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20代の若きララがトゥームレイダーとしての責任と自覚を持つようになるまでの成長が描かれた本作は、目的に執着するあまり古代マヤ遺跡の短剣を解き放ち、世界の終末が始まってしまう衝撃的な幕開けとなっています。
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今作はマヤ遺跡が眠るリブート3部作では初登場のジャングルとシリーズ最大の拠点である隠された都市「パイティティ」が舞台。「ラペリング(崖からのロープを使った懸垂下降)」と水中探索の2つの新アクションも加わったことで探索の自由度も増しました。
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ララの最も暗い面(シャドウ)と敵を倒す屈強さがどのように描かれているのか、来日した開発スタジオ「Eidos Montreal」シニア・ゲームディレクターのDaniel Bisson氏とシニア・プロデューサーのMario Chabtini氏にインタビュー。また、プレイを通して本作の注目ポイントも教えていただきました。
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――「Eidos Montreal」はリブート版『トゥームレイダー』の第1作と第2作では「Crystal Dynamics」と一緒にゲーム開発をしてきましたが、今作は「Eidos Montreal」だけで開発しています。それぞれの作品を振り返って、求められた役割はどのように変化してきたのでしょうか?
Chabtini氏:第1作『トゥームレイダー』(2013年)では、マルチプレイの部分、第2作『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』(2015年)ではチャレンジトゥームのパズル要素やマップ製作に携わらせて頂きました。
『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』では、これまでの経験とCrystal Dynamicsとの関係性もあって、ストーリーも含めた開発をメインで任されることになったんです。今作でCrystal Dynamicsは主に作品のブランド部分を担い、ゲーム開発においてはEidos Montrealなりの個性が追加されたゲーム作りを行っています。
Bisson氏:私は第1作開発時、ゲームディレクターとしてCrystal Dynamicsで働いていたんですが、第2作でもCrystal DynamicsとEidos Montrealを行き来しつつ、ゲーム開発を行っていて、今作でも深くゲーム開発に携わっています。
――『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』をメイン開発したことで発揮されたEidos Montrealならではの特徴や強みを教えてください。
Bisson氏:いくつかありますが、主にララのコントロールでしょうか。今作で新しく追加されたラペリングや、水中探索の部分ですごく操作性の自由度が上がったことが大きいと思います。
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コンバットに関しても、自分に泥を塗りジャングルと一体化して敵に見つかりにくくなったり、攻撃する際は木を使って敵を吊るすなど選択肢が多いんです。
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狩猟するという意味でも新しい動物が増えていて、ジャングルならジャガー、水中ならピラニアやウツボと戦う展開もあります。
Chabtini氏:あと、コンバットが前作より少なくなった代わりにトゥームや探索の部分をより強化しています。ステルスの部分に面白さを傾けていて、環境を上手く使って戦う自由度の高さがあるんですね。
ラペリングや水中探索の新アクションを追加したことでパズルや探索において、「どういった動きをすればいいんだろう?」とプレイヤーの視野を広げることができました。それがゲームの面白さに繋がっている部分です。
Bisson氏:それと、隠された都市「パイティティ」ですね。第2作のおよそ2~3倍とシリーズ史上最も広い活動拠点になります。そこには現代文明から隔絶された人々が住んでいて、居住区や畑、漁場、学校、病院、物々交換が行える市場など様々な施設が存在します。住人たちとコミュニケーションを取ることで、土地の歴史が分かったり、武器やコスチュームの製作ができたり、新しいチャレンジトゥームが見つかったりします。
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都市の中にはお店もあるのですが、チャレンジトゥームをクリアすることでアンロックされるお店もあるんです。そして、ララにとっては危険な存在となるカルト教団も登場するなど、RPG的な要素が詰まっています。ほかにももっとありますけど、とりあえずここで止めておきますね(笑)。
――それでは開発にあたって困難だった点はなんでしょうか?
Bisson氏:やっぱり「パイティティ」でしょう!例えば市場などは約50~100人ほどのキャラクターの動きを同時に描画していますし、リアリティーを出すために、歴史学者や言語学者とコミュニケーションを取って一緒にリサーチをしました。
マヤ文明だけでなく、インカやアステカの文明を混ぜ合わせた架空の都市である点も難しかったです。歴史的には同時に栄えていた文明ではないのですが、「もしも同時に栄えていたらこういった都市を作っていたんじゃないか?」というイメージを絵にするのが大変でした。
Chabtini氏:タイトルにもなっている「シャドウ(影)」に対して、パイティティは「ライト(光)」の部分。なので、ライティングに関してはとても時間をかけて作りました。パイティティは生の象徴なのでより活気があってグラフィック的にも綺麗に見えるように、細心の注意を払っています。
――パイティティには住民とコミュニケーションを取ることで、ララがトゥームレイダーとしての責任と自覚を持ち、守る者としての意識が芽生えていく成長の場としての役割もあるのでしょうか?
