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KADOKAWAが開発中のWindowsPC用ゲームコンストラクションソフト『アクションゲームツクールMV』は、「OPTPiX SpriteStudio(以下、SpriteStudio)」のプロジェクトデータのインポート機能を標準でサポートしています。なぜその機能が採用されたのか、そして「SpriteStudio」によってゲーム制作がどのような広がりを見せるのか、『アクションゲームツクールMV』の主要開発メンバーおよび、「SpriteStudio」開発元のウェブテクノロジ社のスタッフにお話を伺います。
インタビュイー(4名)
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※以下、敬称略
“事後報告”から始まったコラボレーション
──まずは改めて、『アクションゲームツクールMV』がどんなものについてご説明下さい。
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最上すでにツクールシリーズのひとつとしてリリースされていた『アクションゲームツクール』(2009年・エンターブレイン)を、いまの時代に合わせてもう一度やろうと。現在Steamでリリースされているタイトルの6~7割がアクションゲーム……という当社調べのデータもあって、そこに向けてプログラミングの必要なしでアクションゲームを作れるツールを提案しようと企画しました。
──企画自体はいつから動いていたのでしょうか?
最上2年半前くらいですかね。当初はアクションゲームツクール内ですべて完結させるつもりだったのですが、いざ制作してみると、グラフィック関連がネックになることがわかりました。
──というと?
最上そもそもグラフィックを作成すること自体、ユーザーさんの労力的に大変だし、そこに僕らが一から作ったツールを用意したとしても、やはりすでに販売されているグラフィックツールに追いつくのは厳しいなと。
──当初は「2Dグラフィックだからなんとかなるだろう」という目論見だったのでしょうか。
最上本当に初期の段階では「スーパーファミコンくらいのドット絵が動けば」という想定でしたが、実際にはもっと高解像度のグラフィックも使えることがわかったので、そうなるとちょっと我々だけじゃ無理だなと判断しました。であれば、すでにある優秀なツールの力を借りてやればいいじゃないかと、「SpriteStudio」を勝手に使わせてもらいました。
──勝手に(笑)。
浅井「SpriteStudio」はSDKをGithub上に公開していて「自由に使って下さい」としているので、その点は全然問題ありません。
最上「SpriteStudio」のプロジェクトデータを『アクションゲームツクールMV』にコンバートできるか検証したところ思いのほかすんなりできたので、「使わせてもらっていいですか?」と浅井さんに相談しました。順番逆なんですけど(笑)。
──連絡を受けて浅井さんはどう思われましたか?
浅井そもそも「組み込んだよ」という事後報告をいただくこと自体が珍しいんですけど、僕の中では『アクションゲームツクール』はビッグネームなので、使ってもらって単純に嬉しかったですね。ああ、すげえなと。
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──相思相愛だった……ということですね。
最上他にも海外のツールも試そうとはしたんですけど、正直な話、ライセンス面が厳しくて。「SpriteStudio」はライセンスがすごく緩いものだったので、とりあえず入れてみようかというところから始められたのが大きかったですね。
浅井そのへん、本当に何も考えてないです。
──ライセンスが緩いせいで困ることないのでしょうか?
浅井むしろ緩いおかげで、無茶な要求をされても「そこはDIYでお願いします」って回答できて便利かなと(笑)。ただ、僕らとしては、どんどん組み込んでもらってほしいという気持ちでいますので、ライセンスの緩さはこのままでいきたいなと。ただ、問題なく使えている人は、あんまりフィードバックをくれないのがちょっと不満です。
──“気軽に導入できる玄人向けツール”になっているようですね。
浅井不具合報告はあるんです。対応しても音沙汰がないので、その後どうですかって尋ねたら「無事に動いています、ありがとうございました」で終わり、みたいなケースがほとんどですね。本当は使用感について、もっと教えてもらいたいんですけど。その点『アクションゲームツクールMV』さんは、つねに最新のSDKに対応してくださってて、フィードバックも頻繁に頂けるのでありがたいですね。僕らは僕らでSDKや「SpriteStudio」本体を勝手にバージョンアップしているんですけど、ちゃんとついてきてくれるのもすごいなと。
畠山基本的には更新のみですが、SDKのバージョンアップによってプレイヤー側で挙動設定されたものがうまく表示されないことが何度かあったので、そのあたりは修正を加えています。
速度アップのために製品版リリースを延期
──『アクションゲームツクールMV』の製品版リリースは、当初発表されていた予定から二度の延期が発表されました。実際のところ、ここまでずれこんだ一番の原因は?
最上その都度の不具合修正に対応していたのはもちろんですが、もっとも大きいのは、処理の高速化と言いますか軽量化ですね。「ちょっと重い」というご意見が多かったので。
──それはエディターのことでしょうか?それともプレイヤー(制作したゲームの起動プログラム)の方でしょうか?
