

ここからは第1章としてゲーム大会の法的な問題について整理。前野氏は問題となり得る法律として以下の4つを挙げました。

  • 著作権法

  • 刑法(賭博罪)

  • 風営適正化法

  • 景品表示法

著作権法については、ゲームは著作物のため、コンテンツホルダーに許諾を得ることで対応が可能と比較的シンプルです。しかし、刑法(賭博罪)については参加費から賞金を出すと賭博行為になってしまうため、無料参加や運営費への充当を行うことで抵触する可能性を回避し、賞金を出す場合でもスポンサーからの提供など第三者の協力が必要になります。

賭博とみなされる条件

また、ゲーム大会のために施設にゲーム機を備えて来場者にプレイさせる行為は風営適正化法上の風俗営業(ゲームセンターなど営業)に当たる可能性が考えられます。こちらは完全オンライン形式やPC・スマホなど汎用ゲーム機でない場合は該当しないほか、JeSU(日本eスポーツ連合)が「入場料を大会設営費用のみに充てる場合はこの問題に該当しない」ことを確認し、ガイドライン化することでクリアしています。

そして自らが提供する商品やサービスの景品を規制する景品表示法については、ユーザーが開催する大会では「自らが提供する」部分に該当しないため今回想定しているケースには関係しませんが、コンテンツホルダーが大会を開く場合に注意すべき法律です。

4つの法律に対する問題の整理

こうしたゲーム大会の法律問題については過去にも何度か動きがあり、2016年9月には2つのノーアクションレター(法令適用事前確認手続)で「『有料ユーザー以外の者が成績優秀者として賞金を獲得する可能性は低い』ゲームは賞金が景品類に該当する」ことが確認されました。

この条件がほぼすべてのゲームに当てはまるとして「日本の法律ではゲーム大会に賞金が出せない」という運用が広まり、2017年頃から制度の整備が提言されてきました。

こうした動きを受けて2018年には経済産業大臣が「プロプレイヤーが参加する興行性のある大会」について、賞金が「仕事の報酬」として受け取れるとの国会答弁があり、ノーアクションレターによる確認も取れたことで“大会で賞金が出せる”ようになっていることが解説されました。

予選大会の実施や過去の大会実績などで出場者を選抜することで「競技性及び興行性の向上に資する者」であることを「類型的に保証する」ことに繋がる

ガイドライン策定のポイント

ここまで解説されたゲームと法律にまつわる問題についてはゲーム大会の主催者が配慮すべき点が多く、コンテンツホルダーの立場からは少し関係性が薄いようにも思われます。

そのため、ゲーム大会については著作権に関する許諾のみ行い、配信ガイドラインにて法令を遵守するよう呼びかけるだけで新たにガイドラインを策定せずとも十分であるという考え方も可能かもしれません。

しかし、前野氏はすべてをユーザーにゆだねた場合は「自社タイトルが犯罪(賭博)に使用されるリスク」が生じるだけでなく、規制が浸透していない現状では「意図せず法令違反のペナルティを受けてしまう」ユーザーが発生しかねず、ユーザーが委縮してかえってゲーム大会が行いにくくい状況を招きかねないと指摘。ある程度はガイドした方が無難ではないかとの見方を示しました。

ここからは実際に大会ガイドラインを策定する際のポイントが順番に解説されました。まず大前提として一般に大会を許諾する場合はその旨の記載が必須となり、刑法・風営適正化法対応を含むルールの設定など遵守すべきルールについては任意ではあるものの記載すべき事項となります。

①参加料

参加料については講演の前半で確認されたように「大会設営費に充てること」「景品への充当は禁止」であることを必ず記載すべき点です。より厳格な運営を求める場合は会計書類の公開を必須にすることも検討できます。

参加料徴収の可否や上限についても高額賞金大会がコミュニティに悪影響を与える可能性を考慮して方針を示すべきポイントです。

②景品(賞金)

