2024年9月26~29日の間、幕張メッセにて、日本最大のゲーム展示会「東京ゲームショウ2024(TGS2024)」が開催されています。
eスポーツチームのZETA DIVISIONは、同チームとしては初のブース出展を実施。人気選手やインフルエンサーらが登壇する特別ステージやスポンサー企業とのコラボレーションを紹介するコーナーが設けられました。
ZETA DIVISIONが40小間という大型ブースを出展した理由とは?企業がeスポーツと協業する価値とは?ZENAIM(東海理化)、INZONE(ソニーマーケティング)の担当者、そしてZETA DIVISION代表の西原大輔氏にお話をうかがいました。
ZENAIM(東海理化)
自動車部品メーカーである東海理化は、ZETA DIVISIONの協力のもとゲーミングギアブランド「ZENAIM(ゼンエイム)」を提供しています。そんなZENAIMのプロジェクトマネージャーを務める橋本侑季氏にインタビューを実施しました。

――今回、「ZETA DIVISION BOOTH」ではどのような製品を展示しているのでしょうか。
橋本侑季氏(以下、橋本)我々が手掛けているゲーミングギアブランド「ZENAIM」の新製品として、60%サイズゲーミングキーボード「ZENAIM KEYBOARD 60」と、格闘ゲーム用デバイス「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」を展示しており、実際に触っていただけるようになっています。
キーボードについては、従来品に対するユーザー様のフィードバックを反映し、マウス操作の妨げにならないように横幅を狭めたり、ケーブルの差し込み口の位置を変更したりといった改善を施しました。
――開発には、ZETA DIVISIONさんが関わっているんですよね。
橋本はい。プロ選手やストリーマーの方々からの意見をもとに開発を進めていきました。やはり何よりもユーザーの声を反映させたいという思いがあります。

――次は、御社のこれまでの取り組みについてもお聞かせください。2022年2月にZETA DIVISIONとスポンサー契約を結び、およそ2年半が経過しました。元々どのような経緯でスポンサー契約に至ったのでしょうか。
橋本ZENAIMは、「WELL GAMING(ウェルゲーミング)」というミッションを掲げており、ユーザー様ひとりひとりにとって幸福なゲーム体験の提供を目指しています。
一方のZETA DIVISIONさんも、「ゲーミングライフスタイルブランド」としてゲーマーの方々の生活を豊かにしたいという思いをもって、ファンやコミュニティというものを非常に大事にされています。そういった点に共感し、シンクロする部分があると感じたことが大きな理由ですね。
――ZETA DIVISIONさんと連携することで、御社のビジネスに良い影響はありましたか。
橋本もちろん、売上には非常に寄与していただいていると感じます。そして取り組みを継続することでファンの皆様に「ZENAIM」というブランドが浸透していくとも思っていますので、短期的な結果に一喜一憂せず、長い目でお付き合いしていきたいです。
――最後に、橋本さんがeスポーツに感じている可能性について、お聞かせください。
橋本世界的に見て、eスポーツはやはり非常に流行してきていると思っていますが、日本において、特にtoBの領域でビジネスとして成り立ってる例はまだ多くないのではないかと。そういった状況の中で、eスポーツがフィジカルスポーツのようにもっと盛り上がっていくためにも、我々のようなtoB企業が土台として業界を支えていくことができればと思っています。
INZONE(ソニーマーケティング)
TGS2024開幕前日、ソニーマーケティングが提供するゲーミングギアブランド「INZONE(インゾーン)」のゲーミングモニターとゲーミングヘッドセットに関して、ZETA DIVISIONとの新たなスポンサー契約が発表されました。
ブースでは、マーケティングを担当する中村純子氏と桐木崇行氏、製品開発を担当した竹田右京氏にお話を伺いました。