最上プレイヤーです。もともとお客様ごとの環境によってだいぶ差が出てしまうところがあったので、比較的、低いスペックのPCでも遊んでいただけるようになったと思います。エフェクトがいくつも重なってもある程度対応できるよう、プレイヤー自体を大幅に改修しました。現在は“プレビュー版”という形で通常版と同時提供していますが、今後はプレビュー版を正規プレイヤーとして一本化していきます。
──それは手間がかかってますね。開発者の皆さんの体感的に、どのくらい高速化が図れましたか?
畠山プロジェクトごとに結構違うんですけど……画面効果をものすごく使っているゲームだと、倍ぐらいは早くなってるんじゃないかなと。
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──派手な作りのものほど恩恵があるんですね。具体的にはどのようにして高速化を図ったのでしょうか?
畠山シェーダーの改修です。従来のプレイヤーはレイヤーが増えるごとに各レイヤーにシェーダーをかける仕組みだったのですが、それをまず破棄しました。そこをバツっと一回切って、軽い方式のかけ方を追加した、みたいな感じですね。
──見た目上の劣化なしで。
畠山はい。画面解像度が上がり過ぎると、処理速度的にちょっとあれですけど。あとはタイルまわりだとか、オブジェクト同士の壁判定あたりの処理の変更が、軽量化に大きく貢献しています。PCが高スペックの方はもともと気にならないと思いますが、中盤から必要条件ギリギリでプレイされてた方からは、やはりすごい軽くなったという感想をよくもらいます。
──現時点ですでに本格的なシューティングゲームも公開されていますが、新プレイヤーだったら画面上を弾が覆い尽くす弾幕シューティングもわけなく作れそうですね。
最上弾幕は……ちょっと厳しいです。
浅井「余裕です」って言わないとこがいいですね(笑)。
グラフィックがリッチなゲームほど「SpriteStudio」は本領を発揮する!
──先ほど解像度のお話がちらっと出ましたが、公開されている作品だとどのくらいのサイズが多く使われているのでしょうか?
畠山社内で作っているものはちょっと低めで320x240くらいなんですけど、ユーザーさんが作っている作品だと640X480や1280x720の作品も結構見かけます。『アクションゲームツクールMV』にはドットバイドットで2倍、3倍……と拡大表示する機能があるので、ドットがはっきり見えていいゲームであれば利用してほしいですね。
もちろん、最初からHDのゲームも可能
──1280x720用の絵作りができてそれが多くのPCでストレスなく動くというのは、ツールとして夢がありますね。
大野作るゲームが高解像度化するほど「SpriteStudio」としては願ったりです。
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──そうなんですか?
大野「SpriteStudio」のアニメーションデータは、作成時にオブジェクトを回転してそこに補完をかけているので、低解像度グラフィックのドットバイドットで拡大表示すると、どうしても潰れちゃうんです。もともと緻密な絵作りであれば、そこはまったく違和感なく表示されるんですけど。
──『アクションゲームツクールMV』によるゲーム制作で「SpriteStudio」を使うメリットという点では、たとえば画面フルサイズのアニメーションデータを背景として流すことも可能なのでしょうか?
大野そのあたり実は弊社でも検証済みです。弊社ホームページトップで使用しているアニメーションデータは、200くらいのパーツを加算減算使いまくってツール上で変形させまくって作られたものなんですけど、背景用に指定したレイヤーにそのまま貼り付けてサンプルゲームを動かしたら、処理速度面の違和感もなく、普通にゲームできましたね。
SpriteStudioを使えば、アクツクMVでカットインムービーが実現できるかも?
──「SpriteStudio」を使いこなせば、キャラクターだけではなく背景も凝ったアニメーション演出を簡単に実装できるということですね。で、グラフィックがシンプルなゲームを作る際には、ドット絵作成ツールで作った画像を『アクションゲームツクールMV』内でアニメーション化すればよい……と。
畠山レトロ風のサンプルゲームを作っている社内デザイナーからは「パレットアニメの機能を実装してほしい」って言われます。「そのうちね」といってやり過ごしていますが(笑)。
──パレットを前提とした絵作りはたしかに魅力的ですけど……それはやはり一部の世代の懐古趣味しか満たせないかもしれませんね。
大野そうですね。いまは“フルカラー万歳”な時代なので。
浅井「SpriteStudio」はこのあとシェーダーに対応するので、強引にパレットアニメーションを表現することも不可能ではなさそうです。でも、僕らが言うことじゃないけど、そこに関しては『アクションゲームツクールMV』の方で対応した方がいいんじゃないかな(笑)。しかしパレットアニメって…『アクションゲームツクールMV』を使っているユーザーさんの年齢層って、どんな感じですか?
