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世界27の国・地域で事業を展開し、ゲーム制作におけるあらゆるソリューションをワンストップで提供する、ゲーム開発支援のリーディングカンパニー「Keywords Studios」。
これまでに『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』『ヴァルキリーエリュシオン』のアートアセット制作や『League of Legends』のローカライズなど、名だたる作品の開発をサポートしてきました。日本のゲームとしては、他にも、数々の賞を総なめにしたフロム・ソフトウェア『ELDEN RING』のアートアセット制作・ローカライズを支援。同作の世界的大ヒットを支えた陰の立役者といえる存在です。
2023年9月21日から24日にかけて開催された「東京ゲームショウ2023(以下、TGS)」のビジネスソリューションコーナーには、日本支社であるキーワーズ・インターナショナルがブース出展を果たしました。
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Keywords Studiosは「アートアセット制作」、「ゲーム開発」、「音声収録(吹き替え)」、「音響制作」、「翻訳」、「デバッグ(機能・言語)」、「カスタマーサポート」、「マーケティング」という8つのソリューションを提供しており、TGSのブースでは営業担当者や各サービスの責任者からサービスの説明などを受けることができました。
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GameBusiness.jpでは、TGSに合わせて来日したKeywords StudiosのCEO ベルトラン・ボドソン氏を直撃。日本を含め、グローバルで更なる事業拡大を目指すKeywords Studios(以下、キーワーズ)の事業内容や強み、今後の展望をうかがいました。なお、取材にあたっては日本拠点 キーワーズ・インターナショナルの代表取締役であるハンサリ・ギオーム氏に通訳を務めていただいています。
ゲームのグローバル展開をあらゆる面からサポート
――まずはご経歴をお聞かせください。
ベルトラン・ボドソン氏(以下、ボドソン)私はベルギー生まれで、今はイギリスに住んでいます。キーワーズは全世界に多くの拠点を持っていますので、飛行機で各地を飛び回るような毎日です。
私のキャリアはAmazon.com, Inc.から始まっており、動画配信サービス「Prime Video」の前身となるDVDのレンタルビジネスに携わっていました。後に独立して起業し、UGC(ユーザー生成コンテンツ)サービスやDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションの提供、リテールなどを経て2021年にキーワーズのCEOに就任しました。
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――東京ゲームショウを視察してどのような感想を持ちましたか。
ボドソンTGSを訪れたのは今回が初めてですが、以前から訪れてみたかったので格別の思いを抱いています。キーワーズとしても、私個人としても、日本は非常に重要なマーケットだと認識していますので、パートナー企業はもちろん、プレイヤーの皆さんのゲームへの反応をこの目で確認できて嬉しいですし、多くのものを得られました。
近年は日本のゲームメーカーからもAAAタイトルが多くリリースされるようになりましたので、私たちはその開発をサポートできることを嬉しく思っています。
――キーワーズは「Create」、「Globalize」、「Engage」の3つの部門が事業の軸になっているとうかがいました。事業内容についてお聞かせください。
ボドソンはい。まず、キーワーズは2023年10月現在、世界27の国・地域に拠点を持っており、グローバルで1万3,000人ほどの従業員を擁しています。成長率も非常に高く、毎年20%ほどを維持しています。
「Create」部門は20以上のスタジオで構成されており、4,000人ほどのスタッフが所属しています。ゲーム開発やアートアセット・音響制作などを主に請け負っており、ゲームソフトフルパッケージの開発はもちろん、部分的な開発補助も行えます。日本では、Wizcorpというスタジオを拠点として使っています。
「Globalize」部門は、開発後のポストプロダクションを担います。グローバルなパブリッシングはもちろん、QA(Quality Assurance/品質保証・デバッグ)、LQA(Linguistic Quality Assurance/言語品質保証・翻訳)、音響制作もここに含まれます。
世界中に拠点を構えていますので、時差の違いを生かして24時間対応できるのも強みのひとつです。また、QAやLQAを速やかに行うための自動化ツールを用意していますので、コスト削減のお手伝いもできるでしょう。
「Engage」部門は、マーケティング、プレイヤーの方たちとのやりとりを含むコミュニティの構築と維持、広告動画の作成、カスタマーサポートなどを担います。
この3つの部門で、ゲーム制作から発売後にいたるまでのサイクルをすべてサポートしています。
これまでに、グローバルのゲーム企業トップ25社のうち、24社に幅広いサービスを提供している実績があります。
AIを活用した3つの製品がリソースの強化に大きく貢献