――「ZETA DIVISION BOOTH」で展示している製品についてお聞かせください。
竹田右京氏(以下、竹田)ゲーミングモニター「INZONE M10S」とゲーミングヘッドセット「INZONE H5」を展示しています。
INZONE M10SはTGS2024前日の9月25日に発表した新製品で、有機ELを採用した480Hzのモニターです。eスポーツ向けの製品として、プロゲーミングチームのFnaticさんと共同開発しました。27インチながら、多くのeスポーツ大会で使用されている24.5インチのサイズに縮小して表示することもできることが大きな特徴のひとつで、プロ選手のニーズに応えるための仕様です。
桐木崇行氏(以下、桐木)INZONE H5は2023年に発売した製品で、こちらもFnaticさんが監修したモデルです。音質にこだわったヘッドセットは300gを超えるようなものも多く、長時間使用していると疲れてしまうという課題がありました。その点を克服すべく、約260gと軽量化したことが大きなポイントです。

――ユーザー目線、プロ目線という点をかなり意識されているのですね。
竹田はい。INZONE M10Sについては、長い時間をかけ、さまざまな試作品をもとにプロ選手の意見を聞きながら開発しました。
表示サイズの変更の他に、キーボードやマウスの邪魔にならないようにスタンドを小さく設計している点も、ユーザーの体験を高めるための工夫です。
――ありがとうございます。ZETA DIVISIONさんとのスポンサー契約も、9月25日に発表されました。経緯をお聞かせください。

中村純子氏(以下、中村)まずは、選手だけでなくストリーマーの方々も含めて、皆さんがストイックに、勝ちにこだわって取り組まれているという点です。INZONEは、そういった勝ちにこだわるゲーマーの皆様に選んでいただけるブランドになりたいと考えていますので、強いシナジーを感じました。そして、絶大な人気を誇る皆様と協業することで、ゲーミング業界を盛り上げる面白い取組みも新たにできるのではないかと。
――最後に、皆さんはeスポーツにどのような可能性を感じていますか。
中村現代において、ゲームやeスポーツは単なる娯楽を越えて、人との繋がりや自己実現など、さまざまな意味をもっていると感じています。そんなeスポーツが個人レベルから競技レベルまでエンターテインメントとして盛り上がっていくことで、世の中をもっと面白くしていく大きな可能性があるのではないかと思います。
『Apex Legends』の世界大会「Apex Legends Global Series(ALGS)」の決勝戦が2025年1月に札幌で開催されますが、そこでINZONE M10Sが使用されることになりました。主催であるElectronic Artsさんの「eスポーツをもっと盛り上げていきたい」という思いを、このモニターなら実現できると思っていただいたということですので、我々もその役割を担いたいと考えています。
竹田日本においては、eスポーツはまだまだ成長していく可能性があると思っていますので、プロ選手がもっと活躍できるよう、今後も機材提供などを通して貢献できればと思います。
桐木「eスポーツ」という言葉が世間に認知され、今では「eスポーツ業界」というものが形作られるほどに、eスポーツは人を惹きつけ、感動を届けるものだと思っています。我々にとっても「感動を届ける」ということはひとつのテーマですので、ソニーとして、そしてINZONEとして、業界により深く貢献していきたいです。

ZETA DIVISION 西原大輔氏
ブースでは、ZETA DIVISIONを運営するGANYMEDEの代表取締役を務める西原大輔氏にインタビューを実施。ブース出展のねらいや、eスポーツビジネスの可能性を伺いました。