最上そこまでしっかり統計は取れていないんですけど、見えている限りでは年齢層は高めですね。現状は「ドットアニメをちゃんと作れること」が、ツールを使いこなす際の前提条件になっている面があって、そうなるとやはり若者が入りにくいのかなというイメージです。
──そこに関しては、イラストメインの絵作りでも無理なくアニメーションさせられる『SpriteStudio』との機能連携が周知となれば、若い世代の方も入ってきやすくなりそうですね。
浅井いいフォローありがとうございますって感じなんですけど、そもそも『SpriteStudio』が若者向きのツールかっていうと、どうなんでしょうね。作ってるのがジジイたちなので(笑)。
──スマホゲームでも導入例が多いし、そこは謙遜しなくてもよいのでは。
浅井まあたしかに……ああ、『SpriteStudio』の勉強会を開催すると、若い子が結構きていますね。SpriteStudioのユーザーは若いのかも。
大野最近のインディーイベントを見ていると、いろいろなゲームエンジンを使って、若い方が気軽にゲームを作れるようになってきている流れを感じます。自分で絵を描く人が『アクションゲームツクールMV』を使って、これまでハードルが高いと思われていたアクションゲームをどんどん発表していけるようになるといいですね。
製品版リリース間近の『アクションゲームツクールMV』で、ゲーム制作生活を始めよう!
──『アクションゲームツクールMV』の今後の展開について、お話いただければと。
最上『アクションゲームツクールMV』は、2019年9月中旬くらいに、アーリーアクセス版から製品版に切替えて、まずはSteamで発売という形にさせていただきます。製品のパッケージ版は、2019年10月3日発売予定です。
──パッケージがすごく大きかったり、分厚いマニュアルがついていたりするのでしょうか?
最上パッケージはブルーレイソフトサイズで、中身はSteamの製品版と特典DLCのダウンロードコードが書かれた紙が入っています。
浅井えー、そうなんですか?
最上そこはコストの問題が……。
──ディスクがあれば良かったなとは思いますが、今後もオンラインでバージョンアップされていく……ということですよね。
最上当然、製品版リリース後も引き続きバージョンアップを行っていきます。その過程で、既に発表させていただいている、大掛かりなゲームが作りやすくなる“データベース機能”も開発を進めていきます。
──いずれ大規模なメトロイドヴァニア(探索要素のあるアクションRPG)も作れるようになるぞと。
最上メトロイドヴァニアに欠かせない、全体マップ表示のプラグインはすでに公開されています。
畠山現状は本当に基本的な機能しか入っていないので、要望があれば修正したり、あとはプログラムを書けるユーザーさんに改造していただければなと(笑)。
──プラグイン開発はツクールシリーズの華みたいなところがあるので、機能拡張には期待したいですね。ユーザーフォーラムはすでにあるんでしたっけ。
最上まだないですが、そこはやはり作りたいですね。あとはワークショップとか、プラグインや素材をユーザーさん同士で共有できたり販売できたりする場も必要ですね。あと、8月末あたりに『アクションゲームツクールMV』関連で大きな発表ができそうですので、ご期待いただければなと。
浅井『SpriteStudio』は、おかげさまで、個人向け、いわゆるパーソナルユースに向けたPersonal版を今年7月末にリリースしました。
──Personal版で作ったでアニメーションデータも『アクションゲームツクールMV』にコンバートできるんですよね?
浅井もちろんです。Personal版に対応しているバージョンは現状6.3ベースで、『アクションゲームツクールMV』でもすでにそのバージョンに対応済みとのことですので、理論上は問題なく。
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“PixelGameMakerMV(アクションゲームツクールMV)”の設定情報が追加されている
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アクションゲームツクールMV上で“壁判定(地形との当たり判定)”を設定。
アクションゲームツクールMV上でアニメーションの再生をプレビューできるなど、いたれりつくせり!
──しかも『アクションゲームツクールMV』のプレイヤーの性能が上がったことで、絵作りの段階で“やり過ぎ”を気にする必要もない、と。
大野ほぼほぼ制限ない感じですね、あとは先ほども言ったように、ドットバイドットにこだわらなければ大丈夫です(笑)。例えば、作り方として、ドット絵ゲームでもエフェクトだけは『SpriteStudio』で……という使い方も、ごく自然にできるんじゃないかなと思います。
──いよいよ“両軸”がそろって本格的に動き出す、ということですね。最後に、これからゲームを作ってみたいユーザーさんに、ひとこと。
最上プログラムの知識なしでアクションゲームを作れるツールということで、絵描きさんの方にとっても最適なツールだと思っております。プロジェクトのビルド(パッケージデータ出力)以外の機能をフルに使える、30日間の無料体験版を近々出しますので、まずはそちらを触ってみてください。
畠山まずは使っていただいて、ご意見をどんどんいただければと。これからさらに“ユーザーさんがやりたいことができるツール”にしたいと思っていますので、ご要望をお待ちしております!
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『アクションゲームツクールMV』
OPTPiX SpriteStudio Personal
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●OPTPiX SpriteStudioアニメーションコンテスト 特設ページ
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