eスポーツが拓く共生社会―バリアフリーから不登校支援、高齢者の健康づくりまで【東京eスポーツフェスタ2025】 | GameBusiness.jp

eスポーツが拓く共生社会―バリアフリーから不登校支援、高齢者の健康づくりまで【東京eスポーツフェスタ2025】

「東京eスポーツフェスタ2025」の会場にて開催されたセミナー「みんなが活躍できるeスポーツ」の模様をレポートします。

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eスポーツが拓く共生社会―バリアフリーから不登校支援、高齢者の健康づくりまで【東京eスポーツフェスタ2025】
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eスポーツの普及と関連産業の振興を目的としたイベント「東京eスポーツフェスタ2025」が、今年も東京ビッグサイトで開催されました。会場では、eスポーツ関連産業の展示や体験エリアが展開され、家族連れから業界関係者まで、幅広い層がeスポーツの可能性に触れる機会となりました。

本記事では、その中でも初日である1月10日(金) に行われたセミナー「みんなが活躍できるeスポーツ」の模様をレポートします。

忙しい方向けに2つのポイントで整理

本セッションでは、「eスポーツが持つ社会的可能性」と、「より多くの人々が参加できる環境作りの重要性」が非常に重要なテーマとして議論されました。

eスポーツが実現する共生社会の可能性

eスポーツは、年齢、性別、障がいの有無を問わず、誰もが参加できる共生社会の実現を後押しするツールとして注目されています。セミナーでは、障がい者支援や高齢者の健康促進、不登校支援の事例が共有され、eスポーツを通じたコミュニケーションや社会参加の重要性について解説されました。

具体的には、障がい者が協力しながらプレイするバリアフリーeスポーツや、不登校児がオンラインでの交流を通じて復学の意欲を取り戻す取り組みが挙げられました。

社会的課題を解決するための未来のアクション

講演者たちは、eスポーツを広めるためには「体験の場」を増やし、教育や自治体との連携を強化する必要があると提言。また、親や教育者を含む幅広い世代に向けて、eスポーツが単なる「遊び」ではなく、成長や社会貢献の機会を生むツールであることを理解してもらうための啓発活動が求められていることが示唆されました。

さらに、行政や企業のトップへの働きかけを通じて、政策や予算面での支援を拡大し、より多くの人々がeスポーツを通じて新しい可能性を発見できる環境作りについても議論が繰り広げられました。

登壇者紹介

本セッションの登壇者を紹介します。

加藤 大貴氏
ePARA 代表取締役

愛知県出身、埼玉県戸田市在住。二児の父。国家公務員(裁判所職員)として8年間勤務した後、福祉業界に転職。福祉分野での経験を活かし、障がい者の活躍支援を目的とした「ePARA」を創業。年齢・性別・障害の有無を問わず、交流を促進する「バリアフリーeスポーツ」の提唱者として知られる。

これまでに、地方自治体や民間企業と連携し、「バリアフリーeスポーツ企業交流戦」や「障害者施設等対抗オンラインeスポーツ大会」の企画・運営を手掛ける。また、「障害者就職オンラインフェスティバル」の実施や、eスポーツ特化型ビジネスコンテスト「esports BizContest」での優勝をはじめ、様々な分野で高い評価を得ている。

柴田 真理子氏
Altcom 代表取締役

1970年生まれ、福岡県出身・在住。二児の母。自身の息子が中学生時代に不登校となり、ゲーム依存や家庭内暴力に発展した経験を持つ。自身の経験を活かし、不登校やゲームトラブルに悩む家庭を支援するため、精神保健福祉士やeスポーツ協会と連携し、親子向けのメンタルサポートおよびオンライン学習サポートを行う「Altcom」を設立。ゲームを敵とするのではなく、「親子の最強コミュニケーションツール」として再評価し、eスポーツを活用した不登校支援を推進している。

また、柴田氏は不登校支援の一環として、子どもたちの目の特性に着目し、引きこもり、多動症、識字障がい、学習障がいなどを抱える子どもに向けたサポート眼鏡「チャクラグラス福岡」や目のケアサービス「アイケアLaBo福岡」を運営している。

川崎 陽一氏
日本アクティビティ協会 理事長

1994年、中央大学卒業後、バンダイに入社。マーケティング業務に従事する傍ら、高齢者施設でアクティビティを実施するボランティア組織を結成。これがのちの日本アクティビティ協会の母体となる。2003年にはバンダイグループの社内ベンチャー大会で入賞し、高齢者向けサービスを専門としたプレイケアを設立。同社の代表として、高齢者マーケットに特化したコンサルティング事業や医療法人・社会福祉法人を対象とした人材教育事業を展開している。

川崎氏は、「高齢者が心豊かに生活を楽しめる社会」を目指し、アクティビティを通じたケアの質の向上に取り組んでいる。また、高齢者の心身の健康を支える活動だけでなく、現場スタッフのスキル向上や働きがいを高める支援にも力を注いでいる。