Bisson氏:従来のシリーズではヒーローとして演出されていたところもありましたが、ララも一人の人間。前作までは「ララの周りの人がどうなるか?」にスポットが当てられていたと思いますが、今作では「彼女自身がどうなるか?」という過程と結果の部分が語られているんです。
ベテラン冒険家としてのララは様々な人との出会いを経て、何をすることが正しいのかを常に考えながら最善を尽くす姿が見られました。しかし、リブート版では20代とまだ若いため、目指すものばかりに執着してしまい、自分のやったことで周りにどんな影響を与えているのかがまだ分かっていない。そういった未熟さが今作では描かれています。
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そこでパイティティが彼女に与える影響ですが、第1作・第2作でのララは冒険の中で生きた人間との関わりが少なかったので、生きた人ばかりがいる都市で戸惑いを見せるんです。ララはあまりコミュニケーションが上手ではないのですが、パイティティは彼女にそれを強いるんですね。コミュニケーションを通して、彼女がより人の心を考えることができる人間に成長していくことを考えました。
また、プレイヤーの視点で考えてもパイティティで色々な人と話すことによって、彼らの文化や元となる生と死の考え方を学ぶことができます。
――改めてリブート版完結編の舞台にマヤ遺跡とジャングルを選んだのはなぜでしょうか?
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Chabtini氏:ララがトゥームレイダーになるために、ジャングルはうってつけの場所なんじゃないかなと思いました。綺麗であると同時に危険な場所であり、彼女が過酷な道を歩まなければいけない点で見ればとても良い舞台です。
Bisson氏:ゲーム内にはマヤだけでなく、インカやアステカなどの文明に触れています。私がメキシコで結婚式を挙げたくらい、それらの文化に対して情熱を持っていたのがまず大前提にありました。
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マヤ・インカ・アステカなどの文明は、色んなものが内包されている文化です。ピラミッドがあったり、星についての研究やテクノロジーを生み出していったり、生と死に対して独自の概念を持っていたり…。タイトルのロゴには「日蝕」がありますが、日蝕は彼らの概念で言うところの一時代の終わりを示していたというのが、とても興味深くて今作の題材に選んだ理由になります。
――すると、プロローグに登場するメキシコの“死者の日”にもメッセージが込められていたのでしょうか?
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Bisson氏:ララは両親を亡くしていて第2作では秘密組織トリニティが父の仇であることを知るのですが、彼女が悲しんでいる描写がゲーム中で描けていないんです。そこがずっと気になっていました。
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プロローグではララの執着の部分がすごく描かれているんですが、同時にメキシコの町の“死者の日”を通して、父を失った悲しみが表現されています。人生において必ず最後には死があります。「死を通して人生を学ぶ」ことがテーマになっているので、ここはゲームの根幹の部分です。
――シリーズで「最も屈強なララ」を描くにあたって、ラペリングと水中探索の新アクションが追加されています。どのような狙いがありますか?
Bisson氏:新しいアクションの追加はある種のメタファーでした。彼女が新しいアクションでより強く見えるというだけでなく、ラペリングの下降や水中探索の潜水は、彼女がどういった人間になっていくのかの内面を探索するという意味も含まれています。
というのも、ララはトリニティを追うに当たって、とても厳しい道のりになることを覚悟していたんです。ジョナとも話していて、そのためにすごく過酷なトレーニングも積みました。ただし、どれだけ多くの肉体的トレーニングを積んできたとしても、彼女は精神的な面では何のトレーニングも積んでいないんです。プロローグのドミンゲス博士と対峙するシーンではそこが露呈してしまいます。
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ララとドミンゲス博士を比べると、彼女に無いものをドミンゲスは持っていて、それは「大人」であること。ララがトゥームレイダーになるためには、成長して大人になることが不可欠です。プロローグの彼女はまだ成長していない。
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勢いで短剣を取ってしまって終末が始まってしまい、ドミンゲス博士に「箱はどこだ?」と訊かれるんですが、彼女は箱を持っていないですし、「私は悪くない」といった顔を見せます。そこがララとドミンゲスの対比として象徴的なシーンになっています。
――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
Bisson氏:ファンの方々にはぜひこの3部作最終章の『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』でエンディングまで辿り着き、本当のララを理解して頂きたい。最後まで見てもらえれば、本当に愛せるキャラクターだと思ってもらえるはずです。
Chabtini氏:ストーリーのドラマチックな部分、とくにキャラクターの関係性をすごく練り込んで作りました。ゲームをプレイする際は本当に色々と探索して頂きたい。探索を行うことによってゲームの深い部分を全て理解できるので、そこまでのプレイを楽しんで頂けたらと思います。
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グラフィックやシステムとしての進化は確かにすごい。ただし、それはララの成長をより描くために必要だったからというだけで、あくまでもメインはララの内面描写であり、トゥームレイダー誕生の瞬間がまず先にあるというのがインタビューの端々から感じ取れました。シリーズ史上“最も”深く描かれたララは見逃せません。
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