自治体×eスポーツの現在地―各地で進化する行政主導の取り組み…eスポーツビジネス事例を学ぶ【パブリックセクター編】 | GameBusiness.jp

自治体×eスポーツの現在地―各地で進化する行政主導の取り組み…eスポーツビジネス事例を学ぶ【パブリックセクター編】

地方創生から国際交流まで、その取り組みは多岐にわたっています。

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自治体×eスポーツの現在地―各地で進化する行政主導の取り組み…eスポーツビジネス事例を学ぶ【パブリックセクター編】
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本誌e-Sports Business.jpでは、eスポーツ領域での新規事業開発に関する最新動向をお届けしています。今回は、注目を集める自治体によるeスポーツ事業に焦点を当てます。地方創生から国際交流まで、その取り組みは多岐にわたっています。

常設施設を核とした地域活性化モデル

能登半島の入り口に位置する人口約2万人の石川県羽咋市は、新たな取り組みを始めています。eスポーツ事業を展開するGLOEの運営のもと、複合施設「LAKUNAはくい」を拠点にスタートした「HAKUI esports City Project」は、eスポーツを通じた地域活性化の新しいモデルケースとなっています。

羽咋市「Challenge Day 2024」の様子

LAKUNAはくいには、eスポーツスタジオ、カフェスペース、屋内公園などを併設。2024年7月のグランドオープン以降、すでに10万人以上が来場し、eスポーツスタジオだけでも1300人以上が利用するなど、早くも成果を上げ始めているといいます。

特徴的なのは、次世代プロゲーマーの育成から小学生向けプログラミングセミナー、高齢者のフレイル予防まで、多世代型の展開を目指している点。2024年11月には、石川県出身であり『鉄拳8』で世界3位に輝いたdouble選手を招いたキックオフイベントを開催し、地域住民との交流を通じて、eスポーツの新しい可能性を示しました。


eスポーツに注力する群馬県

群馬県は、全国に先駆けて2020年にeスポーツ・新コンテンツ創出課(現:eスポーツ・クリエイティブ推進課)を設置しました。eスポーツを産業振興のツールとして位置づけ、複数の事業を展開しています。

2021年からは「GUNMA LEAGUE」という企業対抗eスポーツリーグを開催。世代やセクションを超えた社員間コミュニケーションの活性化、企業の認知度向上を目指しています。今年度は予選を8ブロックに分け、富岡製糸場での決勝大会開催を予定するなど、地域との連携も図っています。

また、eスポーツ周辺産業の育成にも力を入れています。「全日本eスポーツ実況王決定戦」は、実況者という専門人材の育成を目的とした全国初の取り組み。「U19eスポーツ選手権」では、都道府県や学校の枠を超えた19歳以下の若者たちが競い合います。今年11月にはGメッセ群馬で両大会が開催されました。

群馬県の取り組みを支える組織として、群馬県eスポーツ連合(gespo)があります。今年4月時点での取材では、50を超える県内企業が賛助会員として参画。「eスポーツに参入できない業種はない」という考えのもと、観光や地域産業との連携を進めています。


国際交流の場として進化

2021年、韓国政府の主導で始まった東アジアeスポーツチャンピオンシップは、eスポーツを通じた国際交流の新しいモデルとして着実に発展を遂げています。

当初は日本、中国、韓国の3か国による対抗戦としてスタート。2022年には中国・上海を配信拠点としたハイブリッド開催となり、日本代表が初の総合優勝を果たしました。2023年には韓国・麗水市で初の完全オフライン開催を実現し、日本代表は2連覇を達成。そして2024年の大会では香港が加わり、4つの国と地域による対抗戦へと規模を拡大しました。

日本eスポーツ連合 公式サイトより

競技だけでなく、現地の食文化体験やジャイアントパンダ繁殖研究基地の見学など、文化交流プログラムも充実。若者の国際交流の新しい形としても期待が高まります。

パブリックセクターならではの強み

自治体によるeスポーツ事業には、いくつかの共通する成功要因が見えてきます。

まず、地域特性を活かした展開です。羽咋市は複合施設を核とした多世代交流の場づくり、群馬県は製造業が多い特性を活かした企業連携と、それぞれの地域に合わせたアプローチを選んでいます。

また、多様なステークホルダーとの連携も重要です。地域金融機関との協力、教育機関との連携、プロチーム・選手との協働など、行政ならではの信頼性を活かした取り組みが可能となっています。


今回紹介した羽咋市と群馬県の事例は、地方自治体によるeスポーツ事業の一例であり、全国各地ではそれぞれの地域特性や課題に応じた取り組みが進んでいます。

大阪市浪速区では、2024年11月に南海電鉄グループのeスタジアム社と包括連携協定を締結。eスポーツを通じた次世代人材の育成や地域教育の活性化に加え、メタバース空間を活用した防災訓練など、従来にない取り組みを開始しました。

墨田区では、プロeスポーツチーム「INSOMNIA」とiU 情報経営イノベーション専門職大学が連携し、公民学連携のプロジェクトを展開。地域密着型の活動を通じたファンコミュニティの形成や、次世代人材の育成に取り組んでいます。

パブリックセクターによるeスポーツ事業の意義は、単なる大会やイベントの開催を超え、地域活性化や産業振興、人材育成など、具体的な行政課題の解決につながる事例が生まれています。各地の取り組みから見えてくるのは、その地域ならではの資源や特性を活かした展開方法の重要性です。

民間企業や教育機関との連携も成功の鍵となっており、行政の信頼性、企業のノウハウ、教育機関の専門性など、それぞれの強みを活かした運営体制の構築が求められます。地方自治体がeスポーツに取り組む際は、まず地域の実情と課題を見極め、それに応じた具体的な目標設定を行うことが第一歩となることでしょう。

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