参加料と同様に景品も可否や金額の上限を定めることが考えられ、「景品を出す場合は個別の問い合わせを求める」ことも可能です。また、公序良俗に反するものや金融商品を禁止してトラブルを防止することも必要です。

③大会主催者の対価

参加料から得ることはできませんが、協賛金や観戦料などを通じて主催者が価を得られるか否かを定めます。同様に配信の収益化についてもOKかNGかの設定が必要で、許諾する配信プラットフォームを限定したり得られる収益の上限を定めたりという形式での対応も考えられます。

④大会名や掲出すべき事項

ユーザー大会はゲーム会社が協賛していないことを明記するよう定めることが重要です。協賛した公式大会と取られる可能性がある大会名などは避けるべきで、直接的なゲーム名やロゴの使用許可についても前野氏は「線引きや書き方が難しい」とした上で、細かい検討が必要になるとの見方を示しました。

⑤ゲームに関する知的財産権

大会の告知画像などにゲームキャラを使用するケースも場合によっては著作権侵害と考えられるため、ガイドラインに盛り込むべきポイントです。特に知財を使用可とする場合は“個別の問い合わせを受けない”ためにガイドラインを策定している以上、「いつ」「何が」「どのように」使用できるかを明確にすることでユーザーにもポジティブであり、対応コストを下げることに繋がります

⑥承認制

承認制度についてはあらゆるパターンが考えられ、個別の承認を行う場合から、必要な届出があれば承認不要となるケース。そしてガイドライン内であれば特別な手続きを不要とすることも可能で、これらを組み合わせることも考えられます。

全承認制は運用負担が大きく、体制を整える必要がある制度です。法人利用や営利利用のみ承認制する方式も想定され、厳しいガイドラインを設定してから承認時にコミュニケーションしながらある程度は許容していくという柔軟な運用方式も紹介されました。

「配信ガイドライン」は個人であれば基本的にフリーの形式で、法人や営利企業なら届け出や承認を要するという形式も多い

⑦禁止事項

営利目的での開催を禁ずるなど、禁止事項について明記します。法令違反や海賊版の使用など想定し得るケースは実にさまざまで、短く「不適当と判断するもの」とまとめられてしまうこともありますが、ユーザーにとって不明瞭な点を少なくするためにも出来るだけ具体的に列挙して「不適当」の範囲を小さくする方が良いと解説されました。

ユーザーに分かりやすいガイドラインを

ここまでゲーム大会で問題となる法律の要点とガイドライン策定時に盛り込むべきポイントが解説されてきた本セッション。

冒頭の「ゲーム大会用ガイドラインが必要なのか?」という疑問に立ち返ってみると、最終的にはコンテンツホルダーそれぞれで判断されるポイントですが、前野氏は「大会をやっても良いとしながら何のガイドも示さないというのは止めるべき。というのが私の個人的な考えですね」と述べ、注意すべき点をガイドラインとして示すことの効果を強調しました。

また、ゲーム大会用のガイドライン策定は法律法令の遵守と共に「ユーザーが大会を開催しやすくすること」が主眼になるため、ユーザーが理解しやすい・不安を与えない内容にすることが重要です。重厚長大なガイドラインはかえって不安を与えてしまいかねないため、普段からユーザーとコミュニケーションしている視点を大事に、弁護士と相談をしながら分かりやすい内容にしていくべきであるとも語られ、セッションは盛況のうちに終了となりました。

弁護士に任せると長くなってしまうので、弁護士任せにしない方が良い」と弁護士である前野氏ならではの視点での注釈も
《ハル飯田》

よく遊び、よく喋る関西人 ハル飯田

1993年、大阪府生まれ。一旦は地元で公務員になったものの、ゲームが好きすぎて気付いたらフリーライターに。他メディアではeスポーツ選手や競技シーンの魅力を発信することに注力したり大会でキャスターを務めたりもするのだが、インサイド&ゲムスパではもっぱら好きなゲームについて語ることで安らかな気持ちになっている。

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