――今回、TGSに初めてブースを出展するに至った経緯をお聞かせください。
西原大輔氏(以下、西原)eスポーツは、日本においてはまだまだ発展途上であり、認知が足りない部分も多いと思っています。若年層に対しては普及している一方、30代以上の世代、あるいは企業において決裁権を持っているような方々にとっては、「ゲームといえばパッケージのタイトル」というようなイメージも強いのではないでしょうか。
そういった方たちにも、オンラインでコミュニケーションを取りながら対戦して、切磋琢磨しながら楽しむ、というeスポーツの文化をもっと知ってもらいたいという思いがあります。eスポーツに限らないさまざまなゲームのファンが多く訪れるTGSにブース出展することで、「eスポーツってこういうものなんだ」「選手やストリーマーはこんなに愛されているんだ」ということを見てもらえたらなと。
――サウジアラビアで開催された「eスポーツワールドカップ2024」においても好成績を収めるなど、結果を残し続けていますね。
西原4タイトルで我々の選手が出場し、『鉄拳8』でdouble選手が3位に入賞しましたし、総合成績を競う「Club Championship」でも日本チーム最高の15位という結果を残しました。
eスポーツワールドカップは、全世界からeスポーツ選手や関係者が集まるイベントであり、我々のような日本のチームが選手を送り出し、結果を残すのはチームの使命です。今回の経験は次回以降にも活きると思いますし、今後もできる限り多くの選手が日本のチームから出場できるようにしたいです。
――スポンサー企業各社との協業についてもお聞かせください。
西原eスポーツという新しい業界を受け入れてもらい、発展させていくためには、やはりさまざまな企業さんと協業する必要があります。例えば東海理化さんやソニーさん、JCBさんをはじめ、日本が誇るパートナー企業さんたちと協業することで、「eスポーツチームも投資価値がある分野なんだ」と思ってもらいたいですね。
もちろん我々はファンやコミュニティ、そしてプロゲーマーやストリーマーを最優先に考えています。それと同時に、社会的信用を得ながらeスポーツ文化を発展させ、「eスポーツ業界に参入する価値」を見出してもらえるよう、企業さんとの取り組みも非常に大切にしています。
――東海理化さんやソニーさんにもお話を伺いましたが、「ZETA DIVISION」というチームをハブとして皆さんが一丸となって、ユーザーと向きあっている印象を受けました。
西原おっしゃる通りです。モノにしろサービスにしろ、企業さんだけでは拾い上げることができないコミュニティの声を我々が拾い上げて咀嚼し、一緒に課題を解決したいと考えています。

――9月24日に発表された、企業向けの新たな会員組織「ZETA DIVISION BUSINESS CLAN」についても教えてください。会員に対する特典としては、Webサイトでのロゴの掲示をはじめ、交流会や勉強会といったオフラインイベントの開催等がアナウンスされています。
西原これまで、さまざまな企業さんからスポンサーシップや協業についてのお問合せを多くいただいています。しかし、条件面でマッチしなかったり、eスポーツの盛り上がりは感じながらもどのように取り組めばいいのか分からない企業さんもいたり……といったハードルもありました。また我々としても、企業さんがどのような課題を抱えているかはすぐにはわかりません。
そこで、まずはeスポーツシーンに興味がある企業さんがもっと気軽に集まって、輪が生まれる取り組みがしたかったんです。対話を通してお互いのことをもっと知って、課題解決に繋がるようなきっかけの場になればと会員組織を立ち上げました。
eスポーツのことを正しく知ってもらい、ビジネスとして成功してもらうことが業界のサステナビリティにも繋がります。
――ZETA DIVISIONの現在地と展望についてうかがいます。西原さんが最終的に目指す世界観は、現在どのくらい実現できていますか。また、どのような課題を乗り越えていかなければいけないと考えていますか。
西原5~6年前と比べて、少しずつ会社の規模も大きくなってきましたし、さまざまな企業さんのご協力も得ながら、TGSにブース出展できるまでになりました。
まずは目の前のやりたいことや課題をひとつひとつクリアしていくしかないですね。業界に関わる皆さん、特にコミュニティや熱狂的なファンの方々が周りを巻き込みながらeスポーツシーンを広げてくれています。そして業界が発展するほど、新たな課題がどんどん生まれて尽きません。とにかく目の前のことに取り組んで、一歩ずつ前に進んでいきたいです。
――最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
西原TGS2024と同期間に、第五人格部門が世界大会「2024 Identity V Stellaris Challenge Invitational」に、OVERWATCH部門は「OWCS ASIA」にそれぞれ出場中です。また10月1日からスタートする「VALORANT Game Changers Pacific」にVALORANT GC部門が出場予定です。
そのため、残念ながら彼らはTGSに参加することができないのですが、ぜひ応援していただければと思います。
――ありがとうございました!