主に利用をしているのはインディーズゲームデベロッパーたちです。自主制作でゲームを開発する場合、資金はひとまず持ち出しで制作する他ありません。よっぽど名の知れたチームでなければ資金調達の道は無いのが現実です。自己資金が潤沢にあれば問題はないのですが、そうでない場合に利用するのがこうしたサイトです。
Kickstarterでは総額の目標調達額を予め決め、一口当たりの金額と見返りを設定します。サイトを訪れ、そのチームの目的や可能性に賛同したユーザーが資金の出し手となります。ゲームの場合で多いのは「〜ドル以上払えば、完成バージョンのゲームを得られる」というような条件が提示されます。事実上、ゲームに前払いをするという形です。一定の金額以上を払ったユーザーには追加で特製グッズなどが提供される場合も多いようです。
カリフォルニアに拠点を置く中堅デベロッパーのDouble FineもKickstarterを使って資金を集めたデベロッパー。同社のように既に家庭用ゲーム機でパブリッシャーを付けて開発した経験のあるデベロッパーがこうした資金調達をするのは珍しいケースです。同社はクリックタイプのアドベンチャーゲームを制作したいとして40万ドルを目標に募集をスタート。すると15ドル(完成版のゲームをもらえる)が実に3万9000人から集まるなどして40万ドルは僅か8時間でクリア、現時点では総額250万ドルという目標を遥かに超える金額が集まっています。
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Double Fineの募集ページ |
同社はKickstarterを利用した理由について、「PSN/XBLAのようなゲームは数百万ドルで開発できる可能性がありますが、ディスクを用いたゲームになると、開発か販売まで優に10倍を超える金額が必要になります。我々のようなデベロッパーはパブリッシャーや投資会社あるいは借入を頼る他ありませんが、彼らはゲームに対して様々な注文を付け、最悪の場合にはキャンセルする権利まで有する事になります。しかし素晴らしい代替手段(=クラウドファンディング)が利用可能になりつつあります。これはゲーム開発の民主化であり、ユーザーがデベロッパーにクリエイティブと開発の自由を与えるものです」と説明しています。
■サイトの利用は急激な伸び
登壇したKickstarterのCindy Au氏によれば、Kickstarterでのゲーム関連のプロジェクトは大きく拡大していて、これまでに1200以上のプロジェクトが登録され、資金を出したのは13万人以上。金額にして800万ドル以上が集まりました。毎年急激な伸びがあり、2010年には約50万ドルだったのが、2011年には380万ドル、2012年は前述のDouble Fineもあり、既に360万ドルと前年を遥かに超える勢いです。
プロジェクトが計画の資金を集められる率では、ゲーム全般やボードゲームで30%ほど、ビデオゲームでは15%ほどです。これはボードゲーム専門サイトの「boardgamegeek.com」からのアクセスが非常に多いことも影響しているようです。
Au氏は「ゲームは非常に良いカテゴリで集まる金額も多い傾向にある」とコメント。平均的なユーザーは1つのプロジェクトに42ドルを投資するそうです。これはパッケージゲームの価格とそう変わらない数字で、デベロッパーにとっては非常に魅力的な資金源となります。またAu氏は金額が高いため、特典の設定を適切にすることや、映像で自分たちを表現することが重要になっていると述べていました。開発プロセスも公開して一緒につくり上げるという形が求められそうです。
クラウドファンディングが一般化されることで、デベロッパーにとって一番難しい資金集めの部分が多様化され、インディーズシーンも更に盛り上がり、多様なゲームが提供されるきっかけになりそうです。今後の動向も目が離せません。