トンピ?氏
eスポーツキャスター

1993年生まれ、東京都出身。FPS『AVA』のネットカフェイベントをきっかけに2009年よりMC活動を開始し、その後、公式大会実況・解説として活動の幅を広げる。特に『レインボーシックス シージ』や『BATTLEFIELD 4』、『プロ野球スピリッツA』、『#コンパス』、『フォートナイト』、『第五人格』など、さまざまなジャンルの公式キャスターを務めた経験を持つ。高校時代にキャリアをスタートし、2025年現在、キャスター歴は15年以上に及ぶ。

2021年にはFocusを設立し独立。代表取締役としてeスポーツイベントの企画運営やコミュニティ拡大に尽力するほか、Unreal Engineを活用した開発会社の創設やAIアートバトルの普及など、新たな分野への挑戦も行っている。さらに、教員免許を活かした教育活動にも注力するなど、多岐にわたる分野で才能を発揮。31歳という若さながらも、1300回以上のイベント出演を誇り、日本eスポーツキャスター界での第一線を走り続ける。

注目の議題を3つピックアップ

「みんなが活躍できるeスポーツ」というテーマで開催されたセッションでは、多岐にわたる観点からeスポーツの可能性が語られました。その中から特に注目すべき議題を3つピックアップします。

eスポーツを通じた障がい者支援とバリアフリー社会の実現

セッションの中で、加藤氏が紹介した「バリアフリーeスポーツ」は、特別なルールやデバイスを用いて、障害を持つ方々も競技に参加できる環境を整備するものです。

例えば、片手しか使えないプレイヤーがパートナーと協力してゲームを進めたり、視覚障害のあるプレイヤーが音声や触覚を頼りにゲームを楽しむ事例が紹介されました。

加藤氏は、eスポーツが単なる娯楽の枠を超え、障害を持つ方々にとって自己表現や社会参加のツールとして機能する可能性を強調しました。また、これらの活動を支える企業や団体との連携によって、イベント開催や技術開発が進み、より多くの人が競技を楽しめる未来を目指していると述べました。

「本気で遊べば明日が変わる。」という理念のもと、eスポーツを通じて新しいコミュニティの形成を目指す取り組みが期待されています。

不登校支援におけるeスポーツの活用

柴田氏は、自身の息子が不登校になり、家庭内でのゲームトラブルを乗り越えた経験を語り、不登校支援におけるeスポーツの可能性を訴えました。

柴田氏は、親がゲームを通じて子どもと対話を重ねたことで、家庭内の関係性が改善され、子ども自身が学校復帰への意欲を持つようになったエピソードを共有。そして、ゲームは単なる娯楽ではなく、不登校の子どもたちが社会とつながるための貴重な手段となり得ると述べました。

また、不登校の子どもたちを対象としたeスポーツ大会の成功事例では、初対面の子どもたちが互いに協力し合い、学校では得られない経験や社会人とのつながりが、子どもたちの将来への展望を広げるきっかけとなったとのことです。

高齢者の健康増進と社会参加を支える健康ゲーム

日本アクティビティ協会の川崎氏は、高齢者の健康増進と社会参加を促進する取り組みとして「健康ゲーム」を紹介しました。この活動の核となるのが、「健康ゲーム指導士」制度です。

川崎氏によると、指導士は高齢者にゲームを教える担い手として重要な役割を果たしており、全国で約5,000名が活動中とのこと。指導士は、自治体や地域のコミュニティと連携しながら、高齢者が初めてでも楽しめる環境を整備し、ゲーム体験を通じて新しいつながりや自信を育むサポートを行っています。

特に強調されたのは、高齢者の健康を維持するための「フレイル予防」の一環としてのゲーム活用です。ゲームを通じた交流が外出のきっかけとなり、孤立しがちな高齢者が地域社会とのつながりを持つようになる効果が期待されています。

例えば、昨年度の「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」では、eスポーツが正式種目に採用され、全国から高齢者チームが参加しました。試合を通じて他地域の参加者と交流することで、高齢者が新たなコミュニティを形成する契機となりました。

川崎氏は、「eスポーツは世代や障害の有無を問わず、すべての人が楽しめるツールであり、地域共生社会の実現に寄与する可能性を秘めています」と語り、健康ゲームのさらなる普及に意欲を見せました。

まとめ:来年は後半のディスカッションに期待したい

セッション中に柴田氏が強調していた「ゲームは敵ではなく味方」というメッセージは、ゲームに対する固定観念を打ち破り、多くの親や教育者が子どもたちの可能性を引き出すためにeスポーツを活用する後押しとなるでしょう。

時間の都合上、仕方がないことではありましたが、前半の事例共有に時間を割いたため、後半のディスカッションが十分に行われなかったことに勿体なさを感じました。

ここから先の議論については、私たちメディアが取材を通して深めていくことになるでしょう。

《Ogawa Shota》

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