――近年は、日本のゲームソフトも多言語に対応した海外展開が活発になっています。日本のゲームにどのような印象を持っていますか。
ボドソン任天堂、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、スクウェア・エニックスなど、日本のゲームメーカーはゲームの歴史を作り上げてきたといっても過言ではありません。そして、今日もとても大きな役割を果たしていると思っています。
私自身、そして実は私の娘も日本のゲームが大好きで、先日はNintendo New York(ニューヨークにある任天堂のオフィシャルショップ)でたくさんのグッズをねだられました(笑)。
そして、私たちはそんな日本市場で日本のゲーム企業がゲームを海外のプレイヤーに届けるお手伝いをしたいと常に思っています。2022年に発売され、世界的な大ヒットを記録した『ELDEN RING』のアートアセット制作やローカライズをキーワーズがお手伝いできたことは、今も私の誇りのひとつです。
――ありがとうございます。日本支社の代表であるハンサリさんは、日本のゲームにどのような印象を持っていますか。
ハンサリ・ギオーム氏私は日本のゲームを遊んで育ちましたので、思い入れは格別です。海外企業との競争がますます激化し、グローバルでゲームをヒットさせることの難易度が上がってきている中で、『ELDEN RING』のような日本のすばらしいゲームを世界に届ける架け橋となるべく、最先端のテクノロジーを生かして今後もサポートさせてもらいたいと思っています。
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――近年、特に力を入れているサービスや技術をお聞かせください。
ボドソンゲーム開発を強力にサポートする3つのAI製品を紹介します。
ひとつ目は、2022年に傘下に迎えたメルボルンのスタジオ・Mighty Gamesが提供する「Mighty Build and Test」です。これは、ゲームのテストプレイと翻訳作業をAIで自動化できるツールです。昼に制作したゲームのテストプレイを夜間に自動で行えるので、翌日に出社したらもう問題点が洗い出されていることでしょう。
人のテスターだけでは実現できないサイクルですので、スケジュールの短縮につながります。単純なテストプレイはAIに任せ、クリティカルなバグの洗い出しや感覚的な部分(ゲームバランスに関するものなど)に関しては、人のテスターの力も借りるのがよいと思います。
以前はUnityにのみ対応していましたが、現在ではUnreal Engineやいくつかの自社エンジンにも対応しています。
――翻訳作業においては、どのように活用できるのでしょうか。
ボドソン大半のゲーム開発現場では、翻訳を行う際、翻訳者の手元にはビルドがありません。まだそこまでできていないからです。しかし、「Mighty Build and Test」はテキストが入る箇所のスクリーンショットを登録しておく機能があるので、翻訳者はビルドが無くとも各テキストの文脈を正しく読み取れるようになります。
さらに、翻訳した文章が既定の文字数を超過した場合にはアラートが出ますので、「翻訳されたテキストを組み込んでみたらテキストがオーバーフローしてしまっていた…」という事態を未然に防ぐことができます。
次に紹介するのは、翻訳管理プラットフォーム「KantanAI」です。この18カ月で、28タイトル、35ヶ国語、3,000万ワードの翻訳をAIによるオートメーションでサポートしました。実は今、グローバル企業のとある大きなプロジェクトをお手伝いしているのですが、この「KantanAI」はそこでも30万以上のワードを管理して活躍しています。
最後の製品はプレイヤーサポートプラットフォーム「Helpshift」です。モバイルとコンソール両方に対応したAIbotで、プレイヤーからの問い合わせに迅速に対応します。決済に関わるトラブルや相談は人によるサポートの方が確実ですが、FAQに類するような質問への回答はこのプラットフォームに任せることで人的リソースの負担を減らせます。
「Mighty Build and Test」や「KantanAI」といったツールはゲームのソースコードにアクセスする必要がありますので、私たちはまずパートナー企業と確かな信頼関係を築くことをとても大切にしています。その結果としてこうしたツールを活用できているわけですので、信頼関係の構築・維持は今後も大切にしていきます。
――最後に、日本のゲームメーカーにメッセージをお願いします。
ボドソン日本の拠点であるキーワーズ・インターナショナルには400名以上のスタッフが常駐しており、「アートアセット制作」、「ゲーム開発」、「音声収録(吹き替え)」、「音響制作」、「翻訳」、「デバッグ(機能・言語)」、「カスタマーサポート」、「マーケティング」という8つのソリューションすべてをサポートしています。
日本市場には今後もより一層の投資をしていきたいと考えており、その一環として運営型ゲームのサポートも24時間体制で行っています。
キーワーズの経営理念である「Imagine More(もっと想像を)」という言葉には、私たちの技術と才能を組み合わせることでゲームメーカーを強力にサポートし、クリエイターの皆さんがクリエイティブに専念できる時間を増やす、という意味が込められています。
私たちは、今後も日本のゲームソフトがより優れたプレイヤー体験を提供できるよう努めていきます。
Keywords Studios(ダブリン本社)公式サイト